今回は、普段芸術に接する機会のない方でも気軽に芸術を楽しめるイベントについて紹介します。 ※本連載では、芸術をたしなむことによるビジネス上のメリットのほか、芸術の魅力や味わい方まで、銀座で画廊を経営するギャラリスト(美術商)がわかりやすく解説します。

気軽に参加できる芸術祭が、全国各地で増加中

ここ最近増えているのが、芸術やアートをテーマにしたイベントです。普段あまり芸術と接する機会がない人でも楽しめる、さまざまなイベントが行われています。

 

最近、全国各地で行われるようになったのが、「芸術祭(アートフェスティバル)」です。

 

なかでも特に有名なのが、2010年から3年に一度開催されている「瀬戸内国際芸術祭」でしょう。本書(『教養としての「芸術」入門』)78ページにて紹介した直島を含む、岡山県、香川県の瀬戸内海の島々を舞台に行われる現代アートの祭典で、春・夏・秋に合わせて100日以上開催。会期中は島々に美術作品が展示されるほか、アーティストや劇団によるイベントや演劇、民俗芸能の催しなどが行われます。2016年には、34の国と地域から226組のアーティストが参加して206点の作品が展示され、37のイベントが催されたそうです。その年の総来場者数は、100万人を超えています。島を巡りながら、瀬戸内の海や自然とともに一度にさまざまな作品が観られるので、現代アート入門にはぴったりのイベントかもしれません。

 

このほか、「横浜トリエンナーレ」「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」など、全国で、毎年または数年に一度、さまざまな芸術祭が開催されています。気になる芸術祭はないか、探してみてもよいでしょう。

 

お祭りに参加する気持ちで気軽に芸術に触れられるので、今までよりも芸術が身近に感じられます。

ギャラリーが関係する大きなイベント、アートフェア

ギャラリーが関係する大きなイベントとしては、アートフェアがあります。

 

アートフェアとは、さまざまなギャラリーが一堂に会し、作品を展示販売する見本市のこと。名古屋や大阪、福岡など全国で開催されていますが、最も規模が大きいのはアートフェア東京で、毎年春に東京国際フォーラムで行われています。

 

2018年は、海外のギャラリー18軒を含む164軒のギャラリーが集まり、古美術や日本画、近代美術、現代アートなど、あらゆるジャンルの作品が展示販売されました。

 

見本市というと「美術業界の関係者やコレクターが作品を買い付けに行くところ」というイメージがあるかもしれませんが、もちろん、買わずに観るだけでも問題ありません。実際、毎年国内外から多くの一般のお客様が足を運んでくださっています。

 

本当に幅広い美術作品が展示されているので、気になるギャラリーのブースを覗いていけば、きっと自分が「すてき!」「好き!」と思える作品が一つはあるはずです。自分の好みを知れて、その後、どの展覧会に行こうか、選ぶヒントにもなるでしょう。

 

一通り観て回ると、そのときどんなアートが流行っているのか、トレンドも分かると思います。

 

このほか、アートフェア東京と同時期に行われている面白いイベントとしては、汐留のパークホテルで開催される「ART in PARK HOTEL TOKYO」があります。

 

ホテルの26・27階の客室をギャラリー代わりにして、出展したギャラリーが一押しの作品を展示・販売するイベントです。窓の外には浜離宮恩賜庭園や東京タワーが見え、部屋全体がアートな空間になっています。

 

また、部屋のなかに飾られた絵画や写真、彫刻などを鑑賞していると、自宅に飾った雰囲気がありありと想像できるのもよいところ。アートフェア東京と併せて楽しみたいイベントです。

 

「銀座ギャラリーズ」でも、もっと多くの人にギャラリーで美術鑑賞をしてもらいたいと、いくつかのイベントを行っています。

 

例えば、毎年5月に開催しているのが「画廊の夜会」。夜の銀座で画廊巡りを楽しんでもらおうという企画で、その日は通常の営業時間よりも遅い21時まで開廊し、共通の提灯を出して、画廊によってはワインなどを振る舞い、お客様のおもてなしをします。

 

また、1日2回、ギャラリー巡りツアーも実施。ガイドの引率で数軒の画廊を見て回れるので、「ギャラリーに行ってみたいけれど、ハードルが高い」という人に喜ばれています。ツアーに参加したのがきっかけでギャラリー巡りが好きになり、その後、私のギャラリーに何度も足を運んでくださっているご夫婦もいます。

 

そして毎年12月には、約10日間「クリスマス・アート・フェスタ」を開催しています。このイベントは、「もっとたくさんの人に画廊に来てもらいたい」という思いから、10年前に私が発起人となり、銀座ギャラリーズのイベントとして始まりました。

 

イルミネーションが輝く12月は、銀座の街が1年で最も華やぐ時期です。美しい銀座の街並みを楽しみながら画廊を巡り、素敵な思い出をつくってもらえるようにと、それぞれの画廊がその時期ならではの企画展を行っています。

 

私の画廊では、毎年「たいせつなもの展」を開催し、一つのテーマを設けて、クリスマスに大切な人に贈りたくなるような作品を展示しています。

 

このイベントは、2018年で10回目を迎え、多くの人に楽しんでもらえるイベントとして根付いてきています。今では地方からも楽しみにいらっしゃるお客様も増えました。

 

教養としての「芸術」入門

教養としての「芸術」入門

山田 聖子

幻冬舎メディアコンサルティング

多数メディアで活躍中の「ギャラリスト」が解説! 初心者でも楽しみながら学べるはじめての「芸術」ガイド。 【目次】 第1章 日本人は「芸術」への関心が不足している 第2章 「芸術」は世界共通の“コミュニケーションツ…

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