前回は、ヒット商品を生み出すための「商品開発」と「販売戦略」について考察しました。今回は、顧客の心を動かして購買行動を促す「導線づくり」のポイントを見ていきます。

重要なのは、消費者心理に合わせた仕掛け

みなさんは、一日にいくつの商品・サービスの情報を目にしたか意識したことはありますか? テレビCM・新聞の広告欄・電車の吊り広告・WEB上のバナーなど、企業からの情報は生活のいたるところにあふれています。

 

このように、商品・サービスの特徴を顧客に伝え、購買行動を促す活動を「プロモーション」といいます。どんなに良い商品を開発しても、顧客に伝わらなければ売上にはつながりません。従って商品を購入・利用してもらうためには、顧客の心を動かして行動を促す「導線づくり」が重要です。

 

では、どのように進めればよいでしょうか。

 

企業・ブランドと顧客との接点を「タッチポイント」といいます。モノや情報があふれる昨今、顧客が1つの情報から購入や利用を決めることはありません。

 

例えば、車を買い替えたいと思った時、みなさんはどのような媒体から情報を得るでしょうか? インターネットで検索したり、専門雑誌を読んだり、テレビCMに触発されたりするかもしれません。友人の口コミに影響されることもあるでしょう。こうしてたくさんのタッチポイントに影響を受けながら、様々なメーカーや車種に興味・関心を持ち、比較検討しながら購入に至るのではないかと思います。

 

このように、プロモーションを検討する際は、自社と顧客のタッチポイントがどこにあるのかを理解し、自社商品の認知や共感を深めるきっかけを、単一の方法ではなく、様々な角度から提供していくことが大切です。

 

[図表1]タッチポイント

 

プロモーションは「Pro(前へ)+motion(動く)」という単語の組み合わせからもわかる通り、顧客の気持ちを購入・利用まで導く仕掛けづくりであるといえます。この仕掛けづくりに活用できるのが、消費者の購買行動モデル「AIDMA(アイドマ)の法則」です。

 

この法則は、消費者が商品・サービスを購入するまでには、5つのプロセスがあると提唱しています。まず、商品・サービスの存在を知り(①Attention)、興味をもちます(②Interest)。その後様々な情報に接触することで、欲しいという気持ちが高まり(③Desire)、記憶をしながら(④Memory)、最終的に購買行動に至る(⑤Action)というものです。この消費者心理の動きに合わせた仕掛けを行うことが、プロモーションの有効性を高めると考えられています。

「AIDMAの法則」によるクラブツーリズムの成功例

では、この法則を、シニアの旅行市場開拓に成功した「クラブツーリズム」のプロモーションと照合してみましょう。

 

クラブツーリズムは、主に中高年を対象とした国内外ツアーを主催しています。他の旅行会社と同様、新聞やインターネット等を活用したプロモーションを行っていますが、旅行情報誌『旅の友』の定期配送、顧客と直接会うプロモーションの積極的な取り入れを行っているのが、他社との相違点です。

 

●会報誌『旅の友』による、興味・関心の喚起

『旅の友』とは、クラブツーリズムが毎月発行している旅行情報誌で、月に約300万部発送されています(当社ホームページより)。

 

最大の特徴は、単なる旅行商品カタログではなく、旅にまつわる連載や特集記事など、旅の魅力を感じられる情報を充実させている点です。この情報誌を定期発送することで、旅行への興味・関心を高め、ツアーの検索や問い合わせなど、次のプロセスへ誘導する工夫がなされています。

 

●「事前講座」「ツーリズムカフェ」による、旅行欲求の高まり

シニアにとって旅行は楽しみである一方、不安も多く、興味があっても一歩を踏み出せず申込に至らないケースが多くあります。その不安要因を取り除くために仕掛けられたのが、各地で行われる「事前講座」や「ツーリズムカフェ」です。

 

クラブツーリズムは中高年層の健康ニーズを捉え、山登りやハイキングツアーを開催しています。彼らが安心してツアーに参加できるよう、事前講座ではツアーガイドが行程を説明したり、体力レベルの相談に乗ったり、必要な持ち物を伝えたりといった、きめ細やかなフォローを行っています。これらは顧客の不安を払拭し、旅行への欲求意欲をさらに引き上げる効果を担っています。

 

●仲間との交流による、旅行動機の後押し

クラブツーリズムには「エコースタッフ」という『旅の友』を配送するスタッフがいます。エコースタッフは、クラブツーリズムの利用顧客が中心となって組織化されている、いわばファンクラブのような存在です。彼らが申込みを迷っているお客様と定期的に接点を持つことで、再び旅行への興味関心を喚起し「この人がお勧めしてくれるなら行ってみようかな」と申込みへステップを進める仕組みが構築されています。

 

このように、クラブツーリズムは、ターゲットであるシニア層の購買行動に沿ったプロモーション設計を丁寧に行うことで成功している好例といえるでしょう。

 

[図表2]「AIDAM」の法則とクラブツーリズムのプロモーション例

 

プロモーションは企業と顧客の双方向のコミュニケーションです。企業側からの一方的な発信にならないよう、顧客の購買行動を考えたプロセスを構築し、次のアクションを後押しするようなプロモーションづくりを意識しましょう。

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