今後も右肩上がりの成長が予想されるネット販売市場
20世紀末から今日まで、ITは爆発的な規模で普及拡大し、日常生活に深く密着した存在になりました。そして、Amazon・楽天・ZOZOTOWNなどといった、ITを活用したネット販売市場を主戦場とする企業がすい星のように現れ、瞬く間に巨大企業へと成長していったことは記憶に新しいところです。
経済産業省によると、2017年の国内ネット販売市場における規模は333.7兆円と全商取引に占める割合は35.4%と大きく成長し、今後も右肩上がりの増加傾向が続くと予測されています。そして、そこでは書籍・日用品・洋服・食品・サービスなど数多くの分野の商材が取引されています。このような状況の現代では、ITの活用はマーケティングに不可欠な存在といえます。
[図表1]日本のBtoC-EC市場規模の推移
2005年に提唱された「AISASモデル」とは?
従来、消費者の購買行動モデルは「AIDMAモデル」(本連載の第8回参照)で説明されてきました。ただインターネット経由の購買行動は、従来的な市場とは異なる傾向があるため、2005年に株式会社電通は、二つの「S」を特徴とする新たな「AISASモデル」を提唱しました。
[図表2]AIDMAモデルとAISASモデル
今回は、このAISASモデル(アイサスモデル)でネット販売市場での購買モデルを分析し、ITを活用したマーケティングを考えてみましょう。
●Attention(注意、喚起、認知)
現代では、販売者からの情報提供に加え、口コミ・ネット広告・SNSなどを活用した商品の認知機会が多様化しています。ターゲットを絞り適切なメディアで情報展開を図ることが重要です。
例えば、30歳代以上が多く、BtoBでも相性が良いFacebook、若者・女性が多くビジュアルでアピールができる商材に向くInstagram、女性が多く身近なものに相性が良いLINEなど、SNSでもメディアごとに特徴がありますので、特徴に合わせた見せ方を工夫していくことが認知へとつながっていきます。
またネット販売市場は、初期投資が低く超競争市場になることから、商品・サービスの差別化で消費者の注目を獲得することも重要になります。
●Interest(興味、関心)
この段階では、二つのアプローチが必要です。一つ目はコンプトを端的にわかりやすく表現し、それに従ったデザインやブランドイメージ表現などを示すことです。例えば、コンセプトが「お洒落な洋服」の場合、サイトのデザインがお洒落でなければ、それだけで顧客は他のサイトに移ってしまいます。
二つ目は、ターゲット層に対し企業の想いやストーリーを語ることです。商品・サービスにどんな背景があり、どのような想いで原材料を選び、売っているのかを伝えます。そして、ターゲット層が検索しそうなキーワードを埋め込んだ興味を引く記事をサイトにいれていくことも必要です。
●Search(検索)
一つ目の「S」です。買いたい商品・サービスが決まれば、消費者はGoogleやYahoo!などで「検索」を始めます。ここが従来的な行動と異なる点です。従って、この段階では「SEO対策」(自身のサイトを検索上位に導く対策)が重要になります。検索結果は一度順位が上がると長期間にわたり効果があるといわれています。また、サイトのアクセス頻度や人気度を測るにはGoogle Analyticsなど無料の解析ツールをうまく活用すれば、多くの顧客がサイトを見るタイミングで最新情報を展開することもできます。
また、有料サービスでは、検索ワードに応じて表示される「リスティング広告」や、関連するブログなどに載せる「検索連動型広告」などもあります。いずれも予算を決めて実施できるので、取り組みやすいといえるでしょう。
●Action(行動)
この段階では、「消費者の買いたいという気持ちを邪魔しない」操作性が必要です。ちょっとしたわかりにくさで消費者に逃げられないよう、記載の順番や購入ボタンの色など細やかな気遣いで着実にクロージングに進めていきたいものです。
●Share(情報共有)
二つ目の「S」です。SNSが普及し気軽に情報伝達できる現代では、商品・サービス購入後に情報共有や口コミ・レビューをSNS上で積極的に行う消費者が爆発的に増加しています。そして、その内容次第で、他の顧客の関心やファンを得て口コミの連鎖で次なる集客につながることもあれば、逆に大きく評判を落とすこともあります。
情報共有の影響度は従来とは比較にならない時代です。なるべく良い口コミがされるよう対応に留意したり、悪い口コミであっても真摯に対応するなど、販売者には販売後の口コミを想定した活動が重要です。
ITを活用をすることで、商圏は物理的な制約を超えて日本全国や世界へと拡がります。また、迅速に対策を打てるため販売効率も向上します。しかも、無料や安価なツールも多く投資効率が高いのであれば、ITをマーケティングに活用しない手はありません。
IT導入補助金など、販売促進へITツールの導入費用を補助する制度もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。