今週(8/18〜8/24)の国際マーケットレポート
・米中通商次官級協議…事態の打開に向けた大きな進展はなし。米中貿易摩擦の影響は、少なくとも米中首脳会談(11月開催が模索される)まで長引くと予想され、動向には引き続き注意が必要。
・トランプ政権…元選対本部長の有罪判決、元顧問弁護士による「不倫相手への口止め料支払い」暴露など、逆風が吹いてはいるが、政権の致命傷にはならないと予想。問題は米国経済成長の持続であり、トランプ大統領に関しては、「利上げ」への反対発言が注目されている。
・ジャクソンホールフォーラム…24日、パウエル米FRB議長が講演予定。トランプ大統領が示した利上げ継続への不快感を受けて、どのような発言がされるか注目される。
貿易摩擦 少なくとも11月まで市場は手探り状態か?
今週は、米中双方が160億ドル相当の輸入品に対する追加関税を発動、トルコリラへの下落圧力の継続、トランプ大統領元側近の有罪評決(大統領弾劾に繋がるとの懸念)といったマイナス材料はありながらも、株式市場はもみ合いで推移し、大きな下落にはいたらなかった。
6月初め以来の米中通商次官級協議は、23日に終了したが、事態の打開に向けた大きな進展はなかった。米中双方は、160億ドル相当の輸入品に追加関税を課すという次の段階に入ってしまったが、この段階は市場には織り込み済みであろう。貿易摩擦は、11月に開催を模索し始めた米中首脳会談までは、少なくとも引っ張られることになる。貿易摩擦の長期化がどのような影響を与えるか、手探り状態は続くだろう。
トランプ大統領 弾劾リスクは小?「利上げ」反対表明
21日には、トランプ大統領の元選対本部長のマナフォート被告に、脱税や銀行に対する詐欺などで有罪評決が下った。また、トランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告が、トランプ氏の指示で、大統領選挙中にトランプ氏との不倫関係を主張する女性2人に口止め料を支払ったことを認めた。
これらが、トランプ大統領の弾劾や、支持率の低下に繋がるとの懸念から、市場の不透明感を高め、株式市場での下落圧力となった。ただ、冷静に考えれば、これだけで、トランプ大統領弾劾に動くことは困難であると思われる。中間選挙を前にした、支持率の下落は確かに不安定材料だが、政権にとっての致命傷になることはないだろう。
トランプ政権にとっては、それら不安材料よりも、米国経済の成長が継続することのほうが、中間選挙でも支援材料なのではないだろうか。トランプ大統領は、20日のメディアとのインタビューでFRBの利上げ継続姿勢に対して「気に入らない」と発言したが、これは景気の腰を折ってしまう懸念から、そしてそれが選挙戦にも影響が大きいことからの発言と捉えるべきだろう。
FRB議長が講演 独自に金融政策を推進できるか?
24日には、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、ジャクソンホールフォーラムで講演する。今回は、例年の同フォーラムほどは、注目されていないが、トランプ大統領発言のあと、パウエル議長がどのような発言をするのか注目したい。
なお、カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁が「(年内は)あと2回の利上げ実施が適切と考えている」と発言したとの報道があり、ダラス地区連銀のカプラン総裁も、FRBが今後9ヵ月から1年の間に3〜4回の利上げを実施することが適切と語ったと伝えられた。
FRBのミッションは政治的配慮や政治的影響力からは離れて、金融政策を決定し、インフレのコントロールと雇用最大化を実現することである。利上げは、経済に調整を引き起こすことを認識しながらも、景気とインフレの状況を見ながら、金融政策を実施していくとの原則は、貫かれることだろう。
パウエル議長講演でも、その点は確認されることになるであろうし、株式市場に与える影響も、FRBが米国経済の状況を堅調と見ていることを確認して、マイナスにはならないのではないかと考えている。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO