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「集中投資」で世界的な資産家になったバフェット
創業以来、私自身もアナリストとして運用チームのメンバーと一緒に会社訪問しながら投資ミーティングを行ってきました。そうしたミーティングを通じて、私が常に気にかけてきたことがあります。それは「投資先の数が増えてない?」という事です。ポートフォリオに組み込まれる投資先の増加数は、例えば、25社が27社に増えるといった程度のものです。それでも実際、数が増えていると、運用担当者は、なぜ投資先の数を増やすことが必要か説明してもらうようにしてきました。
株式投資における過度な分散は、百害あって一利無しです。あまたある投資関連本を読んでいると、「投資先の分散、時間の分散」と「分散」が呪文のように説かれています。これに抗うつもりは全くありませんが、同時に思うのです。「気休めの分散の罠に陥っていませんか?」と。
バフェットさんがなぜ、世界的な投資家、資産家になれたのでしょうか。徹底した分析を重ねた後に、コカ・コーラの企業価値を見極め、ある時期、運用資産の3分の1を、コカ・コーラに集中的に投じたからだと思います。私はバフェットさんの投資家としての決断力と胆力のようなものをコカ・コーラのケースで学びました。
バフェットさんとは投資のスタイルは異なりますが、ソロスさんが世界的な投資家、資産家になれたのも集中投資の実践によるものです。為替レートのゆがみに気づき、その「裁定(正常化)プロセスに主体的に参加する」ために、イギリスの中央銀行に、ほぼ全財産を投じて市場に戦いを挑んだ投資家としての決断と勇気によるものだと思います。もちろんその決断に際しては徹底した調査を積み上げて、全エネルギーを傾注して市場に戦いを挑み、集中投資を実践してきたのだと思います。
投資対象を、モノもしくはシステムととらえ、分散して投資する仕組みが、「モダン・ポートフォリオ・セオリー」です。20世紀後半に発展し、現在の機関投資家の基本的な考え方となっています。
ただ、このコラムを読んでくださっている方々にお伝えしたいのは、少し違った考え方、見方です。株式投資とは、まず第一に立派な経営者を見つけ出すことだという事。そしてその経営者が経営する成長し続ける血の通った組織としての企業を信頼し、投資する事だとする考え方です。
「ミクロはマクロの集積である」という信念のもとに、「良い企業に安く投資する」ことで、投資先企業も投資家も投資先の社員も地域社会も幸福になることを希求する姿勢が大切だと思います。投資家として、モノやシステムではなく、常に尊敬に足る経営者と企業を見極める努力から始める。これこそが株式投資の大原則なのではないでしょうか。
バフェットさんは、「良い企業というのは多くはない。だからこそ、良い企業が見つかったら、そこに集中的に投資をするべきだ」と言っています。私もこの考え方に共感します。皆さんが、起業することをイメージしてもらえば分かり易いかもしれません。自分が「これで起業しよう!」と、信じた事業であれば、資源を分散せず、そこに集中的に投資すると思うのです。「オーナーの気持ちになって投資する」や「企業家精神を持って投資する」と考え、実践してきたスパークスの投資から私が学んだのは、投資先企業は絞り込んでいくべきと思っています。
良い企業に多くの資本を託し、共に成長を楽しむ
こんなことを話していると、創業後1990年代、スパークスが、国内機関投資家ではなく、まず中東や欧州をはじめとする海外機関投資家から、投資してもらったことを思い出します。彼らが、スパークスのファンドに投資してくれたのは、理論に沿った分散投資ができているかどうかという理由ではなく、スパークスが一社一社実際に会社の経営者と会って魅力的な経営者、会社を見つけることができる運用会社だと期待してくれたからだと思います。
海外機関投資家の資金を受託していく中で、投資家の中には、ベンチマーク(比較対象となる指数)と比べてどのくらいパフォーマンスが良いのかを聞いてくるところも出てきました。ここで初めて私たちは、企業という「ミクロ」からアプローチするのでなく市場全体に投資する以上のリターン(インデックス以上のリターン)を上げることの必要性と運用者としての責任と使命に改めて気づかされました。
創業以来、インデックスとの対比で運用成果を考えていなかったのですが、結果的にインデックスを大きく上回るパフォーマンスを出せたことから、運用会社としての創業時の土台を築くことができたと思います。しかし、今、パッシブ(インデックス)投資の手数料は限りなく低くなっていて、機関投資家や個人投資家からも人気を集めています。
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バフェットさんも、「個人投資家は運用パフォーマンスが長期間ふるわないアクティブ投資信託よりもインデックスに連動するETF(上場投資信託)を買う」ことをすすめています。これは、株式投資の本来の役割である資本を信頼できる投資先企業に託すという観点から考えると、ちょっと残念な気もします。
「良い企業にできるだけ多くの資本を託し、投資先企業と共に成長を楽しむ」という資本主義の大原則を、パッシブ化が進む資産運用業界で、常に言い続けようと私は考えています。
(2018年10月12日)
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