前回は、SNS時代のワン・トゥ・ワンマーケティングを解説しました。今回は、ニッチブランド創出のための実践的ノウハウを紹介します。

核となるのは「ニッチ性」「ストーリー性」

では、今回からニッチブランド創出のノウハウについて詳しくみていきましょう。

 

 

まずはファーストステップの「つくる」です。ニッチブランドの核となる「ニッチ性」と「ストーリー性」を備えた商品の開発・生産を行うプロセスになります。

 

この「つくる」では、まず市場調査を通じて、

 

「こういう商品があったらいいな!」

「こんな面白い商品がある!」

「これなら大手の商品と区別化・差異化できる!」

 

などとニッチなブランドのアイデアを考えたり、あるいはその気づきにつながる商品やサービスをリサーチします。

 

例えば、第1回で触れたリッププランパー「HIMITU(ヒミツ)」は、社内の女性スタッフが「海外で唇専用の美容液が売られている」という情報を入手したことが、そもそもの開発のきっかけとなりました。その海外製リップ美容液は日本では一部の美容クリニックで販売されていた程度で、まだほとんど知られていませんでした。

 

こんな商品があると知ったら、自分の唇を美しくふっくらとみせたい人は「ほしい!」と思うはず――。

 

そう判断し、使用感や色味などに関して、より日本人の女性に適したリッププランパーを自社で独自に開発することを決めたのです。

 

まずターゲットは、30代後半から40代の女性に絞りました。年をとると肌がたるんで、しわができるように、唇も潤いが失われて厚みが薄くなっていきます。そのような悩みが出てくる世代の女性達、つまりはアンチエイジングを意識し始める世代の女性達のニーズを取り込めると判断したのです。

 

このようにターゲットを絞った後で、商品のストーリーコンセプトを固めていきました。ターゲットとなる30代後半、40代の女性達は仕事に、あるいは家事に忙しく、リップを塗る余裕もなかなかありません。

 

逆にいえば、同性の目から見て「リップを塗り、ぷるんと潤った唇の女性はとても上品で余裕を感じさせる」イメージがあります。

 

すると「こっそりと自分の気持ちを高める秘密兵器」「誰にも教えたくない唇だけをケアしてくれるヒミツの武器」というコンセプトで商品をアピールすることができるのではないか―そのような発想から「HIMITU(ヒミツ)」というブランドのアイデアとその名称が生まれたのです。

 

ニッチブランドの着想は、この「HIMITU(ヒミツ)」の例が示すように、既存の商品を手がかりに、そこに新たに別の付加価値を加えることによって生まれる場合もあれば、全く新しいオリジナルなかたちで得られる場合ももちろんあります。

 

例えば私の会社で開発した家庭用毛玉予防スプレー「undeg(アンデグ)」は「ニットに毛玉ができなければいいのに。もっとキレイな状態で、ずっと長く着られたら」という声から誕生したものです。セーターに毛玉がつくことを防ぐという新しい価値を提供することができました。

市場調査の対象は、実店舗・ウェブ・ECモール・アプリ

先ほどご紹介したようにマーケティングでは、ブランドのアイデアを探り、そして得られたアイデアを土台としてニッチブランドの設計に欠かせない「ニッチ性」「ストーリー性」を具体化していく作業を行います。

 

そのために必要となるデータを集めるために様々なかたちで市場調査を進めていくことになりますが、主な調査対象としては以下の①から④があげられます。

 

①国内外リアル店舗(実店舗)

②ウェブ

③各ECモール

④各アプリ

 

①に関しては国内外のリアル店舗で現在、どのような商品・サービスが提供されているのかを調べます。一方、②から④はインターネット上での調査とそれによって得たデータの分析が中心になります。

 

 

次回は、それぞれの中身について詳しくみていきましょう。

ニッチブランド革命 デジタルマーケティング時代のヒットの法則

ニッチブランド革命 デジタルマーケティング時代のヒットの法則

山口 恵市

幻冬舎メディアコンサルティング

好きなものを「つくって広めたい」が現実に! これからの市場を支配するのは、小さなニーズを狙って届けるニッチブランド!? ニッチブランドの企画からプロモーション、流通まで──新しいヒットの仕組みを徹底解説! ●なぜ…

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