あらゆる分野で深刻な労働力不足に悩まされるスリランカ。その課題を克服できれば、現在より裕福な国家に成長するポテンシャルも秘めています。今回の記事では、外国人を多く受け入れる欧米の例も交え、スリランカの国境開放の可能性を探ります。

海外からの投資を妨げる強固な国内規制

10年ほどの期間があれば、上流中産階級が多い状態から(一人当たりGDP 4,000ドル)から高所得国(一人当たりGDP 12,000ドル)に上昇することは可能だということを、シンガポールやドバイは示してくれた。スリランカ経済も2016年には上流中産階級の収入値に到達するかもしれない。

 

今、経済にとってさまざまな面から追い風が吹いているので、そこから10年でさらに高所得国へと成長できる可能性はあるだろう。しかし、その目標を達成するためには、世界からの直接投資を惹きつける必要がある。

 

エコノミスト達は、スリランカの資本市場・土地・労働力に対する規制が、外からの投資の妨げになっていると長らく主張してきた。もしスリランカが政府赤字を生む支出をある程度制限できれば、民間投資のための資本は十分確保できるだろう。また、法律を少し改正すれば、資本移動をより活発にすることも出来るし、広大な土地を投資対象に供することもできる。

 

一方で、移民に対して国境を開放することは、資本や土地における市場改革のいずれでも成しえない成長を遂げられる可能性がある。豊かな世界では、ハーバード大学のラント・プリチット氏によれば、移民を受け入れることで労働力が3%増加した場合には、貿易における現存する障害物をすべて取り除くよりも、さらに大きな経済効果が生まれると予測されるという。

すでに海外出身者が大きな割合を占める欧米各国

移民についての経済的なインパクトは、貿易の自由化と同等のものだ。しかし、自由貿易とは異なり、移民というのは大半の国では結果として起きている事象だ。

 

移民の受け入れから一番恩恵を受けている国は、移民によって建国されたアメリカだ。ヨーロッパ人により「発見」された後、アメリカには何百万人もの移民が、母国で受ける抑圧から逃れため、あるいはチャンスを求めて移住してきた。

 

アメリカの近代史を見るとこの間ずっと、アメリカの人口のうち相当の人数が海外で生まれた人々だった。アメリカが誕生した初期には、この新世界に移住してきたヨーロッパ人に加え、多くの人々がアフリカから奴隷として連れてこられた。またこの半世紀では、ヒスパニック系やアジア系の移民が、人口を押し上げている。今日では、アメリカ国民の13%は海外で生まれている。更に約1,800万人(アメリカの人口の5%に相当)の違法移民もアメリカに住んでいる。

 

アメリカは毎年100万人の合法移民を受け入れ、その移民のほぼ全員はアメリカに完全移住するつもりだ。全人口のうち海外で生まれた人々が占める割合は、オーストラリアとスイスが25%近くと一番高く、次に多いのがカナダの20%弱だ。ドイツとアメリカでは全人口の13%が海外で生まれており、次に多いのが10%のイギリスである。


次回は、スリランカがお手本にするべきシンガポールの移民政策をご紹介します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年12月に掲載した記事「Sri Lanka must throw open its borders to foreign workers & immigrants, without many conditions」を、翻訳・編集したものです。

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