莫大な金額にのぼる石炭輸入をこれまで独占的に担ってきたNoble社。そもそも競争入札が行われるはずの石炭輸入で、Noble社はどのように供給権を独占し続けてこられたのでしょうか。その第1回の落札から振り返ってみます。スリランカでの石炭を巡る疑惑と争いをお伝えしている連載の第3回です。

第1回目から不調に終わった石炭供給の入札

Noble Resources社はNorochcholai Lakvijaya発電所設立以来、石炭供給を独占してきたにも関わらず、落札業者の選定に影響する審査委員会と入札監理委員会による推薦リストの第一候補として選ばれることはなかった。

 

ランカ石炭会社はNorochcholai Lakvijaya発電所向けの石炭購入事業を担う目的で、2008年に法人化された。ランカ石炭会社が調達した石炭の費用は、セイロン電力庁が支払う。そして、供給者がNorochcholai Lakvijaya発電所がある港まで出荷し、そこからSri Lanka Shipping Corporationによって発電所まで輸送される。

 

ランカ石炭会社とセイロン電力庁が石炭入札を最初に募ったのは2009年1月のことだった。発電所は2011年まで本格的に稼動する予定はなかったが、試験運転のために石炭を確保する必要があった。その入札には2社しか参加せず、また1社しか価格を提示しなかった。そして、その価格はあまりにも高いと見なされ、入札は中止となった。

当時の大統領の後押しを受けてNoble社が落札

それに続いた2回目の入札では、Noble Resources社を含む9社が参加し、4社が審査を通って希望価格の開札が認められた。審査委員会は最も低い値をつけたシンガポールに拠点を置くHolcim Trading社を推薦し、入札監理委員会はその提言を受け入れた。

 

しかし、Noble Resources社はその決定に不服を訴え、Holcim Trading社よりも高品質な石炭を提供できる自分たちが代わりに落札業者として認められるべきだと主張した。裁定委員会はその訴えを承認し、最安値を提示したHolcim Trading社を推薦する審査委員会と入札監理委員会の勧告を却下した。

 

当時のM.M.C.Ferdinando燃料動力大臣は内閣に対し、上述の裁定委員会による通達を受け入れることに問題ない旨を伝えていたが、その一方でNoble Resources社にはHolcim Trading社が提示した価格より安くなるよう、希望価格を70.81 ドルから70.45ドルに下げることを要求した。

 

2010年3月、募集規模220万トンの入札に対し、大統領はNoble Resources社を落札者として推薦した。内閣はこの勧告を受け入れ、Noble Resources社は、委員会による第一候補の相手先ではなかったにもかかわらず、Norochcholai Lakvijaya発電所に石炭を供給する最初の業者となった。この結果、落札価格は1億5,000万ドル以上にも相当するものとなった。

 

Noble Resources社は、2010年10月から石炭供給を開始した。1年分の石炭は通常、西海岸にモンスーンが到来する時期の前にあたる10月から4月の間にNorochcholai港まで出荷される。入札監理委員会の決定を無視した裁定委員会は、以後Noble Resources社による石炭供給に総計5億ドルを払うことになる。

 

次回は、2011年の第3回目の入札についてお伝えします。
 

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Sri Lanka’s Coal War」を、翻訳・編集したものです。

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