今回は、空室対策として、オーナー自ら物件の魅力を不動産会社の営業マンにプレゼンする重要性を見ていきます。※本連載では、税理士・司法書士で、渡邊浩滋総合事務所代表の渡邊浩滋氏の著書、『税理士大家さん流 キャッシュが激増する無敵の経営』(ぱる出版)から一部を抜粋し、賃貸経営で収入を増やすためのキャッシュフロー改善術をレクチャーします。

空室の原因を不動産会社のせいにする人は多いが…

募集面を見直したら、次は営業活動に問題はないか、検証していきましょう。

 

賃貸物件の募集や営業をするのは、大家さんではなく、不動産会社の営業マンが行うことが一般的です。

 

営業マンが空室を埋めようと動いてくれなければ、空室は埋まらないと言えます。

 

①大家さんが不動産会社に営業をかけているか

大家さんが募集や営業を不動産会社に任せていることから、空室が埋まらない原因を不動産会社のせいにする人が多いと感じます。

 

「一生懸命になってくれていないのではないか」

 

「本気で空室を埋めようと思っているのか」

 

そんな不満を言ったところで、空室は絶対に埋まりません。

 

考えるべきは、営業マンが、物件の存在を把握しているかです。

 

営業マンが、本当に自分の物件のことをよくわかっているのでしょうか? そうとは限らないでしょう。想像してみてください。営業マンは、管理物件をどのくらいかかえているのでしょう?

 

何百戸、何千戸かもしれません。

 

そこに、毎日空室の物件情報が入ってきます。

 

その中で、特定のオーナーの物件だけに気をかけてはいられないでしょう。

 

オーナーからすると、「お金を払って依頼しているのだから、やってくれなければ困る」という気持ちもあるでしょう。そうはいっても、数ある空室から特定の部屋に力を注ぐのも現実的には難しいのではないでしょうか。

 

ですので、営業マンには、自分の物件の魅力をまずは理解してもらうところから始めてみましょう。


そのためには、「大家さん自身が不動産屋さんへ訪問し、自分の物件の魅力を伝える」という営業をしなければなりません。企業に勤める営業マンは、自社の商品を買ってもらうために、何度も何度も得意先に営業しにいきます。

 

何度も通うことで、親近感や信頼関係が生まれ、商品が売れることになるのです。

 

「物件の一番の営業マンは誰か?」といったら、それは、大家さん以外にありません。

 

最初は、手土産を持って、空室の問い合わせ状況やお客さんの出入りの状況、賃貸の市況などを話してくるだけでよいでしょう。徐々に、自分の物件の魅力を伝えて、物件の説明資料やチラシなどを持って行くのが効果的です。

営業マンの「営業トーク」は大家が考える⁉

②営業マンの心理を考える
営業マンは、空室を次のような優先順位で紹介するといわれています。

 

[営業マンの空室紹介の優先順位]

①自社物件

②自社管理物件

③自社管理以外物件(自主管理物件、他社管理物件)

 

当然、自分の勤めている会社の物件を埋めないと、会社の収益が上がらず、お給料ももらえなくなってしまうので優先するでしょう。

 

そして、会社が管理をしている物件を埋めないと、管理を委託しているオーナーさんから文句を言われてしまうので、優先して埋めようという心理は働きます。

 

すると、自社以外の管理物件は、なかなか優先的に紹介してもらえなくなります。

 

だからこそ、私はお願いしている管理会社以外の不動産会社にどんどん営業をしていくべきと考えています。

 

なぜならば、営業マンの中に優先順位はあるものの、彼らには会社のノルマを達成しなければならないという現実があります。

 

「今月何件成約しなければならない」ということです。

 

成約して初めて報酬がもらえる業界ですので、「何件紹介した」という物件紹介数そのものは、不動産会社としてはあまり評価されないのです。

 

そういう観点からすると、自社管理物件よりも、紹介したらすぐ成約に結びつく、キメ物件の方を優先します。

 

どうやったら自分の物件がキメ物件になるのか?

 

一番の近道は、ターゲットに向けて、適切なアピールをすることだと思っています。

 

いくらいい物件だからといって、ワンルームの物件を、4人家族に勧めても、成約する可能性は限りなく低いのです。そのために、物件のターゲットを絞って、キャッチコピーを作るということが大事になってきます。

 

営業マンには、明確にターゲットとキャッチコピーを伝えて、ターゲットが来たら、キャッチコピーとともに物件を紹介してもらいましょう

 

③営業マンが営業しやすいようにしているか

「ターゲットにアピールしても、なかなか決まらない」ということもあるでしょう

 

「営業マンがきちんとキャッチコピーを伝えられているか」「営業トークができているか」も大事な要素になってきます。

 

新人の営業マンであれば、心もとない部分もあるかと思います。そういっても、担当を変えてもらうのは至難の業です。そこで、営業トークを大家さんの方で考えてあげましょう。大切なのは次の4つです。

 

[伝えるべき4つの営業トーク]

●キャッチコピー

●プラスのポイント

●マイナスのポイント

●マイナスを補うポイント

 

というように、トークの型に当てはめていくと漏れなく伝えられます。

 

たとえば、「この部屋は、20代女性が安心して住めるセキュリティーマンション(キャッチコピー)で、マンションの外と共用部分に防犯カメラ5台を設置しています。もし不審者がいても、すぐにセキュリティー会社の警備員がかけつけるシステムを導入しているので安心(プラスのポイント)です。駅から徒歩12分と少し離れている(マイナスのポイント)といった面もありますが、商店街の道を通っていくので、夜道でも明るいですし、「ついでの買い物にも便利」と喜ばれています(マイナスを補うポイント)」といった具合です。

 

物件のチラシを作って、それをお客さんにそのまま渡してもらうのでもよいと思います。物件のことを一番よくわかっているのは、その物件の大家さんなのです。

「物件周辺以外の不動産会社」にも営業すべき理由

④広く網をかけているか

物件周辺以外の不動産会社にも営業はかけましょう。物件周辺にある不動産会社さんにだけ営業をかけてもなかなか空室は埋まりません。

 

物件周辺以外の不動産会社にも営業をかけるべきです。

 

とくに、物件の最寄り駅の沿線上にあるターミナル駅の不動産会社は外せません。

 

物件を探す人の気持ちになって考えてみましょう。

 

自分の物件がターミナル駅にあればよいですが、そうでなければ、どうやってその駅で物件を探すのでしょうか。

 

その地域に会社や学校があればピンポイントで物件を探しますが、電車で通学や通勤をするのであれば、その沿線で探すことが多いと思います。

 

初めて住むような地域であれば、まずは、有名な駅やターミナル駅で探す方も多いのではないでしょうか。家賃が高いなど、条件が合わなかったりで、その駅にある物件は諦めて、その沿線で探すというようなプロセスを踏む可能性が高いのです。

 

ですから、ターミナル駅にある不動産屋さんは、その沿線上の物件情報をよく知っていて、お客さんに紹介しています。

 

その機会を逃さないように、ターミナル駅の不動産屋さんにも漏れなく営業をかけるのです。

 

⑤営業は1回だけでは終わらない

1回営業をしても、なかなか成約の連絡がないことから、営業マンとの接触をやめてしまう大家さんがいらっしゃいます。

 

1回の営業で成約できるほど甘くはありません。それで成約につながるなら、空室に悩む大家さんはいません。

 

何度も何度も足を運んで営業するべきです。大変ではありますが、だからこそ、やる価値があるのです。接触の回数が多ければ多いほど、自分の物件が営業マンの記憶に残ります。

 

といっても、毎日毎日通い詰めるのも営業マンにとって迷惑になる可能性もあるので、週一回の訪問か、電話やメールをするのがよいと思います。

税理士大家さん流 キャッシュが激増する無敵の経営

税理士大家さん流 キャッシュが激増する無敵の経営

渡邊 浩滋

ぱる出版

本書は、大家さんの賃貸経営におけるキャッシュフロー改善の教科書です。 著者の渡邊さんは税理士業を行いながら、大家業も行う「税理士大家さん」ですが、経営状態の改善ノウハウには定評があります。渡邊さんは、税理士試…

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