競争社会となり、帳簿さえ付けていればそれなりに経営が続けられた時代は終わりました。本記事は、そんな時代を生き抜くために重要な「会計」の基本知識について見ていきます。

日常的にどれだけ儲かっているかを示す「経常利益」

③営業利益から「営業外損益」を引いたものが、「経常利益」です。営業外損益は、金融機関への利息など本業以外でかかった費用のこと。経常利益は日常的な企業活動を示しています。つまり、日常的にどれだけ儲かっているかを示す重要な値です。

 

④経常利益から「特別損益」を引いたものが「税引前当期純利益」です。特別損益というのは、土地の売却や災害による損益、退職金の支払など特別な理由で生じた支出のこと。一時的な理由で生じたものなので、毎年必ず発生するものではありません。

 

⑤税引前当期純利益から「法人税等」を引いたものが「当期純利益」です。企業にかかる税金には、法人税・住民税・事業税・消費税などがあります。当期純利益が1年間に稼いだ最終的な利益、いわゆる純利益になります。このように利益を5段階に区分しているのは、事業の損益状況を明らかにするためです。経営というのは「最終的な利益さえ分かればいい」というものではなく、「どのセクションで利益・損益が出ているか」を把握しなければなりません。それを見るのがP/Lなのです。

 

【図表4 損益計算書の例】

製品に掛かる材料や経費の内訳を表示したもの

「製造原価報告書」は、英語のCost ReportからC/Rとも呼びます。製造業では不可欠な計算書です。

 

完成品を買ってきて販売する場合は、仕入額=売上原価になりますが、自社で製造して販売する場合は、材料や経費が売上原価になります。

 

損益計算書の売上原価は合計額のみを表示するのに対して、C/Rは売上原価の内訳を表示します。当期製造費用に期首の仕掛品(製造途中にある製品)を加算し、そこから期末の仕掛品を差引く形で示します。

分類する費用によって形式は分かれる

形式としては、①材料費、労務費、経費によって分類する形式と、②製造直接費、製造間接費によって分類する形式の2つがあります。

 

①材料費、労務費、経費によって分類する形式

材料費には、直接材料費と間接材料費の合計について、期首、当期仕入、期末の内訳が表示されています。労務費には、直接労務費と間接労務費の合計あるいは直接工賃金、間接工賃金などの内訳が表示されます。

 

②製造直接費、製造間接費によって分類する形式

直接材料費、直接労務費とそれ以外の製造間接費に分けて表示されます。

 

直接材料費:主要材料費、買入部品費

間接材料費:補助材料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費

直接労務費:直接工賃金

間接労務費:間接工賃金、工場従業員賞与手当、工場従業員福利厚生費、退職金ほか

直接経費:外注加工賃、特許権使用料

間接経費:工場建物減価償却費、電力料、ガス代、水道料、固定資産税、工場施設負担額

 

【図表5 製造原価報告書の例】

指標の存在は「100社100通り」

貸借対照表が“ある時点での”財務状態を示すのに対して、損益計算書は“1年間の”経営成績を示しています。この2つから導き出される様々な指標を基に、経営の状態をはかることができます。具体的には、「収益性」「効率性」「安全性」が分析できます(図表参照)。

 

収益性の指標では、投資に対して利益がどの程度生み出されているかが分かります。効率性の指標では、人・モノ・お金などが無駄なく生産に結びついているかが分かります。安全性の指標では、収支のバランスが取れているか、資金繰りが安定しているかが分かります。

 

指標はたくさんあって、どの指標がより重要かは会社ごとに異なります。また、業種によっても必要な指標が違います。つまり、100の会社があれば、100通りの指標があるのです。

 

ここでは、どの会社・どの業種でも注目したい指標を4つピックアップしておきます。「指標とは、こういうふうに分析して経営に役立てるのだな」という、ざっくりとした感覚だけ掴んでいただければ今は結構です。

本記事は、2015年7月30日刊行の書籍『低成長時代を生き抜く中小企業経営9カ条』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

低成長時代を生き抜く 中小企業経営9カ条

真下 和男

幻冬舎メディアコンサルティング

経済成長や景気回復が報じられ、企業の倒産件数も減少傾向にあると言われるその裏で、休廃業・解散に追いこまれる企業の数が高止まりしている事実が隠されています。休廃業・解散は、経済状況悪化による事業継続困難という意味…

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