過酷な労働、減らせない支出、あてにできない退職金…
「お医者さんは高収入でお金持ち」これは社会常識ともいえる認識であり、実際に医師の年収は民間勤務医の場合で1500万円前後。開業医となると2000万、3000万円という人も珍しくはありません。
空前の医学部ブームといわれて久しく、医学部受験は激化の一途をたどっていますが、社会貢献ができ尊敬される職業であるというだけでなく、この「高収入で安定している」という点も、医学部人気の大きな要因だといわれています。
しかしながら、いざ高所得の医師になれたら安泰かというと、理想と現実には大きな乖離があるようです。全国医師ユニオンの調査によると、医師の多くは将来の収入や生活について、非常に強い危機意識をもっています。その危機意識は、次のような医師独特の労働環境に根差していると推察されます。
ポイントは次の4点です。
①過酷な労働実態
②将来的な年収減
③減らせない支出
④あてにできない退職金
1カ月の休日は平均5日、精神的なストレスも大きい
勤務医・開業医を問わず、医師の仕事は大変な激務です。全国医師ユニオンが行った「勤務医労働実態調査2017」によると、医師の1カ月の時間外労働時間は、常勤医では53.3時間。労働基準法の法定労働時間、週40時間を大幅に上回っています。
また、1カ月の休みは、平均して約5日。加えて、夜勤をする医師は睡眠時間が短く、夜勤明けにそのまま連続勤務するケースも少なくないそうです。人の健康や命に関わるという非常に責任の重い仕事であるが故に、精神的なストレスやプレッシャーにもさらされます。
同調査では9割を超える医師が医療トラブルの不安やストレスを抱えており、約6割は「最近医師をやめたいと思ったことがある」と回答しています。いかに医師という仕事が過酷か、その一端を垣間見るような調査結果だといえるでしょう。
[図表]医師の健康状態