今回は、電力分野で世界的に展開する事業者の例として、General Electric社の動向を探ります。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

エネルギーシステムの分散化に伴い、需要にも変化が

今回からは、目を転じて、エネルギー業界で事業展開する大手機器・サービスサプライヤーの動きに着目してみたい。

 

エネルギー供給のバリューチェーンにおける付加価値の変化に伴い、従来のビジネスモデルからの転換が求められているのは、大手機器・サービスサプライヤーも同様である。彼らの多くは、従来は中央集中型の電源から送配電線を経由して需要家に届けられることを前提に、機器やシステムの開発を行っていた。

 

しかし、エネルギーシステムの分散化に伴い電力の流れが変化し、求められる機器・システムも変化しつつある。

 

本項では、エネルギー業界の機器・システムサプライヤーとして世界的に展開するGeneral Electric社(GE社)とSiemens社の取り組みを紹介する。いずれの企業も、エネルギーシステムの変化への対応が急務となっている。

制御ソフトウェアに注力する「General Electric社」

●General Electric社の例

 

GE社は、電力業界では言わずと知れた、世界を代表する重電メーカーである。2015年11月に同業のフランスAlstom社の発電・送配電部門を買収するなど、電力部門に注力しており、電力部門だけで世界で30万人以上の従業員を擁している。近年は、電力部門のデジタル化にも注力しており、産業向けクラウドプラットフォーム「Predix」を活用して、ガスタービンなどの予防保守や運用効率改善の事業も展開している。

 

エネルギーシステムの変化への対応が必要という点では、GE社もここまで紹介してきたエネルギー供給事業者と状況は変わらない。GE社は、火力発電用ガスタービンなど中央集中型の電力システムを前提とした製品展開を行ってきており、GE社としても、そこを得意としてきた。

 

しかし、すでにエネルギー業界の変革の影響は顕在化してきており、GE社は2017年11月、世界的な再生可能エネルギー需要の伸びに伴うガスタービン需要の減退を理由に、電力部門で12000人を削減すると発表した。電力部門が最大事業であるGE社にとっては、エネルギーシステムの変化への対応が喫緊の課題となっている。

 

そうしたなかでGE社も、エネルギーシステムにおける分散電源の拡大を見据えた動きを始めている。GE社の直近の動きを見るに、蓄電池やEV充電器など分散電源のハードウェアの製造には距離を置きつつ、制御ソフトウェアに注力しているように見受けられる。

 

例えば、GE社は、「Grid IQ」と呼ばれるマイクログリッド向けの分散電源の制御システムを開発している。これは、マイクログリッドの運用者向けに提供しているソフトウェアで、エネルギーコストの最小化を目的として、分散電源の制御などを行うものである。再生可能エネルギーなどが導入されたマイクログリッドにおいても、発電量予測をもとに最適に各種リソースの運用ができるとしている。

 

また、電力会社向けにDRに関するトータル・ソリューションとして「DRBizNet」を展開している。これは、業務・産業分野および家庭分野の顧客向けのDRプログラムの設計から、必要機器の導入、DRイベントのスケジューリング、発動、計測、DR結果の評価などまで、DRに関連する一連のサービスを提供するものである。

 

電力会社の顧客情報システムや、計測データ管理システム、AMI(Advanced Metering Infrastructure)システムなどの各種既存システムと連携可能である。 

 

この話は次回に続く。

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

エネルギー業界の破壊的イノベーション

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野村総合研究所

エネルギーフォーラム

「インフラ民主化時代」を制するのは誰か? 日本を代表するシンクタンクが業界の動向を大胆展望。

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