5回目にして、ようやくSwiss Singapore社という新たな落札者が誕生したかのようにみえた石炭供給権の入札。しかし、その決定も電力庁の不正が告発されたことで覆されることになります。スリランカでの石炭を巡る疑惑と争いをお伝えしている連載の第7回です。

裁定委員会による越権的な「提言」

2014年8月、入札を無効にされた4社は様々な根拠を掲げ、裁定委員会に申し立てた。取調べを通じ、裁定委員会は入札手続きの中でも審査委員会が関与するプロセスに深刻な過失や逸脱があったと判断し、Swiss Singapore社を推薦する審査委員会と入札監理委員会による、その判断の合法性と妥当性に悪影響を及ぼしていると見なした。

 

以上のことから、裁定委員会は入札を中止し、新たに入札を募るよう薦めた。また、裁定委員会は、新たに開始する入札がまとまるまで、現供給者であるNoble Resources社から現契約で取り決められた価格で石炭を仕入れ続けるよう勧告した。いくつかのメディアは、入札が中止になったのは、何人かの当局者の指示のもと、審査委員会と入札監理委員会が5社の入札を無効にしたためだと報じた。

最後まで委員会の勧告をはねのけた当時の大統領

当時の燃料動力省のFerdinando長官は、現在進行中の入札手続きを越えて、石炭がいかに調達されているかについて、裁定委員会は指摘できる立場にはいないと内閣宛に手紙を書いた。ましてやNoble Resources社は100万トンの供給のうち、たった20万トンしか用意できなかった上に、残り分は契約時に定めた64.8ドルから74.42ドルまで値上げしないと供給しないと言い始めた状況では、裁定委員会の出る幕はないと主張したのだ。

 

さらにFerdinando氏は、Noble Resources社は「現供給者」ではなく、契約内容を履行できない相手先だと主張する。その上で燃料動力省としては、当初推薦されていたSwiss Singapore社とその次に有力視されていたUttam Galva Steel JV社による入札を審査委員会と入札監理委員会が開催できるよう、内閣に承諾してもらいたいと要求した。

 

当時のRajapakse大統領はこの提案を却下し、ランカ石炭会社の会長にNoble Resources社から価格の提案を受けるよう指示した。そして、内閣はこの決定を受け入れたのだ。セイロン電力庁との取り決めに伴い、ランカ石炭会社はNoble Resources社との契約を更新し、2014年10月から始まる1年間で197万トンの供給を受けることが決定した。価格は、インドネシア産の石炭は78.3ドル、ロシア産の石炭は77.25ドル、そして、南アフリカ産は75.5ドルと定まった。

 

次回は政権交代によって石炭を巡る争いがどう変わったのかをお伝えします。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Sri Lanka’s Coal War」を、翻訳・編集したものです。

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