仮想通貨の下落が止まらない。ビットコイン価格はついに50万円を割れた。しかし、海外では着々と仮想通貨への投資環境が整いつつある…。 国際税務のスペシャリストである柳澤賢仁氏による仮想通貨対談企画第3弾はロシア生まれで日本語、英語も堪能なトリリンガル・クリプトウォッチャー「ロシアンOLちゃん」が登場。第5回のテーマは、「イギリス、フランス、ウクライナ…仮想通貨“税”事情」。

クリプトに前向きで優秀なエンジニアも多い東欧の国々

柳澤 お聞きしている限り、マルタやエストニア、ベラルーシなど、小さな国が非常にクリプトに対して前向きですね。

 

ロシアンOLちゃん(以下ロシアン) 資源が乏しく、IT以外に産業基盤がないという理由もあるでしょう。でも別の見方をすれば、ITの人材は豊富です。特に東ヨーロッパは優秀なエンジニアが多いんです。特に、暗号技術やセキュリティ関連の技術者は優秀です。

 

柳澤 ロシアのエンジニアもめちゃくちゃ優秀な方ばかりですよね。イーサリアムを生み出したヴィタリック・ブテリンもロシア人だし、かつての大手取引所Mt.GOX(2014年に破産)のハッキング被害で流出したビットコインも含めて40億ドル相当のマネーロンダリングに関与した疑いで逮捕された仮想通貨取引所「BTC-e」のアレクサンダー・ビニックもロシア人。独自トークンで投資ファンドと個人の橋渡しを行うBlackmoonというICOプロジェクトも昨年話題になりましたが、これもロシアの富豪が投資してスタートしたものでした。登記をしたのはキプロスでしたけど。

 

ロシアン おっしゃるとおり、ロシアにも優秀なエンジニアは多いです。ちなみに、キプロスはロシアと縁のある島なんです。キプロスはタックスヘイブンなので、オリガルヒ(ロシアの新興財閥)のお金持ちなどが進出して、ロシアへの投資の窓口としてキプロスを利用していると言われています。地中海の温暖な気候で過ごしやすいので、バカンスに利用しているロシア人も多いですね。

 

柳澤 キプロス危機(2013年)のときは、キプロスの国民が現金をビットコインに替えて資産防衛を図ったというのは有名な話。仮想通貨にもゆかりのある国ですね。

 

ロシアン ただ、最近はクリプト絡みでキプロスの名前は聞きません。おそらく、そのほかの国がクリプト系プロジェクトの誘致を積極的に行っているからでしょう。

ヨーロッパの大国での仮想通貨の扱いとは?

柳澤 ヨーロッパの大国はどうですか?

 

ロシアン EUから離脱する予定のイギリスでは、ビットコインとアルトコインを「外貨」とみなし、外貨に関する既存のルールを適用しています。9月には財務委員会で「仮想通貨規制の強化が必要」との見解が示されたので、これから変わっていくかもしれませんが、現状ではクリプトの取引については課税もされません。EUを離脱するのでEUが進める厳しいマネーロンダリング対策も導入する必要がないため、イギリスは“解放感”を感じているという話も聞きます(笑)。

 

柳澤 日本でいうFX(外為証拠金取引)と同じ扱いということですかね。外国の通貨じゃないけど、運用上は外貨に準じて取り扱うと。それはシンプルで面白い。

 

ロシアン あとは、大国ではありませんが、ウクライナは2021年までにクリプトの合法化を目指しています。ヴァーチャル・カレンシー(仮想通貨)、ヴァーチャル・アセット(仮想通貨資産)、ICO、マイニングなどをすべて法的に定義する予定です。トークンは価値の交換と保管の方法であると定義づけられる予定で、他の国ではマイニングを許可制にしようとしているところもありますが、ウクライナにはその計画がない。ウクライナ国会で仮想通貨取引への課税を凍結することが議論されるほど、国内におけるクリプトの認知度は非常に高く、ポジティブに捉えている方が多いので、今後、大きく成長する可能性もあります。

 

ロシアン 9月にICOを合法化する法案がフランス国会で可決されましたね。ただ、フランスの仮想通貨取引にかかる所得税は30%を超える(11月にフランス議会下院で仮想通貨にかかる税率を36.2%から30%に減額される改正案を採択)ので、投資家にとってメリットがあるかどうは判断が難しいところです。

 

柳澤 でも、合法化が積極的に議論されているのは非常に面白い。

 

ロシアン クリプトに対する関心が非常に強いからでしょうね。日本ではミートアップが開催されても参加者は100人程度だったりしますけど、ヨーロッパで開催されるミートアップは1000人規模。コミュニティの規模がまったく違うんです。ただ、日本は一時クリプトの取引量で世界の40%以上のシェアがありました。貯蓄率が高くて、リスクを取る投資をしない国民性と言われるのに不思議です。

 

柳澤 実は、歴史をたどると日本人は、むしろ投機好きなんです。塩や小豆などの先物相場が古くからある国ですから。貯蓄を積極的に行うようになったのは戦後の話。それでも、1980年代には不動産バブルがありましたから、手を変え品を変えて日本人はずっと投機に熱を上げてきたんです。個人的には、昨年の仮想通貨バブルは不動産バブル時代のゴルフ会員権の相場に似ていると思っています。ただ、仮想通貨バブルの恩恵を受けたのは、20代が中心。バブル崩壊の経験がなく、リスクを知らずにお金をつぎ込んだ人が多かったとも言えるかもしれません。

ロシアン そういう意味では日本のクリプト界の将来は明るいかもしれませんね。若いころからクリプトに投資をしていた人が、これから会社で出世して、もっとお金を使えるようになったら盛り上がる。

 

柳澤 そのためにも、ロシアンOLちゃんさんには日本のダメなところをどんどん発信していってほしい。がんじがらめの規制や税制を取り払うために、グローバルな視点で物を言える(しかも日本語で)って、すごく貴重な存在だと思います!

 

 

ロシアンOLちゃん

 

クリプトウォッチャー@crypto_russia

 

ロシア・ウラジオストク出身。14歳のときに国際交流プログラムで来日し、富山県で1週間過ごしたことをきっかけに日本語の勉強を開始。極東連邦大学日本語学部に進学した後も日本に留学。卒業後は日本の商社に就職。投資会社を経て、今年ブロックチェーンプロジェクトのコンサルティング業務を手掛けるベンチャー企業に転職。仮想通貨との出会いは’16年。’17年から少額で投資も開始。同時に、堪能な語学力を生かして、ロシアや欧州の情報をツイッターで配信し始めることに。現在は『BTC News』『Coin Choice』『FISCO』などで記事を執筆中。自身で「ロシアの仮想通貨情報をひたすら翻訳するブログ」(https://cryptorussian.blogspot.com/)も運営。

 

 

柳澤賢仁

 

柳澤国際税務会計事務所代表/柳澤総合研究所代表/税理士

 

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、アーサーアンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て2004年に独立。独立後に支援したスタートアップのなかからすでに2社がIPO。起業家の海外支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&A、海外税務のアドバイザリー業務など幅広く手掛ける。主な著書に『お金持ち入門』(共著)、『資金繰らない経営』などがある。

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