前回に引き続き、英国のエネルギー供給事業者「Centrica社」の動向を探ります。今回は、「Centrica社」の取り組みをより詳しく見ていきましょう。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

分散電源に関する動きで後れを取る「Centrica社」

前回の続きである。以降、それぞれの取り組みについて見てみたい。

 

Centrica社が注力する領域として挙げている「分散エネルギー・電力」領域では、「省エネルギー、即応性の高い発電システム、エネルギーマネジメントシステムに加えて、蓄電池をはじめとする新技術に関するこれまでの知見を活かし、分散電源に特化したチームを組成する」としている。

 

この文面からも見て取れるとおり、Centrica社の太陽光発電や蓄電池をはじめとする分散電源に関する動きは、まだこれからという状況であり、これまで紹介してきたエネルギー供給事業者各社に比べて分散電源に関する動きでは、やや後れを取っていると思われる。

買収により、データ分析の知見などが活用可能に

とはいえ、Centrica社もエネルギーシステムの分散化に向けた動きを始めている。2015年11月には、センサーを用いてエネルギーサービス事業を展開するPanoramic Power社を買収した。

 

Centrica社は、小型のワイヤレス・センサーを用いて設備単位で電気使用状況を計測・可視化・分析する技術を保有しており、米国・英国を含めて30カ国に展開している。

 

Panoramic Power社のセンサーは小さく、数百のセンサーであっても2~3時間で設置可能としている。また、顧客は、センサーの初期投資を負担することなく、センサー1つにつき月額5ドルで設置可能であることも特徴である。

 

もともと、Centrica社の北米子会社であるDirect Energy社は、Panoramic Power社と提携関係を結んでいたが、2015年のCentrica社による買収を通じて、Centrica社全体でPanoramic Power社のエネルギーマネジメント技術やデータ分析の知見を活用できることとなった。

 

これもまた、従来型のエネルギー供給のビジネスモデルから、需要家が保有する設備や機器の使用状況を理解し、最適な運用を促すという点で、エネルギーシステムの分散化をにらんだ動きと見ることができるだろう。 

 

この話は次回に続く。

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

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「インフラ民主化時代」を制するのは誰か? 日本を代表するシンクタンクが業界の動向を大胆展望。

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