充電ステーションのネットワークを保有するベンチャー
ChargePoint社は、カリフォルニア州に拠点を置く、EV充電ステーション・ソフトウェア事業者である。同社は、米国北東部のボルティモアに拠点を置く電力・ガス供給事業者であるConstellation社(以下の図表1参照)から出資を受けている。
[図表1]Constellation社の概要(2016年)
ChargePoint社は、EV充電ステーションのハードウェア製造からソフトウェア開発までを行っている。2007年に設立されたベンチャー企業であるが、すでに同社は、カリフォルニア州を中心に42500カ所の充電ステーションのネットワークを保有している(2017年11月現在)。
EVユーザーは、スマートフォンにアプリをダウンロードすれば、充電可能なステーションの所在地を調べることができる。
すでにBMWや日産自動車などの自動車メーカーとも提携しており、米国内ではBMWi3やリーフのナビゲーションシステムで充電ステーションの所在地を調べることも可能である。EVユーザーは、ChargePoint社のアカウントを通じて充電料金の支払いを行うことも可能である。
なお、現状の制度の下では、EVの充電にかかった電気料金は充電ステーションを保有している事業者に課金され、電力会社がEVユーザーに対して直接課金することができない。
すなわち、EVを、ある公共施設に設置された充電ステーションで充電した場合、電力会社から充電に要した料金を請求されるのは、EVユーザーではなく充電ステーションが設置された公共施設となる。
ChargePoint社のアプリに登録されたEV充電ステーションの場合も同様であり、電力会社から直接請求がくるのは充電ステーションの保有者である。
ただし、ステーションの保有者は、事前に充電料金単価を設定し、ChargePoint社のアプリに登録しているため、充電ステーションを使用したEVユーザーや、そのときの充電量が特定され、EVユーザーに対して課金することが可能となっている。
なお、充電ステーションの保有者が個別に料金設定を行うため、充電ステーションによって価格が異なることになる。
パートナリングを通じ、技術・サービスを獲得
一方で、エネルギー供給事業者がEVへの充電を家庭などの建物の電力需要の一部とみなす従来の方式ではなく、EVへの充電量を建物の電力需要と切り離して個別に計測する実証もカリフォルニア州で始まっている。
[図表2]ChargePoint社のサービス概要
Constellation社は、傘下のConstellation Technology Ventures社(CTV社)を通じて、各種ベンチャー企業に対する出資を積極的に行っており、ChargePoint社以外にも、蓄電池を活用したサービスに強みを有するStem社や、需要制御ソフトウェアに強みを有するeCurv社とPower house Dynamics社、そして分析の基盤となるプラットフォームに強みを持つC3IOT社らに対して次々と出資・提携を行っている。
Constellation社が、これらのパートナリングを通じて、エネルギーシステムの分散化においてキーとなる技術・サービスを獲得してきていると見ることができる。