今週(8/27〜9/2)の国際マーケット展望
・米国株式市場…米中貿易摩擦、トルコリラ・ショックなど先行き不透明感も強いなか、先週24日にS&P500、ナスダックが史上最高値を更新。堅調な経済や企業業績などに支えられ、米国株式市場は上昇が続く。
・ジャクソンホール・シンポジウム…先週24日に開催され、パウエル米FRB議長が講演。トランプ大統領の「利上げ批判」への反応に注目が集まったが、直接の言及はなし。利上げに関しては「様々な意見を真剣に検討した結果」と明言。米短期金利先物相場は9月と12月の利上げを織り込む。
・今週の注目ポイント…29日、4-6月米国国内総生産(GDP)改定値が発表される。主要経済指標が市場予想を裏切らなければ、引き続き、株式市場はじり高、為替市場はドル高の傾向か。
S&P500が史上最高値…米国株式市場は引き続き上昇
先週24日に、米国株式市場の代表的な株価指数であるS&P500は、史上最高値を更新した。同指数は、今年1月26日に終値ベースでの最高値をつけた後、2月前半にかけて10%超下落し、そこから徐々に回復傾向ではあったが、24日にこの1月高値を抜き、史上最高値を更新したのである。
実は、もう一つの代表的な指数であるナスダック指数は、1月高値から下落した後、回復はより早く、3月、6月、7月とそれぞれの時点での史上最高値を更新し、先週24日も真高値をつけて史上最高値を更新した。ナスダックに続いて、S&P500も追随する形で今年の高値を抜け、史上最高値をつけたことになる。
本コラムで、指摘してきた通り、確かに市場には先行き不透明感が強いが、だからといって、これを弱い相場と受け止めてしまうと、相場を読み間違えることになる。米国経済の堅調な成長と好調な企業業績、そしてトランプ政権の政策である税制改革と規制緩和を背景にして、米国株式市場上昇は続いているのである。
パウエル米FRB議長が講演…年4回の利上げはブレない
先週24日、ジャクソンホールのシンポジウムで、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が講演した。トランプ米大統領は先週、メディアインタビューで、FRBが利上げを継続する姿勢であることを、「気に入らない」と批判したが、これについてパウエル議長の言及はなかった。
ただ講演のなかで、「インフレ率が明確に上昇する兆候があまりないなか、雇用の伸びや景気拡大の継続を阻害するリスクをおかしてまで、金融引き締めを行うべきなのか(これはトランプ大統領の立場でもある)」という意見や、「これほど低い失業率であるのだから、景気過熱やインフレの抑制に向け、もっと急激に金融政策を引き締めるべきではないのか」という意見などを踏まえた上で、「現在のFRBがとっている段階的な利上げは、両方の意見のリスクを真剣に検討した結果」であると言い切った点は注目したい。
また、次のことがはっきりと言及されている。
・経済は力強く、インフレはターゲットである2%水準にあり、大半の求職者は職を見つけることができる状況は続いている
・所得や雇用の力強い伸びが継続すれば、かかるインフレ圧力を抑制するために、着実な利上げは最善の方策である
つまり、経済に調整の必要を引き起こすことを認識しながらも、景気とインフレの状況を見ながら、金融政策を実施していくスタンスは、維持される見通しということである。
FOMCコンセンサスでもある年4回の利上げは、現時点ではブレないということだ。したがって、短期金利先物相場は引き続き、来る9月と12月の利上げを織り込んでいる。今週、29日には4-6月米国国内総生産(GDP)改定値が発表されるが、来週にかけて、主要経済指標が市場予想を裏切らなければ、株式市場はじり高、為替市場でも、米ドルが買われやすい状況が継続するだろう。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO