重要物件を見極める「稼働計算」の方法
賃貸物件が1つで、かつ、空室が1部屋しかなければ、その部屋を埋めることに全力を注げばよいでしょう。
しかし、賃貸物件が複数あって、空室がいくつもある場合、全てに同じ労力はかけられないでしょう。
それをやると、中途半端な空室対策となり、効果が出ずに、時間とお金の浪費になってしまう恐れがあります。
「どの物件により多くの時間とお金を費やすか」は大事な問題になってきます。
常に空室状況を確認することが理想ですが、なかなか管理する時間がないという方もいらっしゃるでしょう。
そこでオススメなのが、物件の稼働率を計算することです。
実際の年間の家賃収入/満室時の年間家賃収入×100
で計算できます。
1円単位まで正確に計算しようと思わないでください。
あくまでも、どの物件に注力すればよいか、の判断がつけばよいので、大雑把な金額で計算して、方向性だけ確かめられればよい程度に考えましょう。
なぜ稼働率を計算するかというと、収入金額だけで比較しても、物件の規模や一部屋あたりの家賃が異なるので金額だけでは比較できない部分が多いためです。稼働率が低いところを優先的に対策するようにしましょう。
[図表1]稼働率計算の見本
物件写真はプロカメラマンに撮影依頼すべき⁉
(1)サイト情報をチェック
一昔前は、不動産屋さんに飛び込んで物件を探すことが一般的でしたが、現在は、インターネットで物件を探して、不動産屋さんに問い合わせをするというのが主流です。
インターネットに載っている情報をたよりに、物件を探すことになるため、その情報が正確に載っていないと、当然見つけてくれません。
賃貸物件情報サイトへの登録は、原則、不動産会社さんでしかできません。
「不動産会社さんに登録を任せているから、大丈夫」ということはありません。
きちんと情報を載せている不動産会社さんもいますが、「築年数が間違っている」「駅徒歩表示が間違っている」というような誤掲載は、本当によくあります。
たとえば、徒歩9分の物件であるところを、徒歩11分で登録してあるとどうなるでしょうか?
賃貸物件情報サイトでは、膨大な数の物件が登録してあるので、物件を探すときは、条件を指定して検索するのが一般的です。
細かく条件を設定することが可能になるため、「徒歩10分以内」にチェックを入れると徒歩10分以内と登録した物件しか出てこないのです。
検索から外れた物件が選ばれることはほぼないと言えるでしょう。
また、物件写真が最新になっているかもチェックしてください。
せっかく外壁の塗替えをしてキレイにしたのに、塗替え前の写真が掲載されていては、意味がありません。
加えて
「写真がピンボケしていないかどうか」
「部屋や設備の状況がわかる位置から写真が撮られているかどうか」
などもチェックをするようにしてください。
管理会社さんが物件の写真を撮ることが多いですが、彼らは写真のプロではありません。
物件の写真だけでもプロのカメラマンに撮影してもらうことも場合によっては必要と考えます。
[図表2]プロに撮ってもらうと写真のイメージはガラリと変わる
(2) 情報が検索されやすくなっているか
敷金・礼金・仲介手数料などの募集条件を見直してみましょう。募集条件によっては、ネット検索でひっかからないことがあります。
入居者さんの気持ちになって考えてみてください。
新しい住居に引っ越すときには、引っ越し費用や新しい家具を揃えたりなど、多額の資金が必要となります。
ですから、敷金、礼金、仲介手数料などの初期費用が高い物件は最初から選ばない人が多いと感じます。
「敷金・礼金ゼロゼロ物件」を検索するような設定にしていなければ、そもそも「検索落ち」してしまいます。
そうかと言って、全ての部屋を「敷金・礼金ゼロゼロ」にする必要はありません。
特に、敷金は、退去時の入居者さんが負担すべき修繕費用の担保になるものです。
また、入居者さんの信用力を図るために、敷金が払えるかどうかは重要な判断要素にもなります。
ですから、物件の前提としては、敷金、礼金をゼロにしておいて、たとえば、「ペットを飼う場合には、家賃の2カ月分の敷金を預かります」というような条件付けにします。
すると、その条件を備考欄などに記載するようにすれば、検索に引っかかりながら、敷金を取るべき人には、敷金を取るという使い分けをすることも可能です。
募集条件が検索のネックになっていないか、どのような検索条件があるのかなど、物件の募集条件と見比べてみると、よりよい検索条件が見えてくるでしょう。
ターゲットを明確にした「キャッチコピー」の作り方
(3)ターゲットを明確にしているか
これまでの賃貸物件は、万人受けするような部屋作りが求められました。白い壁紙、木材色の床、エアコンやキッチンなど必要最低限の設備、10人いたら10人に嫌われない無難な物件と言えます。住居が足りない状況であれば、その戦略は間違っていないでしょう。
しかし、賃貸の需要と供給のバランスが崩れ、供給の方が多い状況ですと、入居者さんから積極的に選ばれる部屋作りをしないとなりません。
つまり、10人いたら2人〜3人に絶対に好かれる物件です。
その2〜3人は誰か、ターゲットを明確にしなければなりません。これから賃貸物件を建てるのであれば、誰をターゲットにするかは自由に決めらるので、そのターゲットに合う部屋の間取りなどを作るべきでしょう。
しかし、すでに賃貸物件があって、構造や間取りに変更が効かないのであれば、ある程度ターゲットは絞られてきます。
では、そのターゲットはどうやって見つけたらよいのでしょうか。
それは、今までの入居者さんの実績が参考になります。
過去どんな入居者さんがいたのか、統計をとってみるのです。すると傾向が見えてくるのではないでしょうか。「男性の学生が多いのではないか」「女性20代の会社員が多いのではないか」とあたりを付けていくのです。同時に物件の立地や設備と照らし合わせてみてください。
なぜそれらの入居者から選ばれたのか?
立地や設備と紐づけられるか、という視点でみていきます。「学校が近くて、家賃が手ごろだから男性の学生に好まれているのではないか」「駅から近くて、セキュリティーがしっかりしているから、女性の20代の会社員に好まれているのか」など選ばれている理由があるはずです。その理由が明確になったら、ターゲットを1つに絞ります。
2つ、3つ入居者の傾向があったとしても、1つに絞ってください。「男性の学生向けの物件です」というのと「男性の学生と女性の20代会社員向けの物件です」というのでは、前者の方がより物件のイメージが伝わりやすいのです。後者ではぼやけてしまいます。
(4)物件のウリを明確にしているか
ターゲットを絞るために、物件の立地や設備に着目してもらいました。たとえば、あなたの物件に
●駅徒歩3分
●セキュリティーシステム
●浴室乾燥機付き
などがあったら、それこそ物件のウリになるものです。そこから1番ウリになるものを選んでください。選ぶ基準は、他の物件にはあまりないものがよいでしょう。これをUSPと言います。USPとは、「Unique Selling Proposition」の略で、日本語では「独自の売り」という意味のマーケティング用語です。
差別化を端的に伝えられる言葉で、USP があると商品を売り出すときに、セールスせずとも消費者に認識してもらえるようになります。USP を募集チラシ、ネットの募集ペー
ジに記載してもらいましょう。そのとき、ターゲットも一緒に併記しておくと効果的です。
「女性20代会社員向け。防犯カメラ5台完備、セキュリティーマンション」
ここまでくれば、よりその情報が伝わりやすくするために、キャッチコピーを作ります。キャッチコピーは、コピーの才能がなければ作れないと思いがちですが、そんなことはありません。ある程度の型に当てはめれば、それなりのキャッチコピーになります。ここでは3つの型を紹介します。
[キャッチコピーのシンプルな3つの型]
①ストレート型
伝えたいことをストレートに言う方法です。直感的でわかりやすいのが特徴です。
②疑問(共感)型
みんなが共感するような疑問をなげかけることで、「たしかに」と思わせる手法です。
③逆説型
一見「えっ!」と思わせて、考えさせることでインパクトを残す手法です。表現が難しいですが、はまれば絶大なキャッチコピーになります。
いくつかできたら、テストとしてどのキャッチコピーがよいか、管理会社さんと相談してみましょう。そのとき実際にキャッチコピーごとの募集チラシを作成し、どのキャッチコピーの反応がよいか、調べてフィードバックしてみましょう。
[図表3]それぞれの型を使った例