日本の上場企業経営者に欠ける「株主と向き合う」という観点

本連載は、スパークス・グループ株式会社のウェブサイトに掲載されている「COLUMN / バフェット・クラブの金言」を転載したものです。

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220兆円以上の現預金を貯め込む、日本の上場企業

資本市場には、さまざまな「キャッシュフローの泉」が存在する話を、これまで繰り返しお伝えしてきました。私達は、ファンド運営のプロフェッショナルとして、新しい「キャッシュフローの泉」を見つけたいと考えています。

 

そんな中、個人金融資産の中で、現預金が増え続けている現状には、大変もどかしさを感じています。

 

個人金融資産約1,820兆円のうち、現預金の額は実に1,000兆円にのぼります。この額は、過去最高であり、日本の国家予算の約10年分にあたります。日本の人口が約1億人だとすると、1人1,000万円ずつ持っている計算になります。

 

預貯金の保有比率を年齢別にみると、1,000兆円の60%以上を60歳以上が、25%を70歳以上の非生産年齢に属する層が保有していることになります。この膨大な金額のお金が、ほとんどゼロ金利の預貯金、つまり、お金が働いていない状態で眠ってしまっているのです。

 

また、お金を貯め込んでいるのは、個人だけではありません。日本企業の現預金の総額は約220兆円と、こちらも過去最大規模です。個人金融資産が現預金に偏在していること以上に、株式を市場に公開している上場企業が一定額以上の現預金を貯め込んでいるのは憂慮すべきことだと思います。

「経営者の最も重要な意思決定は、資本の配分である」

現預金を貯め込んでいる経営者は、「有事の際、必要になるお金だ」「有事に際し守るべきは社員と取引先で、株主ではない」と、それぞれの経験、会社の歴史から学んだ理由があるようです。「会社は株主のモノである」、従って、「株主の利益が他に優先する」といった偏った市場主義には賛同しかねます。ただ日本企業に多く見られるケースは経営者を中心とした経営者の都合に偏った経営で、株主が求める合理的、常識的な提案が全く無視されることが、まだまだよくあるように思います。株主が求める当たり前の提案にしっかりと向き合えない上場企業の経営者が社会的責任を全うしているとは言えません。

 

ロバート・ハグストローム著『株で富を築くバフェットの原則(最新版)』では、「経営者の最も重要な意思決定は、資本の配分である」という言葉が紹介されています。収入、資本、利益の分配バランスをどう考えるかが、経営者が最優先とすべき仕事だというのです。

 

上場を選択した企業は、上場企業としての社会的信用を確立し株式市場で資金調達の道を拓くことが、自らの企業にとってメリットがあると考えている訳です。社会的存在としての道を自ら選択した上場企業は、内輪のステークホルダー(利害関係者)に偏った視点ではなく、株主を含む外部のステークホルダーにもしっかりと配慮して資本や現預金の効率性を常に考えることが大切です。

 

企業をとりまくステークホルダーは、売上の対象となる顧客、費用の対象となる取引先や社員、税金の対象となる国や自治体など、それぞれの目的を持った多様なさまざまな個人、組織の集まりです。なかでも、利益分配のプロセスにおいて一番劣後し、最大のリスクをとっている株主が、利益配分を監視していくことが、スチュワードシップ(受託責任)やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の考え方の根本にあります。

企業家的視点で投資、必要ない資金は株主に還元を

創業から約30年、スパークスではこの原理原則に沿って株式投資を考え、実践してきました。少し大げさに言えば、最初のころは天動説が「常識」の社会で地動説を唱えたコペルニクスのように、日本社会から奇異な考え方だったように思います。

 

しかし最近は、日本の「稼ぐ力」を向上させることに対し、行政も理解し、スチュワードシップやコーポレート・ガバナンスを強化していこうという雰囲気が生まれていると感じます。

 

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企業経営者の中にも、ROEの意味を正しく理解して、その向上を目標とする正の循環が生まれ始めています。株主としっかり向き合って経営することが日本でも新しい常識になりつつあるのです。上場企業が社会の公器として、合理的な理由、戦略を持たずに資金を貯め込むのではなく、企業家的視点をしっかりもって投資し、必要のない資金は株主に還元していくようになれば、日本経済だけでなく世界経済を浮揚させられるだけの力を日本企業は持っていると確信しています。

 

日本の株式市場に散見されるステークホルダー間のゆがみを解消すれば、日本企業の実態価値を低く評価している株式投資家の見方もポジティブに変わるはずです。ステークホルダー間の資本、利益の分配と生産性のゆがみが解消する事をテーマに、スパークスも引き続き頑張ります。

 

株式投資とは、「実態価値と市場価値の裁定プロセスに主体的に参加すること」と繰り返し申し上げてきましたが、まさに、このゆがみの裁定プロセスに大きな投資チャンスがあると考え、主体的に参加していきたいと思っています。

 

参考文献

 

『株で富を築くバフェットの法則[最新版]』ロバート・G・ハグストローム著

小野一郎訳 ダイヤモンド社 2014年

 

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(2018年10月19日)

 

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スパークス・グループ株式会社 代表取締役社長

北海道札幌市出身。上智大学経済学部卒。米ボストンのバブソンカレッジでMBA取得。

1981年、野村総合研究所に入社後、ニューヨークのノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルに出向し、米国の機関投資家向けの日本株のセールスに従事。1985年にニューヨークで独立し、ジョージ・ソロス氏から1億ドル(当時の為替レートで約200億円)の運用を任される。

1989年、日本でスパークス投資顧問(現スパークス・グループ)を設立。2001年に上場。2005年、ハーバード大学ビジネススクールでAMP取得。現在の投資対象は日本の上場株だけでなく、アジアの上場株、再生可能エネルギー発電施設や不動産といった実物資産、そして米国、イスラエル、日本などの未上場企業にまで広がってきたが、投資対象の価格と価値の差に着目し主体的に働きかける投資哲学は一貫している。

プライベートでは作詞、作曲、ギター演奏に加え、絵画も描く。

近著に『暴落を買え!-年収300万円から始める資本家入門-』(ビジネス社 2017/5/24)。

著者紹介

連載阿部修平の投資哲学~「バフェット・クラブの金言」より

このコンテンツは、投資勧誘を目的としたものではありません。また、このコンテンツに登場する企業名はあくまでも参考であり、特定の有価証券等の取引を勧誘しているものでありません。投資に関する決定はご自身の判断において行われるようお願いいたします。当コラムに基づいて取られた投資行動の結果については、スパークス・グループ株式会社、スパークス・アセットマネジメント株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。このコンテンツには、コンテンツ編集部制作担当者の見解が含まれている場合があり、スパークス・グループ株式会社およびスパークス・アセットマネジメント株式会社の見解と必ずしも一致しないことがあります。

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