今回は、大手エネルギー供給事業者「Engie」社が、ベンチャー企業「Green Charge Networks社」に出資した事例を紹介します。※本連載では、野村総合研究所の著書『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、エネルギーシステムの変革に挑む、欧米大手電力事業者の動向を紹介します。

Engie社から過半出資を受けている「GCN社」

GCN社は、需要家設置の蓄電池を制御することにより、電気料金の削減を行っている事業者である。同社は、需要家と電気料金の削減に関するパフォーマンスコントラクトを締結し、電気料金の削減額を需要家とシェアすることで、事業を拡大してきている。

 

GCN社は、2016年5月にフランスの大手エネルギー供給事業者であるEngie社からの過半出資を受けている。Engie社は、フランスに事業基盤を有する大手エネルギー供給事業者であり、フランスガス公社GDFとSuez社が合併してできたGDF Suez社が、2015年に業態の変化に合わせて社名を変更してできた企業である。

 

グループの祖業である天然ガス事業では、供給量が1082TWhにも上り、液化天然ガスの輸入量や天然ガスの配給ネットワークでは欧州最大規模を誇る。また、電力事業においてもグループで112.7GWの発電容量を有しており、欧州の有力エネルギー事業者のひとつである(以下の図表1を参照)。

 

[図表1]Engie社のGreen Charge Networks社への出資

出所)Engie社公開資料などをもとに野村総合研究所作成
出所)Engie社公開資料などをもとに野村総合研究所作成

大手事業者がベンチャー企業の動きを積極的に取り込む

中央集中型の従来型の電源から電力供給を行っていたEngie社が蓄電池の導入によりエネルギーシステムの分散化を進めるGCN社に出資したのは、エネルギーシステムの分散化が不可逆な方向で進展していくなかで、大手エネルギー供給事業者として、その動きを取り込んでいく意思を示したものといえる。

 

事実、Engie社は、分散電源サービス関連のソリューションを有するベンチャー企業に対して積極的パートナリングを行っている(以下の図表2を参照)。

 

[図表2]Engie社の分散電源サービス関連の主な出資先

出所)Engie社公開資料などをもとに野村総合研究所作成
出所)Engie社公開資料などをもとに野村総合研究所作成

この連載は、書籍『エネルギー業界の破壊的イノベーション』(㈱エネルギーフォーラム)からの転載です。

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