消費者と一対一の関係をつくりやすいニッチブランド
前回の続きです。
また、SNSには口コミで情報を伝える役割のほかに、ワン・トゥ・ワンマーケティングを実現するツールとしても期待が寄せられています。
ワン・トゥ・ワンマーケティングとは顧客と一対一の信頼関係をつくってモノを売る方法であり、以下のようなメリットがあるといわれています。
①リピート率の向上
顧客との間に親密な関係が築かれることにより、商品の購入を繰り返してくれる可能性が高まります。
②関連商品等の追加販売による売上拡大
一対一でやり取りをする中で、顧客が何を求めているのかを長期間にわたり的確に把握することが可能となります。そうした顧客のニーズに応じて、適宜、関連商品を提供することでさらに売上が拡大することも期待できるでしょう。
③新規客の紹介
ワン・トゥ・ワンマーケティングの結果として満足度が高まった顧客からは、新規客の紹介を得られることもあります。
マス広告の神通力が弱まってきた時代の中で、それに代わる宣伝・販売戦略としてワン・トゥ・ワンマーケティングの手法を取り入れることがこれからは不可欠になると考えられています。その具体的な手段として、実際にSNSを活用する試みも様々なかたちで始められています。
そして、個人や小規模の企業体によってつくられるニッチブランドは、大手に比べて小回りが利くだけに顧客に寄り添いやすく、消費者と一対一の関係をよりつくりやすい条件を備えているとみられているのです。
そもそもニッチブランドは、「ECでただ売る」というスタンスでは絶対に成功しません。顧客となる可能性のある人達にしっかりとブランドの情報を伝え、そのファンになってもらうことが必要になります。そのためには、SNSを意識的に利用してワン・トゥ・ワンのコミュニケーションを積極的に行っていくことが求められます。その具体的な方法については第13回以降に詳しく紹介しましょう。
EC、スマホ、SNSの普及・発展=ニッチブランドの成長
以上のように、EC、スマホ、SNSの普及・発展は、同時にニッチブランドの成長を促す理想的な条件や〝場〟をもたらしてきたといえます。また、ここまで触れてきたように、これら3つの利用者、市場は今後もさらに拡大していくことは間違いありません。したがって、ニッチブランドのマーケットもそれに比例してより一層大きくなっていくことは確実です。
ここで確認しておくと、ニッチブランドは、①「つくる」、②「伝える」、③「売る」の3つの段階を経て創出されます。
①「つくる」は商品を企画・開発し生産する過程になります。市場が求めるニッチなニーズに応えて、一つのストーリー性をもったモノをつくりあげていくプロセスです。
また、つくった商品を「買いたい」と思ってもらうためには、大前提としてその存在や中身等に関する情報を知らせなければなりません。そこで、②「伝える」作業が必要になります。この段階では広告で宣伝するだけでなく、「こんないい商品があったよ」「面白いよ」と口コミで情報を拡散してもらう仕組みを整えていくことが求められます。とりわけ大事になるのは「誰が伝えるか」です。
具体的には「○○に詳しい××さんがいいと言っているのだから、この商品は素晴らしいに違いない」などと信頼感を与えられるような人を通じてブランドの情報が広がっていくことが望ましいでしょう。
そして、商品を消費者のもとに届けるためには販売の仕組み(販路)をつくり上げなければなりません。この仕組みづくりが③「売る」になります。ニッチブランドの販路はECが主体となりますが、売上・利益を最大化するためにはリアル店舗にも流通することが必要になります。このECとリアルの連携はニッチブランドの流通設計において最も重要な課題の一つとなります。
次回からは、このニッチブランド創出のノウハウ、ポイントについて、すなわち①「つくる」、②「伝える」、③「売る」の3つのステージそれぞれの内容について詳しく解説していきましょう。