弁護士と税理士が語る「ICOプロジェクトの難しさ」とは?

2019年でビットコインが誕生してちょうど10年。仮想通貨とそれを支えるブロックチェーン技術は今後、世界をどのように変えていくのか? 仮想通貨を取り巻く法務と税務の変化から、未来について大論争! 仮想通貨に関する税務のエキスパートである柳澤賢仁税理士の仮想通貨対談企画第4弾は、日本人弁護士には珍しく、多数のICOプロジェクトでリーガルアドバイザーを務めてきたシンガポール在住の森和孝弁護士が登場。第1回のテーマは、「ICOプロジェクトの難しさ」。

シンガポールを拠点にICO案件を手掛ける日本人弁護士

柳澤 森先生はクリプト界では知る人ぞ知る弁護士。法律事務所「One Asia Lawyers」のシンガポールオフィスに勤めながら、日本人弁護士の中では最も多くの国外ICO(Initial Coin Offering)プロジェクトに携わっていますよね。

 

 単に、シンガポールに住んでいる日本人の弁護士が少ない、と言ったほうが正しいかもしれません。おそらく、40人ぐらいしかいないでしょう。加えて、わざわざ仮想通貨関連の案件を手掛けようという弁護士もいない。シンガポールに拠点を置いている大手企業の契約チェックなどの業務に携わっていれば十二分に稼いでいけるので、法的リスクの判断が難しく、手間のかかる仮想通貨に首を突っ込もうという弁護士がいないんですよ(苦笑)。

 

柳澤 これまで、いくつのICOに関わってきました?

 

 15件ですね。そのうち13件は日系企業がシンガポールに拠点を構えてICOを行った案件。残り2つは中国系企業と米国企業の案件です。

 

柳澤 それだけの数のICOに関わった日本人弁護士は他にいないのではないですか? ご存知のように事実上、現時点では日本国内でのICOができません。金融庁は仮想通貨交換業の登録を行っている取引所を介して新たなトークンを販売するのはOKとしていますが、JVCEAによる体制準備が進められている最中のいま、取引所が新たなトークンを扱える状況にはないのです。

 

それでも日本の大手法律事務所に「ICOをやりたい」という問い合わせは多く、私が聞いたところでは、仮想通貨取引所のリーガルアドバイザーなどを行っている某大手事務所には100件を超えるICO案件が舞い込んでいるようですが、「どうしてもやりたければ、国外でやるしかないですね」とアドバイスをして終わるそうで、ICOに携わった経験のある日本人弁護士は稀有なんです。

 

 その点で言うと、柳澤さんも珍しい税理士じゃないですか? いくつものICOに関わっている。

 

柳澤 森先生とはこれまで4つのICOプロジェクトで一緒させてもらいましたね。

 

これまで4つのICOプロジェクトで
「森先生とはこれまで4つのICOプロジェクトで一緒させてもらいましたね」(柳澤)

 

 柳澤さんには助けられました。日系企業がシンガポールでICOするとなると、日本国内のリーガル(法務)とタックス(税務)の専門家に加えてシンガポールのリーガルとタックスの専門家の計4人の専門家が必要になってきます。けど、クライアントは日本が拠点だから、どうしても日本のリーガルかタックスの専門家が窓口になりがち。これまで一緒にやった4件では、いずれも柳澤さんがクライアントとリーガル&タックスチームの窓口役を担ってくれたから、やり取りがスムーズでした。

 

柳澤 タックスとリーガルって“鶏と卵”の関係で、法的要件が定まらないと税務処理の方法が決められないけど、リーガルからすれば「課税関係のジャッジを先に決めてくれたら、それに沿った法的要件を整える」というスタンスです。さらにクライアント側の要望があるから、クライアントとリーガル、タックスで“鶏と卵とプラスアルファ”みたいにグルグル回って、なかなか進まないプロジェクトも少なくありません。

 

 そうなんですよ・・・。

シンガポール赴任を機にクリプトを扱うように

柳澤 クリプトに携わるようになったのはいつからですか?

 

これまで4つのICOプロジェクトで
「ベンチャー企業が次々とシンガポールや香港に進出していくのを目の当たりにして」(森)

 2016年です。もともと大阪で弁護士事務所を共同経営でやっていて、スタートアップの支援や上場支援が主な業務でした。その当時の顧問先の1社が仮想通貨取引所を日本でやりたいというので、勉強を始めたんです。ただ、その頃からベンチャーが続々とシンガポールや香港に進出していくのを目の当たりにして、自分もシンガポールに行きたくなっちゃって・・・家を売ってシンガポールで大学に通いながら働こうかなんて相談したら、高校時代の先輩にあたる弁護士から「アホか」とツッコまれました(苦笑)。シンガポールの物価の高さを全然把握してなかったんです。

 

結局、その先輩弁護士から「現地に赴任していた弁護士が帰国するから代わりに行くか?」と誘っていただき、2017年からシンガポールに赴任。その直後に、現地オフィスがイギリス系のグローバルファームに買収されたので、現地の日本企業の顧問先を開拓する営業活動に専念していたところ、“競合先”だったOne Asia Lawyersに興味を持ち始めて、移籍したという格好です。

 

柳澤 それからクリプト関係に詳しくなっていったのですか?

 

 シンガポールに来てからすぐにNo Wallというクリプト関係のコンサルをしているシンガポール企業の担当をするようになってから、だいぶ詳しくなりましたね。自分自身が実際にビットコインを買ったのは、確か、シンガポールに移住した2017年の6月ぐらい。1BTC=30万円ぐらいのとき。もう1年半以上、放ったらかしですけど、全然儲かっていません。一応、クリプト系に強い弁護士なのに(苦笑)。

 

 

 

森和孝 弁護士/ICOリーガルアドバイザー

 

One Asia Lawyersパートナー弁護士/Head Fintech&ICOチーム@シンガポール

 

2010年に弁護士登録。大阪のブティック系法律事務所に勤務し、スタートアップ支援や国際法務に従事。2017年に英国を本拠地とする大手グローバルファームのエバーシェッドのシンガポールオフィスへ移籍し、ジャパンデスク責任者に。2018年にアジア10か国にオフィスを構えるOne Asia Lawyersに転職。シンガポールや周辺国において、仮想通貨取引所の設立やICOプロジェクトの国際法務を担当。日本人弁護士としては、最も多くのICOに携わる弁護士として知られる。

 

 

柳澤賢仁 国際税理士

 

柳澤国際税務会計事務所代表/柳澤総合研究所代表/税理士

 

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、アーサーアンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て2004年に独立。独立後に支援したスタートアップのなかからすでに2社がIPO。起業家の海外支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&A、海外税務のアドバイザリー業務など幅広く手掛ける。主な著書に『お金持ち入門』(共著)、『資金繰らない経営』などがある

 

柳澤国際税務会計事務所 代表
株式会社柳澤総合研究所 代表
税理士 

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程を修了後、アーサー・アンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て、2004年に独立。「大きくなったあのベンチャー企業も最初はフリーランスに近かった」「フリーランスのひとの中に明日のスーパースターがいるはず」と、日々、起業家やスタートアップ、ベンチャー企業、ビジネスモデルを研究し、積極的に情報発信を行っている。

独立後に支援したスタートアップのなかから2社のIPO(株式公開)が実現(2016年)し、現在も起業家の海外進出支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&Aなど幅広い分野で支援を行う。

ベンチャー三田会発起人。第30回(平成19年度)「日税研究賞」(税理士の部)を史上最年少(当時30歳)で受賞。主な著書に『お金持ち入門』(共著))、『資金繰らない経営』などがある。

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著者紹介

連載仮想通貨×国際税務のプロフェッショナル/税理士・柳澤賢仁の「Crypto Currency」対談

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