カジノ禁止は「規制大国日本」の象徴
世界ではカジノが合法化されている国が130もあるのに、日本で10年以上にわたってカジノ解禁が議論されながら、カジノ法案が成立しなかったことは異常だと外国人投資家は考えてきました。カジノ禁止は、規制大国日本の象徴だったのです。
私も10年以上、業界関係者や関係政治家とカジノ解禁のメリットを議論していますが、2016年12月にようやくIR推進法が成立したときには嬉しく思いました。私はラスベガス、シンガポール、マカオはもちろん、ロンドン、マニラ、ダナンなど世界中のカジノに視察に行ったことがあります。
日本はこれからギャンブル等依存症対策法案やIR実施法を成立させ、カジノを開業したい地方自治体を募集し、選ばれた地方自治体がオペレーターを選ぶので、実際にカジノが開業するのは、2020年の東京オリンピック後の2022〜23年ごろと見られています。オリンピック後には景気が落ち込むことが多いので、カジノはオリンピック後の経済を支えると期待されます。
カジノは国際会議施設、ショッピングモール、宿泊施設などの大きな施設の一部になる予定なので、IR(Integrated Resort)と呼ばれます(通常、株式市場でIRというと、Investor Relationsを意味しますが、カジノは長年、外国人投資家間で注目されてきたので、IRはカジノ施設も意味すると、外国人投資家も理解しています)。IR推進法の成立は、①規制緩和の成果、②地方を含めた内需振興、③インバウンド需要の喚起策として評価されています。
「時差ボケの欧米人」の需要を取り込める⁉
外国人投資家の関心事は、カジノ解禁は当初2〜3カ所といわれるなか、どの都市が選ばれるのか、どの企業がプロジェクトを獲得できるかということです。
オペレーターは、海外カジノ運営業者+日本の不動産開発業者+日本のゲーミング会社などのコンソーシアムになると予想されています。
場所としては、大阪は当確であるものの、関東は東京、横浜、千葉のどこが選ばれるかわからない情勢です。地方都市も1カ所選ばれると思われますが、長崎や北海道が有力とみられます。最終的には10カ所程度選ばれるので、一次選抜で落選した都市にも、二次選抜の可能性が残されます。カジノプロジェクトに参画できる企業も、カジノの実際の開業は2020年以降で業績への織り込みは不可能ですので、カジノ関連株は長期的な視点から保有する必要があります。
一方、ギャンブル等依存症対策法は公営ギャンブルに広く適用され、パチンコ・パチスロでは新たな出玉規制も行なわれるので、パチンコ・パチスロ業界にはネガティブと思われます。そうした懸念から、セガサミーホールディングスなど関連株が下落しました。
マカオのカジノ収入がラスベガスを抜いたことに表れているように、中国人のギャンブル好きは有名です。北京からはマカオより大阪のほうが近いし、日本のおもてなしの対応が好感されるので、遅ればせながら、日本でカジノが解禁されれば、北東地域に住む中国人の需要を取り込めると思います。
ちなみに、東京ほど夜中のレジャーが少ない大都市は少ないといわれます。東京近辺に紳士淑女の社交場としてカジノができれば、時差ボケの欧米人も取り込めるでしょう。国際カジノ研究所の木曽崇氏は、2017年6月に『「夜遊び」の経済学 世界が注目するナイトタイムエコノミー』(光文社)を書きましたが、日本は外国人投資家からも、ナイトエコノミーの拡大余地が大きいとみられています。
菊地 正俊
みずほ証券エクイティ調査部 チーフ株式ストラテジスト