ロサンゼルスやシカゴといった人気都市を抑えて決定
現在、Amazon.com, Inc(以下アマゾン)本社はワシントン州シアトルにありますが、今年の11月、第2本社「HQ2」の拠点に、筆者の住んでいるニューヨークのロングアイランドシティとバージニア州アーリントンが選ばれました。
アマゾンは、現時点で世界各国に約61万人を雇用しています。第2本社の所在地として、米国内の238の地域が13ヶ月間にわたり激しく誘致合戦を繰り広げていました。たとえば、ジョージア州アトランタ近郊のとある地域は、「アマゾン」という名前の市を新たに作り、アマゾン創設者を市長にするユニークな提案もしていました。
最終的には18の都市が候補に残りましたが、ロサンゼルスやシカゴといった人気都市を抑えて、ニューヨークのロングアイランドシティ地区と、バージニア州からは首都ワシントン近郊のアーリントンの2箇所が選ばれました。さらに輸送やサプライチェーンなどを中心にしたオペレーション業務は、テネシー州ナッシュビルに設置すると発表されました。ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモは、「誘致費用がかかったが価値はあった」と話しています。
雇用創出、税収の増加…両都市が享受するメリットは?
なぜ、アマゾンの第2本社所在地は、奪い合いになるほど人気なのでしょうか。そして、なぜ同社はニューヨークとバージニア州の2箇所を選んだのでしょうか。
◆アマゾンの第2本社所在地が奪い合いになる理由
●第2本社設立コストとして見積もられている額は50億ドル
●2019年より、各拠点では新たに2万5千人ずつ、あわせて5万人を雇用予定
●新たな雇用の平均年収は15万ドル(約1700万円)以上になると予定
●ニューヨーク、バージニア州、テネシー州に140億ドルの税収を与える見込み
●今後20年以内に、ニューヨークの税収が100億ドル増の見込み
●アマゾンのキャンパス内に、テクノロジー・スタートアップ企業やアーティストが使用できるスペースを提供予定
●地域の教育機関への寄付や、新しく学校を創設する予定
●市の緑化企画への貢献
◆ニューヨークとバージニア州が選ばれた理由
●ソフトウェア開発関連で能力のある人材が多数
●地域の学校教育の質の高さ(特に理系科目)
●企業に対して有利な税金制度
●地下鉄、バスや飛行場などの交通の良さ
上記から簡単に予測できるように、各拠点付近の不動産物件の価値は急速な上昇が予想されています。また、第2本社従業員の平均収入が、アメリカ人の一般的な収入額に比べて高額なことや、アマゾン役員会議の開催などが予定されていることからも、両都市には富裕層が多く集まると見込まれます。
実際、すでに両地域の物件へのオンラインサーチ件数がうなぎのぼりになっているようです。11月の第2週だけで、ニューヨークロングアイランドシティの販売物件の閲覧数が、前年同週と比べ1,049%と驚異的に伸びており、またバージニア州のクリスタルシティの閲覧数も前年比217%と増加しています。
今後、ニューヨークとバージニア州は、高収入のIT関係者による家賃のキャッシュフローに加え、大幅なキャピタルゲインが見込まれる年になりそうです。ニューヨーク在住の筆者ならではの情報も今後どんどんお伝えしていきます。
山崎 美未
Win/Win properties,LLC パートナー マネージング・ディレクター