ランニングコスト、修繕コストにも考慮が必要
本連載の第5回『医師のための不動産投資…怖い「空室リスク」を抑えるには?』(関連リンク参照)において、不動産投資に伴う5つのリスクのうち、「空室リスク」について解説しました。今回は、「経費リスク」「出口リスク」「入居者リスク」について見ていきましょう。
②経費リスク
物件の運営にあたって、どのくらい経費がかかるのか。ランニングコストや修繕コストについても考慮する必要があります。
不動産投資にかかる経費には次のようなものがあります。
●購入時の経費:仲介手数料、登録免許税、不動産取得税
●運営時の経費:管理費、修繕費・保険料・固定資産税、融資金利
●入退去時・空室時の経費:広告料、仲介手数料、原状回復費
例えば中古物件を購入する場合は、あらかじめ購入後に予想される修繕コストも計算に入れたうえで収支計算をしておく必要があります。また、購入する物件の構造や規模、エレベーターの有無によってもランニングコストは大きく変わってきます。
不動産投資における「利回り」とは、多くの場合表面利回りを指します。表面利回りとは、毎月の家賃×12÷物件価格で求められる割合です。不動産のポータルサイトや販売図面に書かれている利回り○%、という表記も全て表面利回りです。
しかし、この表面利回りはあくまでも目安でしかありません。実際に不動産投資を行ううえでは、様々な経費を差し引いた後にいくら手元に残るのか、表面利回りではなく実質利回りで考える必要があります。
★表面利回りと実質利回り
毎月40万円の家賃が得られる8部屋8000万円の物件の場合
■表面利回り
毎月の家賃×12÷物件価格 表面利回りは6% 40万円×12カ月÷8000万円=0.06
■実質利回り
(毎月の家賃×12)−(年間の経費)÷(物件価格+諸経費)
※経費
・年間の管理費(5%) 24万円
・年間の入退去コスト(5%) 24万円
・修繕費(5%) 24万円
・融資金利(2%)158万円
・火災保険料 16万円
・固定資産税(土地・建物) 40万円
・購入経費7%=560万円
{(40万円×12ヵ月)−(24万円+ 24万円+ 24万円+ 158万円) } ÷(8000万円+ 560万円)= 2.9
実質利回りは2.9%
※経費はあくまでも概算であり、物件により大きく異なります。
★不動産運営コストの目安
①購入時にかかる諸費用
・仲介手数料=物件価格(税抜き)×3%+6万円+消費税
・移転登記費用
・抵当権設定費用
・火災保険料
・団体信用生命保険料
・売買契約書印紙代 諸費用の概算はだいたい物件価格の5%~7%前後
②借入にかかる諸費用
・事務手数料
・印紙代
・組合加入費用(信金・信用組合の場合等)
③所有している間にかかる費用
・不動産取得税(購入時1回限り)
・融資金利
・固定資産税
・都市計画税(毎年1回)
・管理費
・清掃費
・修繕費
・クリーニング代
・広告料
・仲介手数料
・原状回復費
「出口=簡単に売却できるのか」という目線で検討を
③出口リスク
出口=簡単に売却できるのか、という目線で検討します。たとえ高利回りで長期保有を前提に購入する物件であっても、いざ売却して現金化したい時に売れない、あるいは二束三文で買い叩かれてしまうような物件では資産性や流動性という点でリスクが高過ぎます。
ポイントは、自分の次に買う方にとっても、融資を受けやすい物件であるか否かです。
④入居者リスク
不動産投資を始めるにあたって、多くの方が不安に感じるのが入居者トラブルです。不良入居者の入居(騒音問題、ごみ屋敷問題)、家賃滞納、夜逃げ、自殺・事件事故など、不安要素を考えたらきりがありません。
しかし、不動産賃貸業は分業のシステムが確立されていますので、入居者に関する問題の対応は、管理会社に大半を委託することができ、オーナーの手間はほぼかかりません。何かあればオーナーに連絡が入りますので、担当者と相談しながら、どうするか判断していけばいいのです。
鉄羅 敦士
PLAC株式会社 代表取締役社長