今回は、築古物件を購入した際に追加リフォームすべき場所を取上げます。※近年の不動産投資ブームにより、チャレンジする人は右肩上がりに増加しています。しかし、どんな投資であっても「リスク」があることを忘れてはなりません。本連載では、物件選びの注意点から「ファイナンシャルプラン」の考え方、リフォーム、実際の投資事例まで、リスクを抑えた不動産投資の基本について、一連の流れを分かりやすく紹介します。

築古物件購入の際は「リフォームコスト」を念頭に置く

築古物件を取得した後、早々に賃貸経営を開始するのが理想ですが、資産性はあっても、築古のためリフォームをしなければ賃貸経営を開始できないケースがあります。オーナーは、賃貸経営成功という目標のためにリフォームコストをかけるわけですから、この修繕をどの程度の費用で抑えるかという現実的な方針が必要です。リフォームコストと家賃収入、オーナーと工事請負者はいずれも利益相反の関係にあり、どのような工事をどの程度の費用で実施してほしいという具体的な戦略がなければ、どんなに家賃がとれてもリフォームコストに消えてしまい、投資として成立しません。

 

今回からは投資家が、自宅を修繕するように依頼するのではなく、賃貸経営上のコストを重視し、何が必要で何が無駄かを判断できるよう、私が今まで経験してきたものをお伝えしていきたいと思います。「リフォームコストは賃貸経営の成否を左右するもの」と認識してください。

 

まず、賃貸住宅にはファミリータイプ、ワンルームタイプとありますが、いずれも30歳前後のディンクスに入居してもらうことを目標とした部屋づくりをしましょう。

 

年齢層が若い方がターゲットとなると、コストを抑えつつも「新しい」「清潔」という印象を与えなければなりません。

 

リフォーム工事には2種類あります。まず、入居してもらうために絶対に実施しなければならないリフォーム工事を「原状回復工事」といいます。これは表面を美しく見せるリフォームです。また、家賃をさらに高くとるために施すのが「グレードアップ工事」です。「いくら家賃を上げられるか」「その家賃がグレードアップ工事分の投資に見合っているのか」という視点でコストを計算しなければなりません。

 

 

必要となる原状回復工事と追加リフォーム

原状回復工事の主なものとしては、

 

★クロス張替

★床張替(一部張替)

★畳表替

★建具調整

★設備入替

★ハウスクリーニング

 

があります。

 

ただし、この中で、以下にみるように追加リフォームしなければ入居の大きな弊害となるものがあります。

 

●バランス釜

この設備は今ではほとんど見かけなくなったもので、20代の方のほとんどは使用したことがないのではないでしょうか。水栓を開ければ湯が出てくる給湯タイプではなく、浴槽に水をためて釜で沸かすタイプです。現代社会において、シャワーが中心となっているため全く人気がありません。バランス釜の物件を取得する場合、給湯式に変更するコストがかかると考えておいてください。給湯式への変更は約20万円から30万円かかります。

 

●和室

入居検討者の多くは、契約にあたり、「退去時にいくらかかるのか」を懸念しています。畳の部屋は、たった数年住んだだけでも汚れや日焼けの跡が目立つため、表替えしなければ次の入居に差し支えます。「経年劣化」と「入居者過失」のいずれにあたるのか、退去の立ち会い時に揉めることも多く、お薦めしません。和室から洋室に変更工事をする場合は、6畳間(10㎡)で15万円ほどかかりますので、物件購入時にそのコストを念頭に入れておかなければなりません。ワンルームでは当然のこと、ファミリータイプでも和室2室であればそのうちの1室は洋室に変更するべきです。

 

●都内プロパンガス物件

都市ガスとプロパンガスでは、月々の支出がワンルームでも2000円~5000円は違ってきます。23区内では賃貸の件数が多く、選択の余地があるため、プロパンガスというだけで選択肢から外され入居が決まりづらい傾向にあります。プロパンガス物件が多い地方都市では問題ありませんが、物件の大半が都市ガスやオール電化である都内では、都市ガスに変換することも視野に入れておきましょう。その場合の費用は、1室あたり30万円前後です。

 

プロパンガス業界は都市ガスとのシェア争いが活発で、新規契約をとるために配管や設備などを無償提供している業者も多く、不動産賃貸経営の良いパートナーになってくれることが多いです。とはいえ入居者から苦情が出ないよう、業界の平均価格を著しく上回らないようにしている業者を選択しましょう。一般財団法人日本エネルギー経済研究所が経営している石油情報センターでは、プロパンガスの全国平均価格を閲覧することができますので、確認しておきましょう。

 

●追い焚き機能付き給湯器

ファミリータイプの場合、特にお風呂に入る時間が家族でバラバラの場合に欠かせないアイテムです。また、捨て水がなくなるので水道代が浮き、節約できるというメリットがあります。家賃は、ファミリータイプで3000円ほど(10年で36万円)アップが見込め、プロパンガス物件の場合はガス業者が無償提供してくれることもあります。

 

●水回りなどの少額修繕工事

プロパンガスの納入をしているオーナーはプロパンガス会社にとって優良な顧客先となるため、水回りの不良や、給湯設備の入れ替えを低コストで対応してくれるケースもあります。リフォーム単体で収益を上げなければならないリフォーム会社と違い、ガス料金で会社経営が成り立っているガス会社は、ガスを継続利用してもらうため、顧客サービスの一環として修繕を安価で対応してくれますので確認してみましょう。

 

 

菅谷 太一

ハウスリンクマネジメント株式会社 代表取締役 宅地建物取引士/液化石油ガス設備士/丙種ガス主任技術者

 

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菅谷 太一

幻冬舎メディアコンサルティング

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