今回は、美術館以外の場所でもっと手軽に芸術を鑑賞する方法を紹介します。※本連載では、芸術をたしなむことによるビジネス上のメリットのほか、芸術の魅力や味わい方まで、銀座で画廊を経営するギャラリスト(美術商)がわかりやすく解説します。

「美術雑誌」があれば、手軽に芸術鑑賞を楽しめる!

「家で、手軽に芸術を楽しみたい」

 

そんな願いを叶えてくれるのが、芸術や美術の専門雑誌です。

 

専門雑誌には、流行している現代美術の作家に関する情報や、今後行われる展覧会が紹介されています。そこに掲載されている作品の写真を観たり、画家や彫刻家など作家の情報をチェックしたりするところから、芸術に触れてみるという方法もあります。

 

美術雑誌には、筆者のギャラリーで取り扱っている作家も紹介されていますし、新しい情報や知識を収集することもできるので、なるべく読むようにしています。

 

興味がある人は、本屋に並んでいる美術系の雑誌をペラペラとめくってみて、自分のアンテナにひっかかった雑誌を購入してみるとよいでしょう。

 

あるいは、オンラインの書店で、「芸術」「美術」「アート」といったワードで雑誌を検索することもできます。表紙や目次を確認してみると、展覧会や美術館の情報を中心に掲載している雑誌、絵画の技法を紹介している雑誌、幅広いアーティストやその作品について解説している雑誌など、雑誌ごとに特徴があることが分かります。そこから自分の気に入った雑誌を選んでみてください。

 

筆者がおすすめする美術専門誌を3誌、紹介しておきます。いずれも美術や芸術の月刊専門誌です。雑誌選びの参考にしてみてください。

 

『アートコレクターズ』(生活の友社)

 

その名の通り、美術コレクター向けの月刊誌で、「見て楽しむ、買って楽しむ」をキーワードに、現代美術から古美術まで、あらゆるジャンルの美術品が紹介されています。

 

そのとき注目されている作家や、これからブレイクすることが予想される作家などが紹介されていて、最新のアート業界のトレンドがよく分かります。オールカラーで、美術作品の写真が充実しているので、ただ眺めるだけでも楽しめます。

 

また、その作家を取り扱っているギャラリーの情報も載っているので、ギャラリーに行く前の情報収集にも役立ちます。

 

コレクター向けの雑誌のため、各作品のおおよその値段も書かれているので、美術作品を買いたいという人はもちろん参考になりますし、テレビの「お宝鑑定」のように、「美術品の価値がどのくらいなのか気になる」という人にも楽しめる雑誌だと思います。

 

『芸術新潮』(新潮社)

 

美術だけでなく、アニメや文学、神社仏閣、歌舞伎・能、アートイベントなど、芸術のさまざまなジャンルを取り上げる雑誌。一つのテーマを掘り下げて、アカデミックにまとめられているので、芸術について幅広い情報が得られ、読んで楽しめます。

 

芸術の世界ですでにその実力を認められた有名な芸術家や、美術の名作のことを、より深く知ることができます。

 

『月刊ギャラリー』(ギャラリーステーション)

 

全国の美術館やギャラリーの情報、展覧会スケジュールなどが掲載されている「美術展めぐりの完全ガイド」。ハンディサイズで、以前は多くのギャラリーで販売していました。今は、ネット書店などで購入できます。業界色が濃いのですが、アートに関する細かいネタを丹念に拾っているので、アート・コレクターのほか、これからギャラリー巡りをしたいというアート初心者の情報収集にもたいへん便利です。

ギャラリー(画廊)は、美術作品の鑑賞の場でもある

「ギャラリー(画廊)」に対して、皆さんはどのようなイメージを持っていますか?

 

「画家が展覧会を開くところ」「美術品が売られているところ」といった答えが多いのでしょうか。

 

どちらも正解ですが、もう一つ、別の側面もあります。

 

ギャラリーは、美術作品を鑑賞する場でもあるのです。

 

美術作品を鑑賞する場所といえば美術館と思うかもしれませんが、ギャラリーには美術館にはない魅力がたくさんあります。

 

その一つが、作品や作家との距離が近いことでしょう。ギャラリーは比較的こぢんまりした空間ですし、美術館のように「これ以上近づかないでください」という柵や枠は設けられていません。そのため、作品をごく近くで、じっくり鑑賞できます。

 

ギャラリーによっては美術館にあるような名画が展示されることもあり、最近も、銀座のある画廊でルノワール展が開催されていました。かの有名なルノワールの作品を至近距離で鑑賞できるのです。

 

立体表現の場合、作品によっては、手に取って観られる場合もあります。近くで観たり、触ったりするからこそ、その作品の迫力や魅力がダイレクトに感じられるのではないでしょうか。

 

また作品が展示されている期間、その作家がギャラリーを訪れることも多いので、作り手と直接触れ合えるチャンスもあります。作品のコンセプトやメッセージ、創作過程のエピソードなどを直接聞くことができ、より一層作品の美しさやすばらしさが感じられるようになるはずです。

 

作家がいない場合でも、アーティストや作品について詳しいスタッフが必ず近くにいるので、その話を聞くのも楽しいと思います。

 

その際、ただ一方的に話を聞くのではなく、「どんな材料が使われているのだろう?」「なぜ、こういう構図にしたのだろう?」といった疑問を、遠慮せず質問してみましょう。

 

「こんな初歩的なことを聞いたら恥ずかしいのでは」なんてことは、考えなくても大丈夫です。質問があるのは作品に興味を持ってくれているということですから、アーティストもギャラリーのスタッフも、喜んで説明してくれるはずです。

 

もちろん、距離が近いからこその注意点もあります。

 

展示されているのは、アーティストが長い時間情熱を傾け、ある意味命懸けで作った作品です。作品に近づくときは、カバンや手をぶつけて壊さないように気をつけたり、つばが飛ばないように口元をハンカチで押さえたりといった気遣いが必要でしょう。「作品を大切に意識する」という最低限のマナーを守っていただきたいと思います。これも教養──思いやりです。

 

少し緊張するかもしれませんが、ギャラリーという非日常的な空間のなかで、ほどよい緊張感を持って美術作品を観るのも、ほかでは味わえないギャラリーの醍醐味です。背筋を伸ばして感覚を研ぎ澄ませた状態で、それぞれの作品を堪能してください。

教養としての「芸術」入門

教養としての「芸術」入門

山田 聖子

幻冬舎メディアコンサルティング

多数メディアで活躍中の「ギャラリスト」が解説! 初心者でも楽しみながら学べるはじめての「芸術」ガイド。 【目次】 第1章 日本人は「芸術」への関心が不足している 第2章 「芸術」は世界共通の“コミュニケーションツ…

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