バフェットが重視する「ブランドのマネタイズ」とは?

本連載は、スパークス・グループ株式会社のウェブサイトに掲載されている「COLUMN / バフェット・クラブの金言」を転載したものです。

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ブランドは消費者の体感・経験から生まれ、強化される

グレアムさん、フィッシャーさん、そしてドラッカーさんと、3回にわたり賢人のことを書いてきました。バフェットさんは、こうした先人たちに学ぶことで、「企業のブランド価値をマネタイズ(貨幣価値化)した」最初の投資家だったと私は考えています。順番に説明していきましょう。

 

「ブランドのマネタイズ」について考える前に、バフェットさんが重視する、企業のブランドとはいったいどのようなものか考えてみましょう。

 

消費者行動分析やブランドマネジメントに詳しい青木幸弘氏の論文「ブランド研究における近年の展開」によれば、ブランドの概念が確立されたのは、輸送や通信が発達し物流と情報の拡散が始まった19世紀末ということです。

 

それまで地域ごとに移動が限定されていた市場が広く地域や国境までも越えて拡大していく中で、製品の標準化と大量投入によって市場を創造するために必要とされたのが商品、企業のブランドです。

 

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現代に至るマーケティングに結びついたブランドの考え方は、米国で1980年代に登場した「ブランド・エクイティ」(brand equity)の概念が基になっています。これは、イメージや顧客ロイヤリティといったもともとのブランドの概念に、マーケティングによって得られた市場・顧客情報の結果を統合し、資産的価値を与えるというものです。

 

1990年代になるとマーケティングにおけるブランドの重要性はますます高まり、ブランディングの強化戦略へと関心が向けられていきます。どの企業も「どうやって強いブランドを作り上げるのか」、「自社のブランドの『本質的意味と価値』とは何か」を追求し始めます。

 

企業のブランドを理解するには、ブランドが構築されるための段階的な構造を知らなければなりません。基本となるのは優れた製品力、つまり製品の競争優位性ですが、そこに消費者の感覚的な価値が上乗せされていき、さらに商品の価値が企業のイメージも高めていきます。こうして企業は強力なブランドを確立していくのです。

 

コカ・コーラを例にすると、最初は単なる美味しい炭酸飲料だったのが、大勢の消費者の中で良いイメージの飲み物となり、最終的にはコカ・コーラの商品価値がコカ・コーラ社の企業ブランドを強化していったのです。

 

つまり、企業のブランド価値とは、消費者に支持され、受け入れられる競争力のある商品によってできあがっていくものです。ブランド価値の源泉は製品やサービスそのものではなく、消費者の体感や経験から生まれ強化されます。

 

消費者の体験が生み出す企業ブランドは、長期的に永続力があります。消費者に価値を認めてもらう商品の価値を維持できればブランド価値が失われることもありません。バフェットさんは、このような企業を「深くて大きいモート(堀)がある」企業と呼び、参入障壁が高く他社が簡単には追随できない競争力のある企業として賛美しています。

代表例はコカ・コーラ社、アップル

バフェットさんが保有するもっとも有名な株といえばコカ・コーラ社ですが、これこそ、投資価値を評価するに際して、ブランドをマネタイズ(貨幣価値化)した代表例です。彼が株を買い始めた当時、コカ・コーラ株はバリュー株投資家から見れば、割安ではありませんでした。

 

既に、コカ・コーラは飲料メーカーとして十分に正当な株価がついており、グレアム流の考え方だけであれば、決して魅力のある投資とはいえなかったかもしれません。

 

しかし、バフェットさんは、コカ・コーラが非常に優良な会社であり、その優良さというのは財務諸表上には現れないブランド力によって今後も守られていくと考えました。世界中から愛され、すみずみまで知れ渡っているコカ・コーラのブランド自体が、短期的な価格の上下に惑わされない価値があり、今後も成長を続けていくと信じたのです。

 

バフェットさんは安いという理由だけで、株を買うことはありません。バフェットさんの本当のすごさは、一見安くは見えなくても、ブランドが持つ価値を貨幣の単位で評価し、その企業の株のポジションを大きくとって、長期的にコミットしていく、つまり保有し続けたことです。

 

そして、それを可能にしたのは、バフェットさんが企業評価に際して、経営者の人柄、能力を見ることに加えて、ブランド力を数量的価値として測る投資手法を確立したことにあります。

 

最近のバフェットさんのお気に入り企業は、これまた、人気ブランド企業として世界的に有名なアップル社です。報道によれば、2018年1-3月期にバフェットさんは、アップル株を4割買い増し第3位株主に浮上しました。

 

1990年代後半のITバブル時には、「わからないものには投資しない」という信念で、ハイテク企業に投資しなかったバフェットさんですが、アップルのビジネスモデルが端末を販売するビジネスからサービスの利用者を囲い込む「アップル経済圏」づくりになり、「深くて大きいモート(堀)がある」企業に変化したのを改めて評価したのではないかと思います。

 

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バフェットさんの「ブランドをマネタイズ(貨幣価値化)して立派な企業に集中投資する」という投資手法は、我々を含め多くの投資家に新たな気づきを与えました。スパークスも、バフェットさんに学び、投資を通じてその企業のオーナーになりたいと思える、強いブランド力をもった優良株を探し続けていきます。

 

※上記はご参考情報であり、特定の有価証券等を推奨しているものではありません。

 

参考文献

 

『株で富を築くバフェットの法則[最新版]―不透明なマーケットで40年以上勝ち続ける投資法』ロバート・G・ハグストローム著、小野一郎訳(ダイヤモンド社 2014年)

 

「ブランド研究における近年の展開―価値と関係性の問題を中心に―」青木幸弘著(商学論究 2011年3月)

 

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(2018年7月6日)

 

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スパークス・グループ株式会社 代表取締役社長

北海道札幌市出身。上智大学経済学部卒。米ボストンのバブソンカレッジでMBA取得。

1981年、野村総合研究所に入社後、ニューヨークのノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルに出向し、米国の機関投資家向けの日本株のセールスに従事。1985年にニューヨークで独立し、ジョージ・ソロス氏から1億ドル(当時の為替レートで約200億円)の運用を任される。

1989年、日本でスパークス投資顧問(現スパークス・グループ)を設立。2001年に上場。2005年、ハーバード大学ビジネススクールでAMP取得。現在の投資対象は日本の上場株だけでなく、アジアの上場株、再生可能エネルギー発電施設や不動産といった実物資産、そして米国、イスラエル、日本などの未上場企業にまで広がってきたが、投資対象の価格と価値の差に着目し主体的に働きかける投資哲学は一貫している。

プライベートでは作詞、作曲、ギター演奏に加え、絵画も描く。

近著に『暴落を買え!-年収300万円から始める資本家入門-』(ビジネス社 2017/5/24)。

著者紹介

連載阿部修平の投資哲学~「バフェット・クラブの金言」より

このコンテンツは、投資勧誘を目的としたものではありません。また、このコンテンツに登場する企業名はあくまでも参考であり、特定の有価証券等の取引を勧誘しているものでありません。投資に関する決定はご自身の判断において行われるようお願いいたします。当コラムに基づいて取られた投資行動の結果については、スパークス・グループ株式会社、スパークス・アセットマネジメント株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。このコンテンツには、コンテンツ編集部制作担当者の見解が含まれている場合があり、スパークス・グループ株式会社およびスパークス・アセットマネジメント株式会社の見解と必ずしも一致しないことがあります。

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