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2017年米国不動産市場における「外国人投資家」の動向

米国不動産の価格を大きく左右するのが、中国人や日本人をはじめとした「外国人投資家」の動向です。そこで今回は、2017年米国不動産市場における「外国人投資家」の動向と、今後の価格変動の行方を見ていきます。

中国政府が「海外不動産投資に対する規制」を強化

前回は、サンフランシスコ・ベイエリアに所在する、巨大IT企業3社の2018年第1四半期までの業績を紹介しました。今回は、2017年度米国不動産市場における、外国人投資家の動向を数字で追っていきましょう。

 

まずは、米国調査会社・RCA社が先週発表した、2017年第2四半期から2018年第1四半期に実施された、外国人投資家による米国不動産購入額の国別TOP10ランキングを見てみましょう。

 

①カナダ・・・203

②中国・・・89

③シンガポール・・・77

④ドイツ・・・51

⑤オランダ・・・35

⑥香港・・・26

⑦韓国・・・21

⑧日本・・・16

⑨スイス・・・13

⑩ノルウェー・・・12

(単位:億米ドル)

 

やはり気になるのは、中国人と日本人の動向といえます。

 

2017年8月から、中国政府が海外不動産投資に対する規制を強化したことで、2017年投資実施額は、2015〜2016年の米国における年間実施額の半分程度に落ち込んでおり、2018年以降もその影響を受けていると思われます。

 

クッシュマン&ウェークフィールド社によると、中国と香港からの投資実施額は、

 

①ニューヨーク

②サンフランシスコ・ベイエリア

③ロサンゼルス

④シカゴ

⑤シアトル

 

以上の5都市に集中しているそうです。2017年の都市割合で見ると、①ニューヨークが46%、②サンフランシスコ・ベイエリアが20%、③ロサンゼルスが6%、④シカゴが5%、⑤シアトルが1%となっています。

 

特筆すべき点は、2011〜2016年は富裕層・政府系ファンド・保険会社が中心であったのに対し、2017年は民間不動産会社が大半を占めたことです。不動産種類は、一貫して都市部にある事務所ビル、ホテル・開発用地が中心でした。

住宅不動産の価格は「スローダウン」の可能性も

それでは、サンフランシスコ・ベイエリアにおける中国人の投資動向を見てみましょう。

 

 

上記数値は商業不動産のみですが、住宅不動産も含めれば相当な資産の蓄積があると思われます。特に住宅不動産は、全体マーケットの20〜30%を中国人が保有していると言われています。

 

過去5年間で、事務所ビル、ホテル、開発用地に購入が集中してきたことから、今後中国人の投資があまり望めないとなると、価格上昇はおろか、スローダウンの可能性があるかもしれない点は注意が必要です。

 

一方、2017年度の日本人による海外不動産投資エリアを見てみましょう。米国不動産仲介調査会社・CBRE社によれば、2017年度の日本人による海外不動産投資額が27億米ドルで、米国での投資額が23億米ドルで全体の85%を占めます(ただし、この数字は商業不動産のみの数値です)。ボリューム的には、前年実績25億米ドルから9.1%減となっています。

 

出所:CBRE社データをベースに筆者が作成
出所:CBRE社データをベースに筆者が作成

 

CBRE社によれば、2018年4月に行った、海外不動産を行っている日本人の既存投資家への調査では、投資額を前年比増加させる投資家の比率が74%に昇り、エリア的には70%が米国、次に英国、ベトナム(合計26%)と続きます。さらに、日本人の機関投資家は今後3年で総額140億米ドルになると予想しています。

 

これは、1980年代バブル期・1990年代の日系不動産会社群の撤退後、ほぼ20年ぶりの動きとなっているようです。

 

一方、日本人投資家による海外不動産開発の総価値は、2017年度で50億米ドルになると発表されており、80%がアジア太平洋、そのうち60%が住宅開発という調査結果となりました。特にタイおよびインドネシアで、中間層向けの成長と拡大に期待しているようです。

 

若干データが古くなりますが、2015年9月に会計検査院が調査発表した報告書(http://report.jbaudit.go.jp/org/h27/2015-h27-0923-0.htm)の中に、面白いデータがあります。

 

この調査は、所得税に係る申告納税額のある者一人当たりの申告納税額が多額となっている、麹町税務署等10税務署(京橋、芝、麻布、四谷、目黒、雪谷、玉川、渋谷、芦屋各税務署)を調査対象にしたものです。

 

証拠書類として提出された平成23年(2011年)分から25年(2013年)分までの、延べ2万8,349人に係る所得税の確定申告書等のうち、不動産所得に係る決算書において、国外に所在する建物を不動産事業の用に供している状況を把握できた延べ872人について、その所有する建物の取得年月、所在地、耐用年数、減価償却費、賃貸料収入等の分析を行ったものです。

 

そして、平成25年(2013年)分の国外に所在する建物576件の所在する国は、アメリカ合衆国が371件(全体に占める割合は64.4%)、英国が64件(同11.1%)となっており、アメリカ合衆国と英国でその約4分の3を占めていました。

 

ここから、2013年時点では日本人の個人投資家が減価償却目的で購入した中古不動産の60%強が、米国に集中していたことが分かります。

 

日本人個人投資家の最近の動向がわかるデータが見つかりませんが、2015年から2017年において、日本人の米国での商業不動産投資比率が徐々に高まっていることを考えれば、住宅不動産も同様に高まっている可能性は非常に高いといえるでしょう。

 

本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。

クラウドクレジット株式会社 商品部 商品組成担当マネージャー

北海道出身、一橋大学経済学部卒業。UCLA不動産関連科目履修。
東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)開発金融部海外不動産グループ(米国担当2年半)、ユニオンバンク(7年加州駐在)にて、不動産を中心とした開発金融・アドバイザリー業務を経験。2000年に退職後、ローンスターファンド・ラサールインベストメント等の外資系投資ファンド・日系投資会社、ブルックス・グループで、不良債権・再生・不動産・未公開企業等のオルタナ投融資の実績と経験。2017年7月より、クラウドクレジット商品部にてソーシャルレンディング関連販売ファンド組成業務に就き、現在に至る。

著者紹介

連載集積するイノベーション産業と頭脳――米国シリコンバレー不動産投資の最新事情

 

 

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