世界的にセキュリティトークンでのICOが増えている理由とは?

2019年でビットコインが誕生してちょうど10年。仮想通貨とそれを支えるブロックチェーン技術は今後、世界をどのように変えていくのか? 仮想通貨を取り巻く法務と税務の変化から、未来について大論争! 仮想通貨に関する税務のエキスパートである柳澤賢仁税理士の仮想通貨対談企画第4弾は、日本人弁護士には珍しく、多数のICOプロジェクトでリーガルアドバイザーを務めてきたシンガポール在住の森和孝弁護士が登場。第3回のテーマは、「世界的にセキュリティートークンでのICOが増えている理由」。

セキュリティトークンに分類されやすいシンガポール

柳澤 ほかの国に目を向けると、スイス当局は2018年2月にICO(Initial Coin Offering=トークン発行による資金調達)に関するガイドラインで、決済トークンとユーティリティトークン(あるサービスにアクセスするためのトークン)、資産トークンの3つに分類して既存の金融市場規制法を適用すると発表しました。マルタは仮想金融資産法(VFA=The Virtual Financial Assets Act)などでトークンを4つに分類しています。

 

これに対して、シンガポールはその分類が大雑把というか、セキュリティトークンの枠が非常に広い。シンガポールでは価値保管機能があるものはすべてセキュリティトークンに分類されることになっています。そうなると、米ドルを担保に取引価格を理論上1ドル=1USDTに固定されているTether(テザー)のようなステーブルコイン(発行方法の特徴などにより、価格変動幅が極めて小さいトークン)もセキュリティトークンとしてみなされてしまいます。

 

「ステーブルコインもセキュリティトークンとしてみなされてしまいます」(柳澤)

 

 米ドルとペッグしているようなステーブルコインは、発行体がその対応する米ドルでの交換を保証している点で、社債性を有し、かつ、価値の保存が可能なので、原則としてセキュリティトークンとしてみなされてしまいますね。ただ、特定のコミュニティやサービス上でしか決済機能を有しないものでしたら別です。Amazonコインみたいなものがあるとして、Amazon内では1枚あたり100円の価値があるとして取引されていても、発行体が払い戻しに応じるわけではなく、決済手段として消費している限り、セキュリティートークとはみなされません。

 

柳澤 「1Amazonコイン=100円で売り出します」とICOで売りだしたら、どうなりますか?

 

 そこも考え方は同じで、発行体であるAmazonが、1コイン100円での払い戻し、要は対価の無い交換に応じるようなスキームであれば、セキュリティートークの発行であるので、証券法上のcapital markets services licence等のライセンスが求められます。他方で、Amazonが払い戻しに応じないスキームであれば、ユーティリティトークンによるICOであるとして、証券法上のライセンスは要求されない可能性があります。もっとも、以前話した新しい決済サービス法上のライセンスは必要になる可能性があります。このAmazonコインは、きっと、「商品、サービス又は債務の支払いの媒体として少なくとも公衆の一部に受け入れられているもの」つまり、「Digital Payment Token」に該当するものになる可能性が高いからです。

 

柳澤 そのセキュリティトークンを仮想通貨取引所が扱うことはできないわけですよね?

 

 ライセンスがあれば可能です。ただ、法改正の後も、非常に高いハードルになるので、現状ライセンスを持っている証券会社等が取り扱いを検討することになると思います。

米SECの影響でセキュリティトークンによるICOが増加

柳澤 その点では日本と似ていますね。セキュリティトークンは文字通り「証券」と同じなので、日本では金融商品取引法の適用を受けて、仮想通貨取引所では扱えない。だから、日本のクリプト系プロジェクトはユーティリティトークンをつくってきたわけです。おそらく、シンガポールも同じ流れでしょう。ただ、1つだけ問題がある。クリプト市場の地合いが悪いときは、ユーティリティトークンが売れないんですよ。価値の裏付けがあるセキュリティトークンのほうが買われやすい。

 

 だから、昨年からSTO(セキュリティトークンによるICO)が増えているんでしょうね。

 

「既存の証券化と変わらないのであれば、クリプトにしなくても、今ある株券や債券でいいのでは?」(柳澤)

柳澤 その流れをつくったのはアメリカです。SEC(証券取引委員会)が、ICOトークンの大半が有価証券に該当するとして厳しく規制した結果、有価証券関連法案に則ってトークンを発行するほうが低リスクとの考えからSTOが増えた。

 

 米SECの影響は大きいですね。シンガポールでもSTOが増えてきています。また、フィリピン、タイ、マレーシアも最近法改正をして、STOを自国に誘致する方向で動き始めています。
 

柳澤 個人的には、既存の証券化と変わらないのであれば、クリプトにしなくても、今ある株券や債券でいいのでは?と懐疑的に思っている部分もあるのですが、今後はセキュリティトークンが主役となっていくように感じています。ブロックチェーンをいかにうまく活用するかがキモですよね。

 

その点、決済サービスを提供するFinTech系ベンチャーのエニーペイは鋭かった。以前からICOコンサルティング事業を展開していましたけど、昨年8月の時点でSTOを実施するのに必要なトークン発行システムを作り上げて「セキュリティトークンに寄せていく」ことを発表しました。森先生も僕もエニーペイの顧問をやらせてもらっているから言うわけじゃないけど(笑)、クリプトの動向を日本で最もよく分析している企業の1つと言っていいんじゃないでしょうか。

 

 

 

森和孝 弁護士/ICOリーガルアドバイザー

 

One Asia Lawyersパートナー弁護士/Head Fintech&ICOチーム@シンガポール

 

2010年に弁護士登録。大阪のブティック系法律事務所に勤務し、スタートアップ支援や国際法務に従事。2017年に英国を本拠地とする大手グローバルファームのエバーシェッドのシンガポールオフィスへ移籍し、ジャパンデスク責任者に。2018年にアジア10か国にオフィスを構えるOne Asia Lawyersに転職。シンガポールや周辺国において、仮想通貨取引所の設立やICOプロジェクトの国際法務を担当。日本人弁護士としては、最も多くのICOに携わる弁護士として知られる。

 

 

柳澤賢仁 国際税理士

 

柳澤国際税務会計事務所代表/柳澤総合研究所代表/税理士

 

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、アーサーアンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て2004年に独立。独立後に支援したスタートアップのなかからすでに2社がIPO。起業家の海外支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&A、海外税務のアドバイザリー業務など幅広く手掛ける。主な著書に『お金持ち入門』(共著)、『資金繰らない経営』などがある

柳澤国際税務会計事務所 代表
株式会社柳澤総合研究所 代表
税理士 

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程を修了後、アーサー・アンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て、2004年に独立。「大きくなったあのベンチャー企業も最初はフリーランスに近かった」「フリーランスのひとの中に明日のスーパースターがいるはず」と、日々、起業家やスタートアップ、ベンチャー企業、ビジネスモデルを研究し、積極的に情報発信を行っている。

独立後に支援したスタートアップのなかから2社のIPO(株式公開)が実現(2016年)し、現在も起業家の海外進出支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&Aなど幅広い分野で支援を行う。

ベンチャー三田会発起人。第30回(平成19年度)「日税研究賞」(税理士の部)を史上最年少(当時30歳)で受賞。主な著書に『お金持ち入門』(共著))、『資金繰らない経営』などがある。

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著者紹介

連載仮想通貨×国際税務のプロフェッショナル/税理士・柳澤賢仁の「Crypto Currency」対談

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