「空室」は不動産投資の最大のリスク
本連載の第4回『多忙な医師の資産形成・・・「不動産投資」がお勧めな理由』(関連リンク参照)において、医師が不動産投資を行うメリット、医師と不動産投資の親和性の高さについてご説明してきました。
しかし全ての投資にリスクがあるように、不動産投資にもリスクが存在します。不動産投資に関わるリスクとしては、大きく分けて次の5つが挙げられます。
<不動産投資における5つのリスク>
①空室リスク
②経費リスク
③出口リスク
④入居者リスク
⑤地震・火災リスク
①空室リスク
不動産投資の最大のリスクは「空室」です。しかし、賃貸住宅の場合は一定期間で入退去が発生することは避けられません。
特に学生や単身者世帯向けの場合は、4年以内に退去する人が8割以上です。学生や単身者が卒業や転勤などで引っ越しをするのは当然予測できることで、退去が出たからといって過度に神経質になる必要はありません。それよりも怖いのは、賃貸住宅のある地域の、需給そのものが悪化してしまうケースです。
ある大家さんは地方都市に学生アパートを持っていたのですが、近所にあった某大学の学部が東京に移転したために学生がいなくなり、ほぼ全空に近い状態になってしまいました。大学の周辺には学生を見込んだ同じようなアパートが大量に存在します。そうなると今度は、少ない入居者を奪い合っての値下げ競争になり、広告費を3カ月、4カ月分上乗せした上にフリーレントをつけても埋まらない、埋まっても経費倒れで収支が合わないという最悪の状況に陥ってしまったそうです。
これは大学のみならず、商業施設や工場、病院など特定の需要に依存している地域では、どこでも起こり得る事例です。
入念なリサーチによって空室リスクは軽減できる!?
そもそも、特定の需要にかかわらず日本全体が少子高齢化による人口減少に直面していることは周知の事実です。日本では、2008年の人口1億2800万人をピークに人口減少が始まっており、2050年には、人口は1億人を切ることはほぼ確実とされています。人口が減少すれば賃貸需要も低下し、空き家や空室の増加、賃料の下落などにつながると考えられます。
しかし、人口動態を細かく見ると、全国一律に人口が減少しているわけではありません。人口減少時代においては、雇用やマーケットを求めてより人の集まる場所へと人が集中するため、人口が減少している地域はどんどん若年層が流出し、一方で東京圏への人口集中傾向も顕著になっています。つまり、人が減る地域と増える地域の二極化が進んでいるのです。
東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川の4都県)及び愛知、沖縄はいずれも人口が増えています。特に都道府県別の人口増加率は東京都(0.60%)がトップで人口1300万人の大台に乗っています。
また、総人口が減少している反面、世帯数そのものは増加しています。「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、2017年1月1日現在の世帯数は5622万1568世帯で、前年度よりも40万9599世帯、0.73%増加しています。
これは核家族世帯やDINKS、単身者世帯が増加していることが要因とみられていますが、特に注目されているのが、単身世帯の増加です。
未婚や離婚によるシングル世帯の増加や、高齢化の進行により配偶者と死別して単独世帯になる高齢者(65歳以上)の増加が進み、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年には単身世帯が全世帯の39.3%に達するとみられています。この層に向けた賃貸需要は今後も高まっていくといえるでしょう。
結論としては、どんな物件であっても空室リスクはゼロではありませんが、地域によっては重要が増えており、どんな物件を選ぶか選択眼が問われるということです。不動産は文字通り「動かせない資産」です。不動産投資を行ううえでは、今後も人口流入が見込める地域どうか、時代のニーズに合致した物件であるかどうか、購入前に慎重にリサーチする必要があります。
鉄羅 敦士
PLAC株式会社 代表取締役社長