今週(8/20〜8/26)の国際マーケット展望
・米主要企業の業績は、歴史的高水準。市場は強気ではないが、ここ1ヵ月の動きを見ると、ナスダックが史上最高水準の値であるなど、崩れてはいないことがわかる。
・トルコリラ関連…信用格付けの引き下げ、米牧師解放の控訴却下などを受け、小幅の下落。想定されていたこともあり、影響は少なめか。ユーロが主要通貨に対して下落しており、新興国通貨から世界市場への波及同様、引き続き注意が必要。
・米中貿易摩擦関連…米紙が、米中首脳会談11月開催予定の可能性を報じる。トップダウンによる終結が視野に入ったため、市場はそれまで静観することも考えられる。
・今週の注目ポイント…24日、パウエル米FRB議長が年次シンポジウムで講演。米国経済の堅調さを確認し、金融政策の大幅変更はなしという趣旨のコメントをするのではないかと予想。
米国株式市場 ナスダックは史上最高値の水準
米主要企業の業績は歴史的な高水準を記録している。これを受けて、米国での設備投資は増加。雇用も「完全雇用」情況が続いており、米国経済が堅調であることに疑いを挟むことは難しい。
しかし、従前から指摘していることだが、ファンダメンタルズが良好なわりに、市場はいまひとつ強気に与(くみ)することができないでいる。金利上昇による米国経済の先行き腰折れ懸念に加え、米中貿易摩擦とトルコ情勢という不透明要因が、強気への転化を妨げている構図だ。
とはいえ、過去1ヵ月の動きを振り返ってみると、米国株式市場で、ダウは+2.41%、S&Pは+1.63%、ナスダックは-0.11%(いずれも7月19日終値と8月17日終値の比較)と崩れているわけではない。ナスダックにいたっては、今年2月に付けた高値を3月、6月、7月と更新してきており、現在も史上最高値の水準にある。
トルコリラ・ショック 新興国通貨やユーロも下落
トルコ情勢では17日に、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とムーディーズの両社が、トルコの信用格付けを引き下げた。また、トルコ裁判所がブランソン米牧師解放の控訴を却下したことから、トルコリラは小幅ながらも下落した。格下げ自体は市場が既に織り込んでいたことや、ブランソン牧師の開放も現時点では予想されていなかったことから、相場の反応は限定的であった。
トルコリラには引き続き売り圧力がかかるが、注目しておきたいのは、南アフリカランドやメキシコペソにも、下落圧力が見られることだろう。他の新興国通貨に波及するかどうかは世界の市場にとって重要であり、これら通貨の動きには要注意である。
なお、トルコ問題は、欧州の政治経済に与える影響が大きい。トルコリラ下落をきっかけに、ユーロが主要通貨に対して下落していることも、頭に入れておきたい。
米中貿易摩擦 首脳会談の噂あり、市場は静観状態へ?
米中貿易摩擦に関しては、関税の実施が段階的に開始されるなか、協議は継続しており、落とし所はあるのかが焦点である。
先ずは今月下旬に予定されている米中次官協議が注目されるが、17日に米紙が、米中首脳会談11月開催の可能性を伝えた。トップダウンでの協議終結が視野に入ってくると、当面は強弱どちらのニュースが出ても、材料としては反応しにくいのではないか。
24日 パウエル米FRB議長が年次シンポジウムで講演
他の注目点としては、今週末になるが、24日にはパウエル米FRB議長が、ジャクソンホールでの年次シンポジウムで講演する。世界の著名エコノミストや中央銀行総裁らを前に、米FRB議長が何を語るのか注目されるところだ。前回までのように注目度は高くないが、パウエル議長が、世界経済の現状をどう見ているのか、金融政策の舵取りについて示唆があるか、米中貿易摩擦やトルコ情勢などの不透明材料をどう捉えているか…、是非、聞いてみたいところである。
筆者は、パウエル議長が、引き続き米国経済の堅調さについて確認し、金融政策も大きく変えることはなく、それほど安定しているのだとコメントすることを予想している。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO