前回は、芸術の知識がグローバル・コミュニケーションに役立つ理由を解説しました。今回は、芸術が日常生活にどのようなプラス効果をもたらすかを見ていきます。

妥協が減り、こだわりある暮らしを楽しめるように

ここまで主な芸術の効果を三つご紹介しましたが、芸術に触れることで得られるものはこれだけではありません。

 

美的センスが磨かれたり、想像力や創造力が向上したり、また、気持ちが穏やかになったりもします。そういったさまざまな効果のおかげでしょうか。生活全体にハリが生まれるような気がします。毎日を丁寧に暮らせるようになるのです。

 

私は最近、フラワー・アレンジメントを習い始めたのですが、その影響で以前より「色の組み合わせ方」を意識するようになりました。いろいろな色や形の花を生けるなかで、「この色とこの色って相性がいいんだ」「○色に△色を組み合わせると、シャープな印象になるな」などさまざまな発見があるからです。

 

すると、洋服をコーディネートするときやインテリアを選ぶときなど、日常生活のなかでも「色の組み合わせはこうしよう」「この服にこの靴を合わせてみよう」など、今までよりも色合わせを楽しめるようになりました。

 

また、花だけではなく、それを生ける花器の美しさを知ったことで、トータルで物事を見られるようになった気がします。結果、細部にも気を配りたいと考えるようになりました。

 

これは絵画が額装によって見栄えが変わるのと同じ。買ってきたお惣菜もパックから出してきれいな器に盛り付ければ、おいしさは倍増するものです。そういったちょっとしたところにも気を配ると、生活はぐんと心地よくなるのだなと改めて感じています。

 

一つひとつは本当にわずかな変化ですが、買い物をするにも食事をするにも、「これでいいや」とか、「ま、いっかぁ」などと妥協することが減りました。そして今まで以上に、自分なりのこだわりを持って生活を楽しめるようになったような気がします。

見過ごしてきた「楽しみ」「喜び」の発見

私の中学時代からの友人(男性)にも、芸術によって生活が変わったという人がいます。

 

彼が「引っ越しをしたのを機に、部屋に絵を飾ってみたい」と言うので、新しいお宅を見せてもらい、絵を選んであげたことがありました。すると、彼はその一枚の絵をいたく気に入ってくれて、家に帰るのが楽しくなったと言うのです。

 

そこからはインテリアにも凝るようになり、他の部屋にも絵を飾ったり、キッチンの一部をバーカウンターのようにコーディネートしたりしていました。一枚の絵画が、彼の美意識を高めたのだと思います。

 

彼は、世界に一枚しかない〝本物〟の絵画に触れたことで、ものを選ぶ目も厳しくなったようで、お父様の誕生日プレゼントも既成品では満足できず、あるガラス作家が作ったぐいのみを選んで贈ったそうです。

 

もちろん、その分、値段は少し高くなりましたが、作家の作品ということで「この器の形には『長生き』という意味が込められているそうだよ」「飲みやすいように工夫されているんだよ」など、作り手のメッセージや思いも一緒にプレゼントできます。

 

だからこそ、受け取った人は大事にしようと思いますし、その結果、思い出と一緒に長く受け継がれていくのです。そう考えると決して高い買い物ではないはずです。ものを大事にする気持ちも身に付くのではないでしょうか。

 

このように、自分の好きな芸術を単純に楽しむだけで、今まで使われていなかった脳細胞が刺激され、人の感性や感覚は磨かれるのだと思います。

 

それゆえに、それまで見過ごしてきた楽しみや喜びに気づくことができ、生活がより豊かになるのではないでしょうか。

教養としての「芸術」入門

教養としての「芸術」入門

山田 聖子

幻冬舎メディアコンサルティング

多数メディアで活躍中の「ギャラリスト」が解説! 初心者でも楽しみながら学べるはじめての「芸術」ガイド。 【目次】 第1章 日本人は「芸術」への関心が不足している 第2章 「芸術」は世界共通の“コミュニケーションツ…

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