今回は、収益を最大限に引き出す物件の運用方法を見ていきます。※近年の不動産投資ブームにより、チャレンジする人は右肩上がりに増加しています。しかし、どんな投資であっても「リスク」があることを忘れてはなりません。本連載では、物件選びの注意点から「ファイナンシャルプラン」の考え方、リフォーム、実際の投資事例まで、リスクを抑えた不動産投資の基本について、一連の流れを分かりやすく紹介します。

火災保険は、万一のときに手厚く

今回は、投資用不動産の購入に伴う諸費用(保険)について説明します。

 

銀行融資内諾の条件に、火災保険加入を義務付ける銀行がほとんどですが、保険会社と金額の指定が入ることは稀です。

 

火災保険は、万が一の事態の危険を担保するものですので、当然ながら事故が起きても保険対象事故とみなさない会社と取引すべきではありません。実際、掛け金の安い保険会社などでは、完全なる漏水事故であっても認定に半年近く時間がかかったり、支払いが半分しかなされなかったりして、度重なる多額の出費を強いられるケースも数多く見てきました。

 

保険は、適用されなければ意味がありません。補償内容もさることながら、事故時に確実に保険適用できるようにしてくれる代理店から保険加入すべきです。

 

 

火災保険、地震保険については震災、事故の発生頻度を鑑み、2015年10月より保険料がアップしています。また、35年加入できる上、割安だった火災保険は10年が最長となりました。また、水害の多く、地震も発生した九州、地震の多い岩手や宮城などは火災保険料が倍額近くになっています。

 

そのため当社では、物件をご購入いただいた投資家の方に、保険の費用を下げ、なおかつ保険適用ができるように、火災保険の補償額(大・中・小と選択することが可能)を減らし、その代わりに家財保険、施設賠償責任保険を付けて、ほとんどすべての事故をカバーできるようなプランをお薦めしています。

 

また地震保険に関しても、保険料は高額ですが、1年更新でも良いので必ず加入するべきです。

 

家財保険は、火災や水災で入居者の家財に損害が発生した場合、施設賠償責任保険は事故による営業補償、外壁からタイルが落下したときに隣の家の車に当たってしまった場合、また階下漏水により事務所のPCが水を被ってしまい故障してしまった場合の修理費など大家業に関連する危険負担になり、いずれも賃貸業のリスクを保全してくれる重要なものです。

 

その他、登記を担当する司法書士費用、不動産会社の報酬である仲介手数料などが諸経費に当てはまります。

物件を価値を保つ、管理会社の選び方

長期間にわたって物件を保有していくために、入居率を継続して高く保ち、物件の資産性下落を防ぐべく確実に管理していきましょう。

 

時間的余裕があれば、自分自身で所有物件全体を管理するのも良いと思います。間接経費がかからず入居率を高く維持できるのは、不動産投資の理想例といえます。しかし会社経営やサラリーマンをしている方が副業として不動産投資する場合は、自主管理はほぼ「不可能」です。特に、緊急業務は夜間や休日に限って発生するものですし、その場合、即時対応することが難しいでしょう。

 

不動産会社が代行してくれる管理業務は、大きく分けて「入居者管理」と「建物管理」の2種類がありますが、具体的に項目の詳細を挙げてみましょう。

 

【不動産会社が代行してくれる管理業務】

(1)集金業務(家賃、共益費、駐車場、更新料)

(2)入居者対応業務(専有部・共用部不具合、近隣駐車場・隣家クレーム対応)

(3)退去立ち会い、修繕提案業務(敷金精算、専有部の入居者過失部確認、原状回復工事提案)

(4)更新契約管理、手配(更新通知、保険手配、期限管理)

(5)募集条件懸案、オーナー提案業務

(6)リーシング業務(空室・入居条件の周知営業)

(7)日常清掃、巡回業務(住環境整備業務)

(8)消防設備点検、受水槽清掃、EV点検、浄化槽清掃、汲み取り(コンプライアンス)

(9)検針、請求業務 ※水道が私設メーターの場合

 

以上のように、多岐にわたって相当な労力がかかるものばかりです。そのため、ほとんどの方が賃貸管理を外注し、管理会社に一任します。ただ、不動産管理会社への業務委託は当然のことながら手数料が生じ、その費用は平均して家賃収入の3~10%ほどとなります。この費用は、オーナーの税引き後収益の相当部分を占めます。そのため、管理会社の選定におけるポイントは、必要経費と無駄な部分を分け、無駄を削減し、収益が最大化するような提案をしてくれる会社を選ぶことです。そしてオーナーとしては、信頼のおける管理会社を選び出し、その会社からの提案、報告に対して適切な判断と決断をしなければなりません。

 

不動産賃貸管理業務は非常に煩雑であり、管理会社の担当者が必ずしも十全な提案をしてくれるとは限りません。大切な資産をいかに守るかについてオーナーの立場に立ってプランニングし、管理してくれるよう、担当者とコミュニケーションをとりましょう。

減価償却費を引き出し譲渡課税が下がったところで売却

法人で不動産を所有している場合、売却課税率は保有期間によって異なるものではありません。対して個人の売買である場合は、短期譲渡所得益、長期譲渡所得益の2種類があります。これは前述しましたが、1月1日から逆算して5年以内の場合は売却課税率が長期譲渡所得益の39.63%、それから5年超となった場合は20%と約半分に下がります。

 

そのため、個人での出口戦略は物件を5年以上保有する前提で検討するのが効率的ですし、私自身、そのようにして税率を下げるよう薦めています。もっとも、最近は利回りが低下しており、「資産性は高くとも数年間保有後売却する出口戦略」と「残債が減るまで保有しつづける出口戦略」がありますが、当社としては保有を推奨しているケースが多いです。

 

 

他方、売却益は法人の場合、他の事業所得と損益通算することが可能ですが、個人となるとそれは不可能です。そのため、不動産を売る場合、売却時の仲介手数料や修繕費、管理会社手数料など経費参入は限られます。

 

つまり、財布から出費がない減価償却費を活用して本業の税率を下げることは、累進課税制度の関係上、年収が高ければ高いほど節税効果を見込めます。

 

減価償却には、建物の経年劣化が関係しており、その価格は「建物の価格×耐用年数に応じた償却率」で算出します。耐用年数は建物ごとに異なりますが、法律で定められている法定耐用年数は、木造で22年、RC造で47年です。しかもこの法定耐用年数を超過した物件であれば、法定耐用年数の20%の年数で減価償却することになっています。例えば、木造であれば、22年×0.2=4年以上で償却可能。この年数が短ければ短いほど単年で計上できる減価償却費は大きくなります。そのため、耐用年数超過物件を入手すると、より多くの金額を短期間で経費計上することができ、大きな節税効果を生み出すことが可能です。

 

物件を購入して減価償却費を極限まで引き出し、所有から丸5年を迎えて譲渡課税の税率が下がったところで売却する。このサイクルで運用を行えば、不動産投資での収益を最大限に引き出すことが可能になるのです。

 

 

菅谷 太一

ハウスリンクマネジメント株式会社 代表取締役 宅地建物取引士/液化石油ガス設備士/丙種ガス主任技術者

 

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