ロシア、ポーランド、マルタ、エストニア…仮想通貨の税金事情

仮想通貨の下落が止まらない。ビットコイン価格はついに50万円を割れた。しかし、海外では着々と仮想通貨への投資環境が整いつつある…。 国際税務のスペシャリストである柳澤賢仁氏による仮想通貨対談企画第3弾はロシア生まれで日本語、英語も堪能なトリリンガル・クリプトウォッチャー「ロシアンOLちゃん」が登場。第4回のテーマは、「ロシア、ポーランド、マルタ、エストニア…仮想通貨“税”事情」。

日本が参考にすべき仮想通貨先進国は?

柳澤 いろんな国をウォッチされているロシアンOLさんが考える、日本が参考にすべき国はどこでしょうか?

 

ロシアンOLちゃん(以下ロシアン) たくさんありますけど、毎日のように状況が変わっていくので、海外の事例を研究する際には注意が必要です。例えば、ロシアではクリプトに関連するものだけで、3つの法案が秋の国会に提出されました。「デジタル金融資産に関する法案」と、デジタルライト(トークンとICO)と電子マネーを定義づける「ロシア連邦民法第1編、第2編および4編の改正について」、それとトークンの発行とクラウドファンディングの位置づけに関する「投資誘致のための代替方法」に関する法案です。ところが、10月にはデジタル金融資産に関する法案から「マイニング」と「仮想通貨」という言葉が削除されてしまいました。おそらく、国家としてビットコインの存在を認めない、という判断があったと思います。

でも、一方でロシア最大の銀行であるスベルバングが「法案が承認されたら顧客向けにICO支援事業を始める」とも発表しています。経済界と政府・議会のクリプトに対するスタンスが定まっていないので、投資家も混乱気味なのです。国会では「個人のクリプト投資にかかる税金は通常の所得税と同じ13%」と議論されており、ロシア国税局も「クリプトで利益が出た人は自己計算で申告してください」というニュースレターを出しているのですが、クリプト取引に対する課税方法が明らかにされていないので、どう申告したらいいの?と困惑している投資家が多いのが現状です。

国を挙げてクリプト企業を誘致するマルタやエストニア

柳澤 ロシア以外の国々はどうですか?

 

ロシアン ポーランドは面白いと思います。既存の税制に当てはめると、クリプトの利益に対して30%前後の税金がかかってしまうのですが、投資家のほうから「税金が高すぎる」「税制を見直してほしい」と申し立てがあって、ポーランド政府は「検証期間中は非課税にする」と発表したんです。

 

柳澤 完全に非課税ですか!?

 

ロシアン もともとポーランドではクリプトは資産と見なされていて、税率は18%と32%の2つカテゴリーに分けられているんですけど、「クリプトに関して深く分析するために、一時的にゼロにする」と決めたんです。ただ、その直前に、ポーランド政府は約3万ドル(約330万円)をアンチ・クリプト・プロパガンダに費やしていたことが明らかになっています。必ずしも、クリプトに対してポジティブじゃないので、すぐにポーランド進出をお勧めすることもできませんが・・・。

 

柳澤 EU(欧州連合)はマネロン対策に力を入れていますよね。だから、EU全体ではクリプトに対してネガティブなイメージがあるけど、マルタのように国を挙げてクリプト系企業を誘致しているところもある。

 

ロシアン EUでは各監視機関がマネーロンダリングやテロ資金調達を防ぐためのデジタル通貨規制の新しい法的枠組みを着々と整備しています。プリペイドカードによる匿名の支払いを禁止し、仮想通貨取引所の透明性要件も制定されています。そうした内容を盛り込んだ規制案を、EU加盟国は18か月以内に各国の国内法令に導入していくことも決定している。欧州委員会(EC/EUの政策執行機関)では「仮想通貨を効果的に監視するため、監督機関は通貨アドレスをオーナーと紐づけたり、自己申告メカニズムを用意すべきである」と議論されているので、今後は取引所の口座情報とウォレットアドレス、個人情報はすべて紐づけられていくでしょう。だから、クリプトに対する規制を強める国が多いイメージがありますけど、産業基盤の乏しい小国はチャンスととらえて、逆にクリプト系企業を積極的に誘致しています。その代表例がマルタ。今年4月にはクリプトとICOに関する枠組みを定めた法案やクリプト専門の政府機関の発足を目的とする法案、ブロックチェーン企業を後押しする技術調整&サービス法案がマルタ政府に承認されました。これと前後して、世界最大の取引量を誇るBinanceやOKExなどの取引所が拠点をマルタに移して話題になりました。

 

柳澤 私も先日、初めてマルタに行ったんですけど、暖かいし、食事はおいしいし、それでいて物価がそれほど高くないと知って、今、本気でマルタ進出を考えています。おそらく、マルタ進出を手伝える日本の税理士ってまだいないと思うので(笑)。

 

ロシアン 間違いなくニーズはありますね。でも、同じく小さな国で言うと、エストニアも面白いんですよ。最短18分で発行される「スタートアップビザ」を用意していて、世界中からベンチャー企業を誘致しています。ホームページ上でそのスタートアップ企業の一覧をチェックできるんですけど、一番多いのはクリプト系。エストニアが導入している「e-Rresidency」サービスを利用すれば、外国人でも簡単に“デジタル国民”になって、会社を作ったり、銀行口座を開設することができます。クリプトに関する法律や特別な税制は特になく、所得税は一律20%と定められているので、個人投資家にはあまりメリットがありませんが、ヨーロッパに会社を作るのであればエストニアが魅力的です。

 

柳澤 日本人がヨーロッパで労働許可や居住許可を取る際には、非常に手間がかかります。その点、エストニアで簡単に取得できるのなら、非常に使い勝手がよさそう。ヨーロッパの多くの国は「シェンゲン協定」を結んでいて、国境検査なしで国を行き来できるようにしているから、エストニアのスタートアップビザを取得するだけで、シェンゲン協定加盟国を自由に出入りできるようになるのかな…。

 

ロシアン エストニアでは会社の利益を引き出さない限り法人税はかかりません。所得税と同じように法人税率も一律20%と定められているんですけど、内部留保のかたちでエストニア法人に利益をため込んでいる限りでは、課税されないんです。

 

 

ロシアンOLちゃん

 

クリプトウォッチャー@crypto_russia

 

ロシア・ウラジオストク出身。14歳のときに国際交流プログラムで来日し、富山県で1週間過ごしたことをきっかけに日本語の勉強を開始。極東連邦大学日本語学部に進学した後も日本に留学。卒業後は日本の商社に就職。投資会社を経て、今年ブロックチェーンプロジェクトのコンサルティング業務を手掛けるベンチャー企業に転職。仮想通貨との出会いは’16年。’17年から少額で投資も開始。同時に、堪能な語学力を生かして、ロシアや欧州の情報をツイッターで配信し始めることに。現在は『BTC News』『Coin Choice』『FISCO』などで記事を執筆中。自身で「ロシアの仮想通貨情報をひたすら翻訳するブログ」(https://cryptorussian.blogspot.com/)も運営。

 

 

柳澤賢仁

 

柳澤国際税務会計事務所代表/柳澤総合研究所代表/税理士

 

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、アーサーアンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て2004年に独立。独立後に支援したスタートアップのなかからすでに2社がIPO。起業家の海外支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&A、海外税務のアドバイザリー業務など幅広く手掛ける。主な著書に『お金持ち入門』(共著)、『資金繰らない経営』などがある。

 

柳澤国際税務会計事務所 代表
株式会社柳澤総合研究所 代表
税理士 

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程を修了後、アーサー・アンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て、2004年に独立。「大きくなったあのベンチャー企業も最初はフリーランスに近かった」「フリーランスのひとの中に明日のスーパースターがいるはず」と、日々、起業家やスタートアップ、ベンチャー企業、ビジネスモデルを研究し、積極的に情報発信を行っている。

独立後に支援したスタートアップのなかから2社のIPO(株式公開)が実現(2016年現在)し、現在も起業家の海外進出支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&Aなど幅広い分野で支援を行う。

ベンチャー三田会発起人。第30回(平成19年度)「日税研究賞」(税理士の部)を史上最年少(当時30歳)で受賞。主な著書に『お金持ち入門』(共著)、『資金繰らない経営』などがある。

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著者紹介

連載仮想通貨×国際税務のプロフェッショナル/税理士・柳澤賢仁の「Crypto Currency」対談

 

 

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