日本の「自動車部品メーカー」が注目される理由
EVと自動運転が将来の自動車メーカーの競争力を大きく左右すると予想されますが、より近時的にはADAS(Advanced Driver Assistance System)が株式の投資テーマとして注目されています。
テレビでスバルのアイサイトのCMをよく見かけますが、衝突事故が起きそうなときに自動で止まる自動ブレーキなどが含まれます。日本が強みを持つ電子部品でも、新興国を中心にスマホ需要がピークアウトした一方、ADAS、自動運転、パワートレインなど自動車向け電子部品が、次の需要増加の大きなうねりになると考えられます。
政府は「未来投資戦略2017」に、2015年に国内販売新車乗用車の装着率が45%だった自動ブレーキの装着率を2020年に90%以上にする目標を掲げています。同時に2020年に安全運転支援装置・システムを国内車両の20%に搭載し、世界市場の3割を獲得することを目指しています。
外国人投資家も日本の自動車部品メーカーは国際競争力が高いのに割安だと思っており、日本の完成車以外の海外メーカーとの取引も増えていることを評価しています。自動運転関連の銘柄は幅広く、デンソーやスタンレー電気などの自動車部品から、日本電産や日本セラミックなどの電子部品、ルネサスエレクトロニクスやロームなどの半導体、日立化成や日清紡ホールディングスなどの素材までもが関連銘柄です。一方で、EV化でいらなくなるエンジン回りの部品メーカーなどの株は、ショートしたいニーズがヘッジファンドにはあります。
いずれにしてもこのテーマへの外国人投資家の関心は高く、みずほ証券では2017年7月に「Mizuho 自動運転プロジェクト 今世紀最大の産業イベント『自動運転車』が走り出す」という多くの関連アナリストが参加するレポートを出して好評を得ました。
「環境保護の本気度」を高める中国政府の思惑
トランプ大統領が世界的な温暖化ガスの削減を目指すパリ協定からの離脱を決めてしまったため、環境問題に対する株式市場の関心は低下してしまいましたが、欧州投資家を中心に中長期的に環境問題に注目する投資家は多くいます。
小池百合子東京都知事が2017年9月に「希望の党」を創設して、「原発ゼロ」政策を打ち出したときには、欧州投資家から「No Nuke」(英語で原発ゼロを意味します)政策から恩恵を受ける銘柄がどこか質問を受けました。訪ねてきた外国人投資家は、福島原発の廃炉事業の関係で、日立製作所や三菱重工業などが念頭にあったようです。私は希望の党も民進党も原発ゼロの目標年は2030年とはるか先である一方、ゼロエミッション社会を目指すとしているため、エフオンなどの省エネ関連株に注目したほうがいいのではと申し上げました。ただ、エフオンは小さすぎて、外国人投資家は買うことができないようです。
中国人が冬に東京を訪れると、晴れた青空に驚く一方、日本人が冬に北京に行くと、大気汚染で太陽が見えないことに驚きます。石炭火力で暖房を炊くので、中国の環境問題は冬に注目される季節性があります。中国がEVを推進するのも、環境問題が第一で、EVで世界制覇というのは副次的な目的です。中国政府は背に腹を代えられず、環境保護の本気度を高めています。環境保護のために、多少経済成長率が鈍化してもいいという覚悟です。
2017年9月に終わった環境保護に関する第4回査察では、2.6万社の公害を出す企業に、総額12.8億元の罰金と制裁が課せられ、1.6万人を上回る地方政府の高官が環境保護法違反の責任に問われる結果となり、前例のない厳しさになりました。10月の共産党大会でも、環境保護が重要な議論のテーマに取り上げられました。東レ、東ソー、島津製作所、堀場製作所、ダイキン工業などが、中国の環境保護強化から恩恵を受ける可能性があるでしょう。
菊地 正俊
みずほ証券エクイティ調査部 チーフ株式ストラテジスト