今回は、ドイツのエネルギー供給事業者「Siemens社」の動向を探ります。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

マイクログリッドの管理システムなどに力を入れる

ドイツのミュンヘンに本社を持つSiemens社も、GE社と並んで電力分野で世界的に展開する事業者である。

 

同社にとってもまた、エネルギーシステムの変化への対応が課題となっている。GE社と時期を同じくして2017年11月、発電設備の需要減退に伴い、電力・ガス分野で6900人の削減を行う計画を発表している。

 

Siemens社も、エネルギーシステムの分散化に対応するための各種取り組みを進めている。特に同社が注力しているのが、マイクログリッドの管理システムやDERMSの領域である。

 

これまでもSiemens社は、電力会社に対して系統全体の運用・管理システムの提供を行ってきた。一方で、エネルギーシステムの分散化に伴い、太陽光発電や蓄電池などの分散電源の管理も含めて、より小さい単位での管理を行うためのシステムの開発を進めている。

 

Siemens社が展開しているマイクログリッド管理システムでは、大学のキャンパス群やコミュニティなど、これまでの系統運用では個別に管理されていなかった小さい単位での運用・管理が可能となっている。

 

同システムは、クラウド上でマイクログリッド運用事業者に提供されており、オンサイトでIT基盤を構築できない小規模な事業者でも容易に利用可能という点で、分散化が進むエネルギー供給システムの変化に対応するためのサービスといえるだろう。

VPPとして「分散電源を制御するシステム」の開発も

Siemens社は、ほかにもDRプログラムの運用システムであるDRMSや、分散電源の統合管理を行うDERMSも展開している。ドイツのエネルギー供給事業者であるRWE社と共同で、VPPとして分散電源を制御するシステムの開発も進めている。

 

同分野では、Siemens社は米国のUtilidata社とも協業している。

 

Utilidata社は、配電網制御のほか、配電線から得られたデータをもとにした配電網の電圧制御に強みを有する企業である。

 

太陽光発電などの分散電源の拡大が進むと、特に配電線末端付近において電圧が変動しやすくなり、最悪の場合停電につながる恐れがある。Utilidata社は、収集した配電系統のデータを集約・可視化し、配電線の運用を行う電力会社などに対して系統の状況に合わせた分散電源の最適配置の通知や新規分散電源接続状況の把握を促す。

 

同サービスは、すでにAmerican Electric Power社やNational Grid社に対してサービスを提供している。

 

Siemens社のシステムの特徴は、こうした小さい単位の制御システムが電力会社の既存のMDMS(Meter Data Management System)や顧客情報管理システムと連係可能という点である。

 

Siemens社は、既存のシステムとの連係や系統運用に関する知見を武器にしながら、系統全体の運用・管理を起点として、マイクログリッドや配電線、およびそれに連系する分散電源といった細かい単位にまで制御の範囲を広げてきているといえる。

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

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「インフラ民主化時代」を制するのは誰か? 日本を代表するシンクタンクが業界の動向を大胆展望。

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