ADHDやASDなどの発達障害の子どもたちは、世界中で様々な教育を施されています。その効果は千差万別であるため、子どもに合った最適な教育法を見つけることが大切です。本記事では、ADHDの子の「能力」を最大限に引き出す教育メソッドについて見ていきます。

脳波を最適な状態に整える「イメージトレーニング」

コペルの幼児教育は最先端のメソッドとして海外でも評価されています。コペルの教室では、レッスンの始まりに必ず行うイメージトレーニングがあります。これは、脳波を最適な状態に整えるために行う取り組みであり、ご自宅でも簡単に取り組むことができます。特別にその方法をご紹介しますので、ぜひご家庭で試してみてください。きっと効果を実感いただけることでしょう。

 

脳波を整えるイメージトレーニングを実践すると、脳はα波という状態に入ります。これは究極のリラックス状態で、プロのスポーツ選手はこの状態を指して「ゾーンに入る」と呼ぶこともあります。脳波がα波状態に入ると、心身は一切の緊張から解き放たれ、課題にしっかりと集中して高いパフォーマンスを上げられるようになります。

 

アメリカでは、発達障害の子どもの治療に瞑想が活用されています。コペルのイメージトレーニングは、それよりもずっと効率よく脳波を整えることが期待できる方法です。

 

スタンダードバージョンと、ショートバージョンをそれぞれご紹介しますので、おうちの方が読み上げて、お子さんと一緒に体感してみてください。スタンダードバージョンは、10分程度で、ショートバージョンは2分程度を目安に読み上げます。

 

実際に取り組んでみれば、脳波を整えることで、どのような効果があるかを実感できるはずです。

 

このメソッドを裏付ける理論的説明は後にして、さっそく実践してみましょう。

 

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【スタンダードバージョン】

 

大きく息を吐いてください。ふうー。

息を止めてください。

大きく息を吸ってください。

息を止めて手をぎゅっと握り、目をぎゅっと閉じて、身体にぎゅっと力を入れて、5秒間我慢してください。

1・2・3・4・5

 

力を抜いて、だらんとしてください。

もう一度やります。

大きく息を吐いてください。ふうー。

息を止めてください。

大きく息を吸ってください。

息を止めて手をぎゅっと握り、目をぎゅっと閉じて、身体にぎゅっと力を入れて、5秒間我慢してください。

1・2・3・4・5

 

力を抜いて、だらんとしてください。

 

このイメージトレーニングが終わるまで、目を閉じたままでいてください。

 

今から私はあなたがリラックスするのを手伝うために、身体のいろいろな部分に意識を集中するように指示を出します。

 

頭のてっぺんに意識を向けてください。

頭のてっぺんの表面の皮膚が、細かくびりびりと振動しているというイメージをしてください。

髪の毛一本一本を感じて、髪の毛が逆立っていくというイメージをしてください。

その状態を続けていくうちに、どんどん強くなっていきます。

頭のてっぺんのむずむずした感じが頭全体に広がっていって、おでこにまで広がっていって、身体の表面の皮膚全体にゆっくりと広がっていくというイメージをしてください。

 

まぶたに意識を向けてください。

まぶたから完全に力を取り除いてください。

目の玉が目の中で浮かんでいるような状態をつくり出してください。

その状態を続けていくうちに、どんどん強くなっていきます。

ほおから力を完全に取り除いて、口の中、舌からも力を取り除いて、身体全体から力を取り除いてください。

 

首の上全体から力を取り除いて、のどが大きく開いて、楽に呼吸ができているというイメージをしてください。

 

肩に意識を向けてください。

肩に服が触れているのを感じてください。

その服が触れている部分から、皮膚がびりびりと細かく振動している感じが身体全体に広がっていくというイメージをしてください。

 

心臓に意識を向けて、心臓がどくんどくんと身体のすみずみまで血液を送ってくれているのをイメージしてください。

頭のてっぺんがむずむずとしびれたような、ちくちくとするような感覚がしてきて、おなかがだんだん温かくなっていくというイメージをしてください。

 

脚の感覚がなくなっていって、脚が地面とつながって、脚自体がなくなっていくようなイメージをしてください。

 

それでは私は今から10から1まで、ゆっくりと数えます。数がひとつ減るごとに、あなたはどんどん深いリラックスした状態に入っていきます。

 

10・9

どんどん深いリラックスした状態に入っていきます。

8・7

どんどん深いリラックスした状態に入っていきます。

6・5

どんどん深いリラックスした状態に入っていきます。

4・3

どんどん深いリラックスした状態に入っていきます。

2・1

 

さあ、あなたはとても深いリラックスした状態にあります。

今までの中で、もっとも深くリラックスした状態です。

まぶたから力を抜いてください。

まぶたから力を抜くだけで、あなたはもっと深くリラックスした状態に入っていきます。

まぶたをゆったりとさせてください。

そのゆったりとした感じが身体の中を通って、つま先までゆっくりと流れていくのを感じてください。

 

リラックスしているのはとても気持ちのよい状態です。これはとても健康な状態です。深呼吸をして、もっと深く入っていってください。

 

それではあなたの両腕を身体の横にだらんと垂らしてください。

あなたの手が椅子にさわらないように、垂らします。

まっすぐ下に、だらんと垂らしてください。力を抜いて。

 

そして、あなたの右手に血液がどんどん集まっていくというイメージをしてください。

あなたの右腕に血液が集まっていって、右腕がだんだん重くなっていくというイメージをしてください。

両腕から完全に力を抜いて。

右手にだんだん血液が集まっていきます。

そして、血液が右手に集まって、あなたの右腕はだんだん重たくなっていきます。

右手が重たい、右手が重たい、右手がどんどん重たくなっていく。

あなたの右手にどんどん血液が集まっていって、右手がだんだんふくれあがっていくような、はれあがっていくような、そんなイメージをしてください。

右手が重たい、右手が重たい、右手がどんどん重たくなっていく。

 

あなたの右手にどんどん血液が集まっていって、右手の指先もだんだんふくれあがっていくというイメージをしてください。

そして、あなたの右手の指先がしびれたような感じがしてきて、心臓の鼓動にあわせて、右手の指先が、どくんどくんと脈を打っていくというイメージをしてください。

右手が重たい、右手が重たい、右手がどんどん重たくなっていく。

 

右手がどんどんふくれあがっていって、右手の指先が心臓の鼓動にあわせてどくんどくんと脈を打って、右手の手のひらや手の甲がちくちくとしてくるような、そんなイメージをしてください。

右手が重たい、右手が重たい、右手がどんどん重たくなっていく。

 

あなたの右手は左手よりもはるかに大きくふくらんで、はれあがっています。

 

それではその右手の血液を左手に移してみましょう。右手の血液が上がってきます。右の手首の方に向かって上がってきます。右の手首を通って、右の肘に向かって上がってきます。右の腕を通って右の肩を通って首の後ろを通って、左の肩を通って、左の肘を通って、左の手首から手のひらへと血液がどんどん流れてきます。そしてあなたの左手に血液が流れ込んでいって、左手がふくらんでどんどんはれあがっていきます。

そしてあなたの左手はだんだん重くなっていきます。

左手が重たい、左手が重たい、左手がどんどん重たくなっていく。

左手にどんどん血液が流れ込んでいって、左手がふくらんで、髪の毛一本一本が逆立って、額がむずむずとしてきて、額をそよかぜがなでていくような、額が涼しくなっていくような、そんなイメージをしてください。

 

額の真ん中がむずむずとするような、アリが這っているような、額の真ん中がもりあがっていくような、涼しくなっていくような、そんなイメージをしてください。

そして、あなたの身体から完全に力が抜けて、身体自体の感覚もなくなっていくというイメージをしてください。

 

今、あなたはとても深いα波状態にあります。

 

それでは今から私は1から5まで数を数えて音をさせます。

その瞬間、あなたは目をあけます。

 

はっきりと目覚め、爽快な気分で、完全な健康を感じます。ぐっすりと眠ったときのような新鮮な気分がよみがえります。

 

1・2

手を握ったり開いたりしてください。身体に力がもどってきます。

3

私が5を数えたとき、あなたは目をあけます。はっきりと目覚め、爽快な気分で、完全な健康を感じます。ぐっすりと眠ったときのような新鮮な気分がよみがえります。

4・5(手をパチンと1回たたく)

 

あなたははっきりと目覚め、爽快な気分で、完全な健康を感じます。ぐっすりと眠ったときのような新鮮な気分がよみがえります。前よりもいっそうよい気分です。

 

マインドフルネスでは、本格的なものは中学生以上でなければできないということになっていますが、このメソッドなら0歳からできます。むしろ、年齢が低ければ低いほど、脳波が7.8ヘルツの状態に近いので、簡単に習得できるといえます。

 

3歳以下のお子さんには、次に紹介するショートバージョンを試してみてください。

 

おなかがふくらんだりへこんだりする腹式呼吸のことを、ここでは「たぬきの呼吸」と呼びます。おうちの方がやや大げさな動きをつけて、お手本を見せてあげてください。

 

両手をおなかにあて、鼻から息を吸いながら身体を少し反らせるようにします。吐くときは、身体を前に倒すようにして、口から息を吐きます。小さなお子さんには、おうちの方が手を添えてあげるとわかりやすいかもしれません。

 

【ショートバージョン】

 

たぬきさんの呼吸をするよ。

(おなかに手を当てて)

吐いて、ふうーっ。吸ってー、すうーっ。

吐いて、ふうーっ。吸ってー、すうーっ。

 

手に意識を向けようね。手をすりすりするよ(両手を合わせてこする)。

手があたたかくなってくるよ。

脚も触ってみようか。脚をすりすりするよ(両脚を手でさする)。

脚がむずむずしてきたね。

心臓に手を当てて、ドキドキする音を聞いてみようね(両手を胸に当てる)。

ほら、ドキドキしてるね。

口の前に手を持ってきて、ふーっと息をかけてみようね(両手を口の前に持ってくる)。

ふーっ。

はい、もう一度やるよ。ふーっ。

 

次はおでこに指をちょんちょんってするよ。

はい、おでこにちょんちょん(指先で眉間のあたりを触るか触らないかくらいのタッチでつつく)。

おでこがだんだん冷たくなってくるよ。ちょんちょん。

むずむずしてきたね。

 

私が運営している幼児教室では、この内容をレッスンの最初にやります。0歳の赤ちゃんの場合は、先生のガイドに合わせて、お母さんがふうーっと息を吹きかけたり、おでこにちょんちょんと触れたりしてサポートします。

 

今回紹介したのは、スタンダードなものと、3歳以下用にアレンジしたものの2パターンですが、実際には100パターンほどのバリエーションがあります。

 

脳波をコントロールできれば、緊張するような場面でも平静を取り戻し、本来の力を発揮できます。日常のさまざまな場で、役に立てることができるでしょう。

地球の周波数と同じ「7.8ヘルツ」に脳波を調整

このメソッドのベースになったものに、私が子どもの頃に受けた自律訓練法があります。自律訓練法というのは、ドイツのシュルツ博士が考案した方法です。

 

シュルツは、脳波が下がっていく人の身体の変化を観察しました。

 

脳波が下がっていくと、毛細血管のすみずみにまで血液がいきわたります。流れている血液の量が増えるので、物理的に重くなります。そして、次に表面の温度が高くなります。右手が重い、右手が温かくなると自分に言い聞かせます。すると、丹田が温かくなってきます。呼吸がゆっくりになり、心拍がゆっくりになります。額が涼しい感じがして、額をそよ風がなでていくような感じがします。そして額がむずむずするような感じがします。シュルツは、それを逆にたどっていったら、脳波が下がるのではないかと考えたのです。

 

このときの額がむずむずする感じは、禅の世界では「蟻のくすぐり」と呼ばれます。禅でこの境地に達するのには25年座り続けることが必要だとされますが、本記事で紹介するメソッドでは10分程度で到達することができます。

 

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まずは脳波を地球の周波数と同じ、7.8ヘルツに調整します。そして、その状態をいつでも簡単に再現できるように、アンカリングを行います。アンカリングというのは、船が錨を下ろすように、その状態とある行動を結びつけるということです。本記事で紹介したワークでは、親指・人差し指・中指の3本を合わせることで、脳波が7.8ヘルツの状態を再現できるようにしています。

 

この7.8ヘルツというのは、α波の状態です。このα波状態こそ、脳が最も力を発揮できる状態です。脳波がα波になっているときというのは、究極のリラックス状態にあるときです。脳には平常時の1.6倍の血液が流れ込んでいるといわれます。すると、体のすみずみに届く酸素の量が増え、その酸素がさらなるエネルギーを生み出します。

 

つまり、α波状態であれば、普段以上のエネルギーを使える状態にあるということです。この状態を常に再現することができれば、発達障害の子どもが自分の好きなことに没頭するとき、より高いパフォーマンスを発揮することができます。

 

 

大坪 信之

株式会社コペル 代表取締役

 

本連載は、2018年12月4日刊行の書籍『「発達障害」という個性 AI時代に輝く――突出した才能をもつ子どもたち』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「発達障害」という個性 AI時代に輝く──突出した才能をもつ子どもたち

「発達障害」という個性 AI時代に輝く──突出した才能をもつ子どもたち

大坪 信之

幻冬舎メディアコンサルティング

近年増加している「発達障害」の子どもたち。 2007年から2017年の10年の間に、7.87倍にまで増加しています。 メディアによって身近な言葉になりつつも、まだ深く理解を得られたとは言い難く、彼らを取り巻く環境も改善した…

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