ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米国10年国債利回りと米国2年国債利回りとの長短スプレッド(利回り差)は11月末時点で約0.2%となり、長短スプレッドが逆転するまであとわずかです。通常、長短スプレッドの逆転は景気後退の可能性を示唆するものですが、長短スプレッドの逆転から景気後退入りするまでの期間、米国株は上昇するケースも多いため、短期的な株価上昇に惑わされないことが重要です。

長短スプレッドの逆転は、景気後退を示唆するシグナル。しかし、景気後退入りするまでにはタイムラグがある

米国10年国債利回りと米国2年国債利回りとの長短スプレッドが逆転すると、過去の経験則上、ある程度の期間(過去5回の平均は約16ヶ月)を経てから景気後退入りしています。長短スプレッドが逆転してから景気後退入りするまでタイムラグがある理由は、そもそも長短スプレッドが逆転する時期は、政策金利の引き上げを許容できるほど経済が堅調であることが多いためです。つまり、利上げによる景気引締効果が顕在化するまでには、時間を要すると解釈されます(図表1、2参照)。

 

[図表1]米国国債利回りの推移

月次、単位:%、期間:1976年6月末~2018年11月末 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
月次、単位:%、期間:1976年6月末~2018年11月末
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

[図表2]米国長短スプレッド(米国10年国債-米国2年国債)

※グレーの網掛け部分は景気後退期を示す 月次、単位:%、期間:1976年6月末~2018年11月末 出所:NBER、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
※グレーの網掛け部分は景気後退期を示す
月次、単位:%、期間:1976年6月末~2018年11月末
出所:NBER、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

長短スプレッド逆転後の短期的な株価上昇に惑わされないことが重要。むしろ、景気後退期の株価急落に備えることが大事

前述した通り、長短スプレッドが逆転した直後は経済が比較的堅調なため、一般的に株価は上昇しやすい環境にあると見られます。長短スプレッドが逆転してから景気後退直前までのS&P500指数の騰落率は、1980年以降、2000年のITバブル崩壊期を除けば平均+12%でした(ITバブル崩壊時は、IT銘柄の株価バリュエーションが異常なまでに高騰した反動が出たため、通常のサイクルとは異なる値動きになっていたと考えられます)。

 

 

このため、長短スプレッドの逆転は景気後退を示唆しない、と考える見方は多いと思います。しかし、過去に長短スプレッドが逆転すれば、遅かれ早かれ米国経済は景気後退入りし、株価は景気後退期に大きく下落(過去5回の景気後退局面におけるS&P500指数の最大下落率は平均21%)しました。つまり、景気後退入りすれば、長短スプレッドが逆転してからの値上がりを上回る損失が、過去には発生したということになります(図表3参照)。

 

[図表3]長短スプレッド逆転後と景気後退期のS&P500騰落率

※S&P500指数の騰落率は配当含まず 出所:NBER、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
※S&P500指数の騰落率は配当含まず
出所:NBER、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

長短スプレッドの逆転は、将来的な景気後退の可能性を示唆するものですが、長短スプレッドの逆転から景気後退入りするまでの期間、米国株は上昇するケースも多いため、短期的な株価上昇に惑わされないことが重要です。むしろ、いずれ訪れると想定される景気後退期の株価下落に備えた「準備期間のシグナル」として、捉える必要があると思います。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株式投資戦略 長短スプレッドの逆転が意味するものは?』を参照)。

 

(2018年12月18日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧