今回は、企業の成長性を分析する指標「対前年比成長率」について解説します。※本連載では、中京大学経営学部教授・矢部謙介氏の著書、『武器としての会計思考力 会社の数字をどのように戦略に活用するか?』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、企業の財務指標分析のポイントを解説していきます。
「過去の成長性の分析」にも十分な意味がある
最後に、成長性を分析する指標について見ていきましょう。
成長性分析を行なう主な目的は、その会社の将来的な成長性を検討することなのですが、時々、講義や研修に参加したビジネスパーソンから、「将来の成長性を予測するのに過去のトレンドを見ても意味がないのでは?」という質問を受けることがあります。
もちろん、こうした意見にも一理あるのですが、過去の成長の過程とその要因を分析することで、将来の成長性を予見するための材料が得られることがあります。したがって、私自身としては過去の成長性を分析することにも意味が十分あると考えています。
前年と比較することで「成長性」を測定
成長性を分析するときによく用いられる代表的な指標は、対前年比成長率です。これは、売上高や利益、資産の金額を前年と比較することで、成長性を測定しようとするものです。図表には、売上高対前年比成長率の計算式を示しています。
[図表]売上高対前年比成長率
このほか、図表の分母の前年度売上高を、例えば当期よりも10年度前の売上高で固定しておき、分子にその後の各年度売上高を入れて、売上高などの推移を見る趨勢分析も、よく行なわれる分析手法の1つです。
中京大学国際学部 教授
中京大学大学院経営学研究科 教授
専門は経営分析・経営財務。1972年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同大学大学院経営管理研究科でMBAを、一橋大学大学院商学研究科で博士(商学)を取得。
三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)および外資系経営コンサルティングファームのローランド・ベルガーにおいて、大手企業や中小企業を対象に、経営戦略構築、リストラクチャリング、事業部業績評価システムの導入や新規事業の立ち上げ支援といった経営コンサルティング活動に従事する。その後、現職の傍らマックスバリュ東海株式会社社外取締役や中央大学大学院戦略経営研究科兼任講師なども務める。
著書に『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』(以上、日本実業出版社)、『日本における企業再編の価値向上効果』『成功しているファミリービジネスは何をどう変えているのか?(共著)』(以上、同文舘出版)などがある。
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