「ミュージション」は、音楽に関係のない設備にかかるコストを削減し、その代わり、好きなだけ音楽を楽しむための部分について、一切減額しない設計コンセプトを徹底しています。今回は、5年後、10年後にも入居者を魅了するマンションの経営について見ていきます。

音楽を楽しめる部分に集中投資して物件価値を上げる

5~10%の建築費増加は、「尖るための必要コスト」です。この部分は、絶対に渋ってはいけません。とはいえ、ミュージションはあくまでも投資用の賃貸マンションですから、いくらいいものを作っても、投資的な魅力がなければ意味がなくなってしまいます。

 

そこで、ミュージションは音楽に関係のない設備についてはコストをギリギリまで下げ、その代わりに好きなだけ音楽を楽しめるという部分について、一切減額しないという設計コンセプトを徹底します。たとえば、原則的に温水洗浄便座やTVインターホン、浴室乾燥機といった設備は、ミュージションにはつけません。それは、小さな便利さのために大切なコストを使うより、その分を音楽に集中させたほうが、物件の価値が上がるからです。

 

何が必要で、何が不要かは、ターゲットとなる入居者の心に焦点をあてれば見えてきます。あれもこれもとたくさんの設備をつけても、それが他にもある見慣れたものなら、入居者は価値を感じません。一方で、住む人の心を熱くする投資は、鋭いフックとなって入居者の心に突き刺さり、賃料というリターンとして返ってきます。

 

この「尖るためのコスト」が必要なのは新築時だけではありません。価値あるミュージションであり続けるために、ミュージションでは、基本的に礼金・敷金をいただいています。

 

賢いオーナーは、礼金・敷金をオーナーの利益とするのではなく、マンションとしての価値を維持するための管理や修繕にあてています。時代は初期費用にかかる諸経費や更新料をなくす方向に向かっていますが、それがなくなれば、そのオーナーたちは必要な修繕費を確保できなくなり、住宅のレベルは確実に劣化するでしょう。

 

改めていうまでもありませんが、安易にその流れに乗ることは危険です。空室を埋めるために礼金・敷金や、更新料をなくしたりすれば、修繕費を確保できずに建物は荒れ、入居者がつかないという悪いスパイラルにはまっていってしまうからです。

ミュージション専門のスタッフを置く理由とは?

ミュージションでは、今後も価値を維持するために必要なコストとして、礼金、敷金、更新料などの設定をなくさない方針です。これは決して会社やオーナーの都合ではありません。誤解していただきたくないのですが、礼金や敷金がないと困るほど、ミュージションの維持管理費用は高くありません。ミュージションは一般的なマンションと躯体や構造も違いますし、エレベーターもグランドピアノを入れられる大きなサイズです。しかし、維持費や修繕費は他のマンションとあまり変わらないのです。

 

違うのは、普通のマンションならいらない「管理のノウハウ」が必要となることです。ミュージションでは、お預かりした敷金は建物の維持のために使います。礼金や更新料については、入居者パーティなど、入居者間のコミュニティ作りなどの費用にあてられます。これは、ミュージションのように、相場よりも高い賃料を得るためには、「納得」して賃料を払っていただける満足感を入居者に持ち続けていただく必要があるからです。

 

そのために、ミュージションではミュージション専門のスタッフを置いています。この担当者は客づけも担当しており、お客様が入居したあとも彼らと連絡を取りあえる関係にあります。音楽という共通点でつながっているとはいえ、使用する楽器も生活時間も違う人たちが集まり気持ちよく暮らしていくためには、このスタッフによる入居者たちのマネジメントが不可欠です。入居のしおりを全員に配布し、ルールを守らない人がいれば遵守をお願いするというシンプルな作業の積み重ねが、ミュージションの住み心地を向上させていることは間違いないと思います。

 

このスタッフはコストです。しかし、ミュージションは住人たちが気兼ねなく楽器を楽しめることに価値があるのですから、それを保全していくためには必要なコストだと筆者は考えています。建物の外観などのハード面をきちんと管理することと同様、今後は住む人の質や、住み心地のよさといったソフト面の管理も重要になります。それに気づいた人だけが、マンションの5年後、10年後の価値を維持できるのです。

本連載は、2011年2月28日刊行の書籍『近隣物件よりも高い賃料で長く儲ける満室賃貸革命』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

満室賃貸革命

満室賃貸革命

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

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