重要なインフラのため、多くの細かな規制やルールが…
ブロックチェーン固有のウィークポイントとは別に、エネルギー業界特有の壁があります。こちらについても越えていかなくては、エネルギービジネスでのブロックチェーンの活用は拡大しません。ここでは、大きな3つの壁を紹介します。
1つ目は、規制・ルールの壁です。先ほども触れましたが、エネルギー産業は、読者の皆さんもご承知のとおり、非常に重要な社会インフラであるため、多くの細かな規制やルールが存在します。
例えば、電気を販売するには、国に申請を行い、小売り電気事業者の免許を取得する必要があります。加えて、現在の日本では、個人間での電気の売買は認められていません。つまり、ブロックチェーンを活用するかどうか以前に、電気の個人間売買を実現するには、法律やルールを変更する必要があります。
また、ある地域で電気をシェアし合う計画ができた場合、「誰が責任をもって管理するのか」、「どのようなルールで管理するのか」を個々に決めていく必要があります。
テストモデルとして選ばれた数十世帯に限定した取り組みであれば、互いに話し合うことでルールを決めることは可能でしょう。しかし、将来的に顔も名前も知らない1000や5000もの家庭同士での電気の売買やシェアリングを想定すると、不公平感の少ないルールをつくるのは一筋縄ではいかないでしょう。
それに加えて、電力会社との調整も必要です。個人間での電気の取引に伴い、電力網の使い方も変化しますので、送電設備を持つ電力会社の協力は必要不可欠だからです。
実証実験を通した「試行錯誤のプロセス」が重要に
規制や市場構造の改革は、大きな影響を与えます。法律や規制・ルールを改変していくためには、実証実験を通して、「こうすればうまくいく」、「今のルールをこういうふうに変えていこう」という試行錯誤のプロセスが大切です。
新しい社会モデルによって提供されるサービスや価値を、誰が、どのように評価し、報酬を支払うのかを明確にしていく必要があります。不公平感の少ない、多くの人が賛同するルールや制度が整うまでの地道なプロセスは、5年、10年、20年と続いていくでしょう。
新しいルールづくりは、国や地方自治体の積極的な参加も欠かせません。先に海外でさまざまな規制・ルールの標準が決まり、革新的な社会モデルが生まれてしまうと、日本は遅れをとってしまいます。政府を含めた積極的かつ柔軟な取り組みが必要です。
この話は次回に続きます。