ニューヨーク州でガス・電力・熱供給事業を行う
ニューヨーク州もまた、再生可能エネルギーの導入に積極的な地域である。ニューヨーク州は、電源が地理的に偏在していることやハリケーン・サンディで甚大な被害を受けたことを背景に、中央集中型の電源システムから分散型システムへの以降を目指している。
このニューヨーク州でガス・電力・熱供給事業を行っているのがCon Edison社である。ここでは、エネルギーシステムの分散化に対するCon Edison社の取り組みを紹介したい。
Con Edison社は、事業セグメントごとに企業体が構成されており、ニューヨーク市やウェストチェスターでエネルギー供給事業を展開するCon Edison of New York、ニューヨーク州南東部やペンシルバニア州を中心にエネルギー供給を行うOrange & Rockland、再生可能エネルギー発電所などの開発・保有・運用を行うCon Edison Clean Energy Businesses、送電や天然ガスの輸送を行うCon Edison Transmissionから構成される。
2016年時点では、Con Edison of New Yorkがグループ全体の売上高の81%を占めており、ニューヨーク州でのエネルギー供給事業が事業の柱となっている。
[図表1]Con Edison社グループの概要(2016年)
Con Edison社が事業展開するニューヨーク州では、REVをはじめとしてエネルギーシステムの分散化を見据えたエネルギーシステムの改革が推し進められている。こうした州政府の分散電源の活用推進に関する政策を反映して、Con Edison社も、エネルギーシステムの分散化への対応に向けた取り組みを進めている。
2016年6月より、VPPの実証プロジェクトを開始
ここでは、Con Edison社のVPPに関する取り組みについて紹介したい。
Con Edison社は2016年6月より、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたシステムを統合制御するVPPの実証プロジェクトを開始している。
VPPとは、複数の分散電源を統合制御し、あたかも1つの発電所かのように制御する技術を指す。Con Edison社のVPP実証では、分散設置された太陽光発電と蓄電池システムを統合制御し、需要家のピークカットや非常時の電力供給のみならず、系統向けに周波数制御やDRなどのサービスに活用することを想定している。
Con Edison社が分散制御するシステムは、米国Sun Power社の太陽光発電と米国Sun verge社の蓄電池システムで構成され、需要家の家庭などに設置される。計画では、1年間で約300~400のシステムを導入するとし、約1.8MW(4MWh)の蓄電池リソースをVPPとして統合運用するとしている。プロジェクトのコストは1500万ドルと見込まれている。
ここまでは一見、E.ON社が「E.ON Aura」のブランドで太陽光発電や蓄電池を販売するモデルと類似するように見えるが、Con Edison社のモデルの特徴は、太陽光発電と蓄電池から構成されるシステムそのものはCon Edison社が保有し、需要家にリースする方式を採っている点にある。
本実証では、20年間の無利子のリースにてシステムを導入することが可能となっている。これにより、需要家は初期導入費用を負担することなく、一定の月額料金を支払えば太陽光発電および蓄電池活用のメリットを受けられることになる(図表2)。
[図表2]Con Edison社のVPP実証におけるモデル
こうしたCon Edison社のVPPに関する取り組みは、エネルギーシステムの分散化が進展し、電力供給のあり方が変化していくなかで、州政府の分散電源推進に関する目標も反映しつつ、Con Edison社が新たなビジネスモデルを模索していると見ることができるだろう。