前回に引き続き、エネルギーとブロックチェーンの活用に立ちはだかる壁を見ていきましょう。今回は、自己矛盾の壁、心の壁について説明します。※本連載は、一般社団法人エネルギー情報センターの理事で、エネルギーとビジネスに関する執筆・講演活動なども行う江田健二氏の著書、『ブロックチェーン×エネルギービジネス』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、ブロックチェーンとエネルギービジネスの組み合わせが持つ可能性と、「越えるべき壁」について見ていきます。

非常に大量の電力を必要とする「ブロックチェーン」

前回の続きです。2つ目の壁は、自己矛盾の壁です。

 

実は、ブロックチェーンという仕組みを維持していくには非常に大量の電力を必要とします。

 

最も電力を使うのは、「マイニング」という業務です。マイニングは、ブロックチェーンを支える根幹的な作業です。ブロックチェーンで行われた取引内容をコンピューターで確認する作業です。マイニングを行う企業や個人には、一定のルールに従って報酬が支払われます。

 

報酬を得るために世界中で個人や企業がマイニングに参加しています。マイニングには、すでに世界中で数十万台以上のコンピューターが使われているため、多くの電力を消費します。ブロックチェーンを推進するということは、より多くのエネルギーを使うこととイコールになってしまう、という矛盾が生まれます。

 

[図表1]何千台ものコンピューターが並ぶマイニング工場

出典:http://importbusiness.tokyo/bitcoin-versus-bitcoin-cash
出典:http://importbusiness.tokyo/bitcoin-versus-bitcoin-cash

 

最近の調査では、全世界でマイニングを行うコンピューターが使用した電力は、159カ国が1年間に使用する電力量を上回ったとの報告があります。さらに数年後には、マイニングで消費される電力量が英国の電力消費量を超えるとの予想もあります。

 

エネルギーの最適化のためにブロックチェーンを活用することは、矛盾しているのではないかとの指摘もあります。

新しい社会モデルへの転換は、それ相応のニーズが必要

3つ目は、私たちの心の壁です。

 

ある調査によると、人々が電気について考える時間は請求書を見るときだけで、1カ月に1分程度といいます。1年間で約12分です。この12分という時間を多いとするか、少ないとするかはさておき、調査データから推察すると、ブロックチェーンをエネルギーに使ってみたいと考えるのは、テクノロジーやエネルギーの未来に強い関心がある人だけかもしれません。

 

ブロックチェーンを活用しても生活があまり変わらないのであれば、電気のことを1年で10分も考えていなかった人からすると、あまり重要な話ではないでしょう。

 

わざわざ新しいことを受け入れて、新しい社会モデルに転換するには、それ相応のニーズが必要です。電気が「いつでも、どこでも、好きなだけ」利用できるようになる、今までできなかったことが実現する、自分の生活が便利になり豊かになるという将来をしっかりと伝えることで、心の壁を越えていく必要があります。

 

[図表2]エネルギーとブロックチェーンの活用に立ちはだかる壁

ブロックチェーン×エネルギービジネス

ブロックチェーン×エネルギービジネス

江田 健二

エネルギーフォーラム

インターネットの巨人、グーグルが創業して20年。インターネットは、あらゆる業界に影響を与え続けています。ビジネスを考えていくうえで、もはやインターネットを無視することはできません。そして、ブロックチェーンは、「イ…

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