前回は、軽視できない「経費リスク」等の対応策を取り上げました。今回は、地震や火災等の災害リスクの対応策を見ていきます。

「火災保険+地震保険」の加入でリスクを最小限に

前回『医師のための不動産投資…軽視できない「経費」のリスクとは?』(関連リンク参照)の続きです。

 

本連載では、不動産投資におけるリスクとして、①空室リスク②経費リスク③出口リスク④入居者リスク⑤地震・火災リスクを説明しています。今回は、⑤地震・火災リスクに関してです。

 

 

⑤地震・火災リスク

地震や火事といった災害も不動産リスクの一つです。

 

地震

2011年に起こった東日本大震災では、地震による建物の倒壊のみならず、津波や原発事故にまで被害が拡大しました。また、近年は台風や竜巻、ゲリラ豪雨の発生なども毎年のようにニュースになっています。

 

天災の発生そのものは予測やコントロールが難しいものですが、火災保険とオプションの地震保険に加入しておくことで、リスクを最小限に抑えることは可能です。

 

なお、大災害時における、保険会社の保険金支払い能力についてですが、過去の事例を見てみると、2011年の東日本大震災では、1兆円を超える規模の保険金が迅速に速やかに支払われ、被災者の生活再建をサポートしました。2016年の熊本地震の際にも同様に速やかに十分な保険金が支払われています。

 

地震保険は公共性の高い保険なので、どこの会社の商品であっても「地震保険法」という法律に基づいて運営されています。1回の地震につき5兆5千億円(注:2012年4月1日からは6兆2000億円)までは法律によって保険金の支払いが保証されていますので、その点での心配は無用です。リスクヘッジとして火災保険及び地震保険には必ず入っておきましょう。

 

また、地震への備えとして、耐震性の高い建物を選択することも重要です。1981年に建築基準法が改正され、耐震基準も大幅に引き上げられました。この1981年以降の「新耐震基準」に沿った建物であれば、地震による倒壊リスクは低くなります。

 

阪神・淡路大震災の際に倒壊した建物の多くは、1981年以前に建築された建物で、新耐震基準に合致した建物には、ほとんど被害がありませんでした。同様に東日本大震災の際にも、新耐震基準により設計された建物の地震による構造被害は、ほとんどみられていません。

「災害耐性の強い地域」を選んでリスク回避する方法も

火災

次に、火災のリスクについて考えてみましょう。火災リスクは建物の構造によって異なります。鉄筋コンクリート造の建物の場合は、火災が発生してから30分~3時間は延焼しない耐火構造で建築されています。加えて不燃材料の鉄筋コンクリートで造られているため、そもそも構造的に火事の被害を受けるリスクは小さいのです。実際、マンションの火災のうち、9割以上はボヤ程度で消火されています。

 

 

木造の建物の場合、当然、鉄筋コンクリート造より火事には弱いのですが、それでも防火地域、準防火地域など地域によって防火基準が定められており、外建材の進歩などもあり耐火性能は大幅に向上しています。

 

現在、建物単体の火災よりも危惧されているのは、古い木造住宅が密集している地帯(木密地)での火災発生時の延焼拡大による被害です。全国の木密地については、国土交通省が調査、発表していますので、ハザードマップなどを参照し、災害耐性の強い、安全な地域を選択することもリスク回避になります。

 

それでも火事による被害に見舞われた場合には、火災保険で対応が可能です。また、入居者にも賃貸契約の際に契約期間と同じ期間の火災保険に加入してもらいますので、もし入居者の失火により火災が生じた場合には、入居者の火災保険で賠償してもらうことができます。

 

アパート・マンションのオーナー用の保険では、火災で建物が使えない間の家賃保証や、建物が入居者に被害を与えてしまった場合に備える施設賠償保険など様々なオプションがあります。万一に備えておくに越したことはありません(図表参照)。

 

[図表]賃貸住宅に必要な保険
[図表]賃貸住宅に必要な保険

 

 

鉄羅 敦士

PLAC株式会社 代表取締役社長

90分でわかる! 忙しい医師の不動産投資「はじめの一冊」

90分でわかる! 忙しい医師の不動産投資「はじめの一冊」

鉄羅 敦士

幻冬舎メディアコンサルティング

年収1000万円を超えるような高額所得者である医師にとって、投資用不動産は資産形成に効果的な投資商品の一つです。 不動産投資には、継続的に賃料収入が得られるほか、借入で始められてレバレッジをかけられたり、保険代わり…

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