今回は、米国のエネルギー供給事業者「Direct Energy社」の動向を探ります。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

エネルギーシステムのワンストップ化を目指す

米国は、州によって電気事業制度が異なり、再生可能エネルギーの導入量や自由化の進展度合いもまちまちである。

 

それでは、米国全土で事業展開を行っているエネルギー供給事業者は、どのようなサービスを展開しているのだろうか。ここでは、Direct Energy社の取り組みを紹介する。同社は、エネルギーシステムのワンストップ化に関するサービスを展開しているのが特徴である。

 

Direct Energy社は、前出のCentrica社の北米子会社で、米国・カナダで約400万の顧客に対して電力・天然ガスの供給およびエネルギー関連サービスの提供を行っている。特に商業分野に強く、24万の顧客を持ち、米国東部の商業部門では天然ガス供給量で1位、電力供給では米国・カナダで2位を誇る。

 

Centrica社は、コネクテッド・ホーム事業をはじめとして、エネルギー以外のサービスを積極的に展開しているが、子会社のDirect Energy社もまた、北米・カナダでエネルギー供給以外のサービスを展開している。特に配管や家電故障への対応など、電力・ガスに関連する設備の保守サービスを中心に、エネルギー供給を超えたサービスを展開している。

 

例えば、Direct Energy社は、配管システムの補修や、浴室・トイレの改修、給湯器のメンテナンスまで、電力・ガスの供給に直接関連しないサービスを行っている。また、空調システムの導入、補修および保守や、照明器具など電気機器に関するサービスなども展開している。

 

同社は、これらの家庭向けサービスをまとめて「Home Protection Plan」としても展開しており、家電などで何らかの異常があった際に24時間体制で対応するサービスを行っている。

空調設備の保守管理や、機器の補修サービスも提供

これらのサービスは、すべてDirect Energy社が2010年に買収したClockwork Home Services社のブランドを介して展開している。

 

また、Direct Energy社は、2008年にAirco社を買収している。Airco社もまた、空調システムの保守管理や配管、各種機器の補修などを行う事業者で、特に業務・産業分野の顧客を対象にサービス提供を行っている。

 

これらの動きから、Direct Energy社は、空調設備の保守管理や配管などを従来のエネルギー供給を超えた付加価値と捉え、当該サービスに強みを有する企業の買収を通じて、サービスのワンストップ化を志向しているといえるだろう。 

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

エネルギー業界の破壊的イノベーション

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野村総合研究所

エネルギーフォーラム

「インフラ民主化時代」を制するのは誰か? 日本を代表するシンクタンクが業界の動向を大胆展望。

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