銀行の融資審査は徐々に厳しく!?
前回まではさまざまな収益不動産の失敗例とその原因等について解説しました。どんな物件を保有するにも、多くの利益を上げるには、良い条件で安く購入し、最後に高く売るのが理想の流れです。
少し前までは、不動産投資業界は最隆盛期といえる時代を迎えていました。購入希望者が殺到し、物件の供給が足りない状況となっています。そのため、低利回りの新築物件でさえ売れ行き好調なのです。
こうした流れの中で取引価格は高騰しているため、物件を高値で売ることは比較的簡単ですが、逆に良いものを安く購入することは徐々に難しくなってきています。
それでも、他人資本を使う不動産は、キャッシュフローが出るような好条件の融資を得ることができれば、利回りが多少低くても、土地値物件のように資産性が高いものを取得できる場合は投資優位性があります。
現在はまだ、良質の収益不動産は少ないながらも、取得しやすい経済環境にあるといえます。それは、属性がさほど高くない方であっても、金利、期間ともに優遇された融資が組めるからです。
アベノミクスにより景気は上向きの方向にありますが、それまでは、バブル崩壊から続くデフレにより中小企業の業績は悪化の一途を辿っていました。当然ながら銀行は業績の良い、返済の目途が立つ企業には積極的に貸出をしますが、業績が悪い企業には融資をしません。銀行にとっては本業で高い所得があり、金融資産(預貯金、有価証券など)を多く持っている返済能力が高い投資家の、土地、建物という固定の担保がある不動産投資への融資は、滞納の心配がない優良顧客なのです。
ここ数十年、不動産投資に対する融資姿勢は前向きだったと評価できるのではないでしょうか。しかし、地方の収益物件を購入した一部の投資家の収益が徐々に悪化し、また債務不履行者による融資の焦げ付きも増加傾向にあり、銀行は融資審査基準を厳しくすることを検討しているように見受けられます。
「繰上返済によるキャッシュフロー改善」「借換」
では、融資を引く上で知っておくべき融資条件の特徴を解説していきます。
融資選択肢の検証(金利、期間、元金均等方式、元利均等方式、固定金利、変動金利、繰上返済、借換)を行いましょう。
銀行がお金を貸してくれることを前提として、返済方法の選択肢について考えてみたいと思います。連載『不動産投資を成功に導く「土地値物件」の活用術』では、金利と期間について具体的に計算していますが、こちらは元利均等方式で、なおかつ金利が借入期間中変わらないという前提で解説してあります。
また、返済方式には「元金均等方式」「元利均等方式」の二つがあります。
元利均等方式は、借入当初は利息が多いものの、毎月の支払い額が一定であるため返済の予測が立てやすいものです。返済だけでなく手残り額の予測もまた立てやすいため、お薦めです。元金均等方式は、返済する元金は総額に対して金利がかかるため、毎月の返済額が減少していくものです。こちらの方が元本返済のスピードは速くなります。
ここで金融機関の選択肢について再度おさらいします。
A 金利1.85% 期間15年のN 9割融資
B 金利3.3% 期間25年のS フルローン
C 金利3.9% 期間30年のM フルローン
D 金利0.6% 期間20年のMI 8割融資
以上の選択肢がある場合、自己資金があり、自由に銀行を選べる人は、表面上のキャッシュフローに惑わされて3%以上の金利を支払うより、元本返済スピードが速く金利が安いMIを選択することが望ましいでしょう。ただし、低金利を選択できるのは、返済できる信用度がより高い、年収が高く、金融資産を多く持つ人に限られています。そうでない人は金利が多少高くても、返済していき、返済比率を下げることができるまで期間を延ばす融資を組んで運用する投資方法に限られてきます。
それでは金利が高く、長期で融資を組んでおり、元本返済が進まない投資家はどのような対策をすれば良いのでしょうか。
そこでお薦めする対策は二つあります。
ひとつはある一定時期に繰上返済し、キャッシュフローを改善する方法です。アパートの投資において、債務不履行(デフォルト)してしまう要因は収入に対してローン返済の比率が高いことです。そのため、家賃収入を使わずに貯金しておき、3年後や5年後といったタイミングで繰上返済することにより、その収益物件はさらなるハイリターンを見込める、自分の老後を助けてくれる資産になるでしょう。
また、担保が少ない(もしくはない)不動産を保有しているという事実はあなたの属性を高めてくれます。今までは高金利の銀行からしか融資を引けなかったとしても、メガバンクなどからも融資が引けるようになる可能性があるのです。
お薦めするもうひとつは借換です。ただし借換をすると二度とその銀行から融資を得ることはできなくなるため、今後も取引したい金融機関であれば金利交渉にとどめ、積極的な借換は控えるべきでしょう。借換の場合、初期に融資する銀行とは異なり、期間は同条件のまま金利のみが下がるので、キャッシュフロー増加に役立ちます。ただし近年、アパートローンを扱う金融機関は、5年以内の借換を防ぐため、繰上返済違約金として残高の2%を請求することがあります。また、固定金利を選択した場合にも固定金利返済違約金が発生しますので注意が必要です。借換に伴う経費を計算し、今後の銀行との関係を考慮して検討しましょう。
次に固定金利、変動金利の選択となります。
現在はマイナス金利政策により住宅ローンが過去最低の金利となっており、固定金利より変動金利の方が金利が1%弱安いと説明する銀行が多いと思います。ただし、急に資金が必要となるなどして売却する場合は、固定金利期間中であれば違約金がかかります。その違約金は地方銀行では5%、7%のところもあり、売却益がその経費で消えてしまって売却できなかった、という方もいます。長期保有が確定している場合以外は、変動金利を選択することをお薦めします。