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顧客に「効用・満足感」を与えることが、企業の使命
現在、日本には約3600社の上場企業があります。ビジネスモデルはまちまち、経営者のタイプもさまざま、そして成長産業にいる会社もあれば、縮小し衰退産業に見える分野に所属する会社もあります。こんな時、どういったところから企業を見ていけば良いのでしょうか。
私は、まず「キャッシュフローの泉を探せ」と話します。投資家としてキャッシュフローの源泉を見つけ出した時に、キャッシュフローの現在価値と源泉の取得価格の間に十分な裁定価格差があるかを常に考えています。キャッシュフローの源泉を見つけ出す考え方は、企業を見る時も同じです。その企業がどこに「新しい価値を生む泉」を見つけて、具体的にどうやって、どういう組織で利益を生み出しているのかを見極めることが大事だということです。
企業における「キャッシュフローの泉」は、まず売上から見ていきます。売上というのは、数量に単価を掛けたものです。できるだけ多くの人がその商品・サービスに魅力を感じてくれて、たくさんの人が使ってくれないといけません。
買ってくれる人に効用や満足感を与えていかなければいけないということが、企業の使命なのです。そこは、どんなにAIが進み、技術が進歩しても、最後は人間と人間の感性、「繋がり」がテーマとなります。本当に求められているものを提供できているのか、使う人が本当に満足して、ありがたいな、嬉しいなと思っていただけるかを現場で調べることが、その企業が生み出す利益が永続的にキャッシュフローを生み出す源泉かどうかという問いに答える為の最初のステップです。
調べていくと、表面的に見えている事業モデルと、実際に安定的な収益を稼いでいるビジネスモデルというのは必ずしも同じではありません。例えば、プリンターやコピー機を販売するメーカーの場合は、どこで利益を得ているのでしょうか。
実は、プリンターやコピー機を使うことで、継続的に必要になる消耗品であるインクによって稼いでいるのです。また、百貨店などにおける商品の販売収入よりも、カードのリボ払いによる金利収入で稼いでいるところもあれば、取引手数料の安さを謳うインターネット証券が、信用取引の金利収入を収益の核としている場合もあります。
「新しい価値」を企業家と一緒に、同じ目線で考える
多くの企業家は、これこそが今、消費者が求めているにもかかわらず満たされていない潜在的ニーズだという仮説を立てて、または新しい効用を生み出すビジネスモデルを組み立てて、試行錯誤を繰り返し、製品やサービスを作り出しています。
そういったプロセスに私たち投資家も企業家マインドを持って入り込んでいく。企業家の気持ちを共有して入り込んでいくということがとても重要です。スパークスの投資がユニークであり続けてきた一つの理由は、企業のオーナーのような気持ちで投資することを徹底してきたからです。企業のオーナーとは、まさにそういった気持ちで経営を見ているのです。
私は今、投資家としてより強く持たなければいけないプリンシプル(原則)は、「Entrepreneurial Investment (企業家の視点を持った投資)」であると思っています。私たち投資家が企業家としてのマインド、視点を投資対象となる企業の経営者と共有し、それぞれの立ち位置で、その企業を育てていくという姿勢が望まれると思います。
新しい価値を生み出すことを企業家/起業家と一緒に同じ目線で考えることができる投資家にならなければ、これから出てくるであろう新しい効用に対する気づきを起業家と共有することはできません。
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例えば、最近、上場し、株式市場で評価を得ているメルカリのような会社は、インターネット時代のテクノロジーが可能にした新しい道具をテコに新しい効用を市場に提供しているわけです。そういった企業の価値に気づくためには、今の社会を現場でしっかり観察することが出発点であると思います。そこに新しい「キャッシュフローの泉」、つまり企業が生み出す価値の源泉を起業家マインドで見つけ出す努力をすることが大切なのです。
そして、その新しい価値を生む企業をとりまくステークホルダー、お客様、社員、取引先、地域社会、そして株主を皆、幸せにしようと努力する経営者を、投資家として冷静かつ客観的に評価します。スパークスはこれからも、新しい価値を提供する会社を発掘する投資を実践していきたいと思います。
(2018年9月21日)
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