本連載は、一般社団法人エネルギー情報センターの理事で、エネルギーとビジネスに関する執筆・講演活動なども行う江田健二氏の著書、『ブロックチェーン×エネルギービジネス』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、ブロックチェーンとエネルギービジネスの組み合わせが持つ可能性と、「越えるべき壁」について見ていきます。
金融業界と2つの面で類似するエネルギー業界
本連載では、エネルギーとブロックチェーンの関係について、一歩踏み込んで考えていきます。
現在、ブロックチェーンの活用を最も進めている業界のひとつは、金融業界です。なぜなら、金融分野での仕事の多くは、お金に関連する情報管理と共有だからです。実際に銀行員や証券マンは、家を設計したり、ポスターをデザインしたり、野菜を育てたり、工場で商品を製造したりしません。
銀行や証券会社の競争力はなんでしょうか? それは、お金の数値情報をいかに効率的に管理して共有できるかです。加えて、金融業界は、規制が多く参入障壁が高い業界です。したがって、業務の効率化や新しいサービスの開発などの余地があります。
コスト削減や新しいサービスの開発が可能に
エネルギー業界は、「情報の共有・管理が競争力」、「規制が多く参入障壁が高い」という2つの面で金融業界と似ています。電力会社は、発電情報や送電情報、利用情報などの情報を数値管理しています。私たちは、毎月届く電気の請求書の数値を確認し、支払いをします。もし、自宅に太陽光発電や蓄電池がある場合は、発電量や蓄電量を数値で管理しています。
電気は、目で見たり、触ったりできる商品ではなく、数値情報をやり取りするサービスです。そのため、エネルギー業界も金融業界と同様に、情報の効率化を図れるブロックチェーンとの親和性が高いと考えられます。しかも、ここ20年で自由化は徐々に進んでいるとはいえ、他業界に比べると規制が多く、外部からの参入が少なかった業界です。
ブロックチェーンを活用してのコスト削減の余地や新しいサービスの開発が可能です。
一般社団法人エネルギー情報センター
理事
富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)に入社。エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクトなどに参画。アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年に起業後、RAUL(ラウル)社を設立。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、現職。
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広く伝えること」「デジタルテクノロジーとエネルギー・環境を融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆・講演活動などを数多く実施。
主な著書にAmazonベストセラー第1位(エネルギー一般関連書籍部門)となった『エネルギーデジタル化の未来』(2017年、エネルギーフォーラム)のほか、『3時間でわかるこれからの電力業界―マーケティング編―5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』(2016年、good.book)など。
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連載エネルギービジネスを変える!? ブロックチェーンがもたらす可能性と「越えるべき壁」