前回に引き続き、エネルギー業界で事業展開する「機器メーカー」の動向を探ります。今回は、GE社の出資動向を詳しく見ていきましょう。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

出資先は分散電源に関連するソリューションを持つ企業

前回の続きである。一方で、GE社は、子会社であるGE Ventures社を通じて、分散電源に関連するソリューションを有する企業への出資を行っている。下記に、GE Ventures社のエネルギー分野における主な出資先(2017年11月時点)を示す。

 

[図表]GE Ventures社のエネルギー分野での主な出資先

出所)GE Ventures 社公開資料などをもとに野村総合研究所作成
出所)GE Ventures 社公開資料などをもとに野村総合研究所作成

 

分散リソースの高速制御ソフトウェアに強みを有するEnbala Power Networks社や、蓄電池制御により業務・産業部門の需要家に電気料金削減サービスを展開するStem社、家庭需要家向けに蓄電池を活用したサービスを展開するSonnen社など、分散電源の制御ソフトウェアを有する企業に対して積極的に投資を行っていることが見て取れる。

注目すべきは、GE社の市場変化への対応の早さ

GE社は、分散電源の拡大に対応するためのソフトウェア開発に積極的である一方で、分散電源のハードウェア製造からは距離を置きつつあるようにも見受けられる。

 

例えば、GE社は、独自技術の蓄電池である「Durathon Battery」を開発・製造していたが、近年その規模を縮小している。同蓄電池は、放電できる出力に対して充電できる容量の大きいタイプの蓄電池であり、米国内でも風力発電所や米軍基地などに導入されていた。しかし、2015年1月にニューヨーク州の工場を400人体制から50人体制に大幅に縮小した。

 

2011年に工場が開業したときには、当時のCEO(最高経営責任者)であったジェフ・イメルトは2016年までに売上高5億ドル、2020年までに10億ドルを目指すとしていたが、結果として同氏が期待していたほどには需要が伸びず、蓄電池の製造から一歩引いている。

 

また、GE社は、EV充電器の製造・運用も行っており、商業向けに1800カ所、家庭向けに8000カ所のネットワークを有していた。しかし、2017年6月に同事業を前出のCharge Point社に売却し、EV充電の事業から撤退している。

 

これらの動きからGE社は、分散電源のハードウェア製造からソフトウェア開発へと、注力する領域を変えてきているように見受けられる。

 

これは、エネルギーシステムの分散化が進展するなかにあっても、分散電源の開発・製造よりも、それらを制御するソフトウェアに付加価値が移っていると見ているためと想定される。

 

特に製造業からソフトウェア企業への変貌を狙うGE社にとって、変革しつつあるエネルギーシステムのなかで、分散電源の制御ソフトウェアの分野で地位を築くことを狙って、事業の選択と集中やベンチャー企業への出資などを進めているものと見られる。

 

ただし、先述のとおり、GE社の2017年の業績は、発電部門の収益低下に伴って悪化しており、こうしたソフトウェア事業強化の取り組みが、実を結ぶかどうかは意見が分かれるところである。実際にGE社は、新社長のもとで事業構造改革に取り組んでいる。

 

一方で、着目すべきは、GE社が大手の製造業事業者の中で、いち早く市場変化に対応し、収益の源泉をシフトするためのチャレンジを実行している、という点である。その意味でGE社の取り組みは、日本の機器メーカーにとっても示唆に富んでいるといえるだろう。 

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

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「インフラ民主化時代」を制するのは誰か? 日本を代表するシンクタンクが業界の動向を大胆展望。

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